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時給3000円、可愛い女子大生限定の怪しいバイト…普通の女子大生が「港区女子」になるまで

  • 2024.9.6

「港区女子」。それは何かと世間の好奇心を煽る存在。では彼女たちは一体どんな女性なのか? そんな議論が度々上がるけれど、港区で暗躍する素人美女、パパ活女子、あるいはラウンジ嬢など……「港区女子」の意味合いや捉え方は人それぞれ。

そして謎に包まれた彼女たちにも時間は平等、歳をとる。港区女子たちは、一体どんな着地をしているのか。現在アラフォーとなっていると思しき元港区女子たちの過去と現在に迫る。

※この物語は実際の出来事を元にしたフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

【朝美の過去】怪しいバイト

「あの……突然すみません。バイト、しませんか?」

大学2年生のとき、キャンパスのカフェテリアでやたらと顔の可愛い女2人組に話しかけられた。このとき、私の人生の方向性がある程度決まったと言っても過言ではないと思う。

「怪しい者じゃないんです。銀座の会員制のラウンジで、有名な中小企業の社長さんたちのセミナーとかのお手伝いをするバイト。制服もリクルートスーツで、慶應や早稲田、医大とかの可愛い女子大生ばっかりで、サークルみたいな感じ……なので、みんな仲良しで、すごく楽しいの」

慣れないサークルの勧誘のようなテンションで、2人は早口でまくし立てる。流行のルイ・ヴィトンのヴェルニのリードPMとパピヨンを色違いで持ち、雑誌から飛び出てきたような典型的なエビちゃんファッションに身を包む美しい2人組。

カフェテリアで格段に目立つオーラを放つ彼女たちも大学2年生で、1年生の初めに同じく先輩から勧誘を受け、そのラウンジで働いているという。ご丁寧に見せてくれた学生証には有名女子大の名前があった。

簡素なチラシに記載された時給3000円の文字は、魅力的なのと同時に明らかに胡散臭い。焦りを隠せない彼女たちの口調からも、たぶん説明内容のすべてが事実ではないだろうとわかる

「あなたがすっごく可愛いから声をかけたの。読モとかミスコンの子もたくさんいて、とにかく可愛い子しかいないよ。働くのは週1回3、4時間でもいいからラクだし。あなたが面接に来てくれたら絶対に受かる。だから、ぜひ連絡ください」

結局私は、まんまと勧誘に乗った。

「すっごく可愛い」「可愛い子しかいないよ」そう言ったときの2人組の目は真剣で力強かったし、時給3000円は女子大生にとって単純に魅力的だった。

そして何よりも、私は彼女たちの美貌に説得力を感じたのだ。

餌づけされる女たち

「セミナーとかのお手伝い」というざっくりした仕事内容以外は、可愛い2人組の言葉は本当だった。予想はしていたけれど、実際の仕事はごくライトな接客業だった。

ただ、いわゆる水商売のように指名や同伴などのノルマは一切なく、またお酒を作ったりタバコに火をつけたりもしない。簡単に言えば、ただの素人の女子大生として、おじさんの席に座り、最低限失礼のない会話だけしていればよかった。店は23時には閉まり、学生たちは電車で帰宅できる。

ちなみに私を勧誘した2人組は、成功報酬でそれぞれ3万円もらったという。人員不足のとき、この店は女子大生たちに時給とインセンティブを与えて都内の有名大学にスカウトに行かせるのだ。

「鮨がいいだろ、適当に頼んで。あとケーキ、みんなのぶん買っておいで」

さらに普通の水商売と違うのは、学歴と美貌を持ち合わせた素人の女子大生に対して、どちらかと言えばお客のほうが気を使う点だ。彼らはまず女子大生たちのお腹を満たすことが義務のようになっていて、店を訪れて席につくなり、あれこれ高級な出前を頼んでくれた。

ラウンジは重厚感のある豪華な内装でありつつ、会員制ということもあり店内は馴染みの客ばかりでアットホーム感がある。私たちにとっては、遠い親戚のお金持ちのおじさんの話し相手をしてあげる、そんな感覚に近かった。

「朝美は本当においしそうに食べるね。そろそろ季節だから、ふぐでも食べに行こうか」

「うーん、ふぐもいいけど、お肉食べたいなあ」

「じゃあ六本木の瀬里奈にするか。個室で10人くらいかな」

「やったー! 瀬里奈大好き!」

ふぐや霜降り牛の味を知り、デザート代、タクシー代と称して他人のおじさんの財布から取り出される一万円札を臆面なく笑顔で受け取れる。

そんな女子大生は、もう到底素人ではない。

でも私たちは素人の仮面を被り、おじさんたちが与えるエサに無邪気に食いついた。1人ではちょっぴり怖くても、大勢なら怖くない。

エサを食べるときは、皆一緒のほうが断然安全で楽しい。それを本能的に感じ取った女たちは、異様な仲の良さと連帯感を築くのだ。

 

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取材/山本理沙 イラスト/黒猫まな子

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