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奈良起点に関西周遊を、新ホテル開業で「日帰り観光」から脱出

  • 2024.9.6

京都や大阪を起点とした「日帰り観光」が多く、それが県としての課題であった奈良県に9月4日、国内2軒目となるホテル「ノボテル奈良」(奈良県奈良市)が開業した。

9月4日に開業した「ノボテル奈良」外観

■ 過去は全国最下位も…宿泊者数は右肩上がり

シンボルの大きな行燈のデザインが美しいソーシャルラウンジ

2021年まで、宿泊者数が全国最下位もしくは46位を記録していた奈良県。「日帰り観光」ではなく「宿泊・滞在型観光」を推進するため、「JWマリオット・ホテル奈良」「ふふ 奈良」「紫翠ラグジュアリーコレクションホテル奈良」など、近年ホテルの開業ラッシュが続いている。その成果もあってか、2022年には44位まで回復。県は、2030年までに年間500万人の宿泊者数を目指しているという。

今回新たに登場した「ノボテル奈良」は、フランス・パリを拠点とし、世界110ケ国で約5700軒ものホテルを運営しているヨーロッパ最大のホテルチェーン「アコー」が手がけている。同社は2024年パリオンピック・パラリンピックのプレミアムスポンサーでもあった。

開業セレモニーで、ディーン・ダニエルズ日本代表取締役は「美しい風景や歴史を持つ奈良は、インバウンドにとって非常に魅力的な地。我々は日本に注力している」と語る。コロナ禍明けから、奈良県内もインバウンド旅行者の来訪が増大し、2025年の大阪・関西万博もあるため、さらなるインバウンド需要を見込んでの開業といえる。

■ 「新大宮エリア」に開業のワケは?

8階のカフェ&バー「ルーフトップテラス」は、宿泊者以外でも利用可能。奈良の伝統行事「若草山焼き」や8月15日の「奈良大文字送り火」も間近で眺めることができるビュースポット

なかでも、注目したい点が同ホテルのロケーション。実は、東大寺や興福寺、春日大社、奈良公園など観光スポットが集中している「近鉄奈良駅」周辺ではなく、近鉄線では隣の駅「新大宮駅」エリアに開業している。

このエリアは、2018年に観光型複合商業施設「ミ・ナーラ」や「国営平城宮跡歴史公園」の「朱雀門ひろば」が観光エリアとしてオープンし、2020年には「奈良県コンベンションセンター」「JWマリオット・ホテル奈良」などが次々と開業した、奈良市内でも発展が著しい場所だ。さらに、もともと夜間営業をおこなう飲食店が集中しており、第二阪奈道路を利用して阪神地域から車で来訪する際の玄関口としての利便性もある。

観光の中心地から少し離れた「新大宮駅」エリアでの開業について、同ホテルの戒田真総支配人は、「すぐ隣の奈良県コンベンションセンターが目的です」と説明。奈良県は、観光政策としてMICE(企業や団体が開催する会議やイベント、国際会議、展示会、見本市などのビジネスイベントの総称)の開催誘致・支援を積極的におこなっているため、国際会議などで来訪した団体の宿泊先としての役割も担うのだ。

「ノボテル奈良」の戒田真(かいだまこと)総支配人

さらに、戒田総支配人は、昨今のインバウンド増加にともなう「大阪や京都のオーバーツーリズム」や「ホテル代金の高騰」にも言及。リムジンバスを利用すれば、隣の奈良県コンベンションセンターまで、関西国際空港からは約90分、伊丹空港(大阪国際空港)から約60分のロケーションをアピールし、「奈良から大阪や京都まで、電車を利用してどちらも約40分でアクセス可能です。ぜひ、奈良を起点に2~3泊していただき、関西を周遊するご旅行の提案をしたい」と力を込めた。

館内には、奈良市内随一の桜並木が美しい「佐保川の桜」を真横に望みながら地元食材を楽しめるオールデイダイニング「トラットリア・ポンテ奈良」やアルコールなどが楽しめる「ルーフトップテラス」(どちらも宿泊者以外でも利用可能)も。随所に奈良の伝統工芸をイメージしたデザインが施され、キッズスペースを備えたウェルネスラウンジ、フィットネスジム、大浴場、会議室なども完備。

観光の中心地へも電車で一駅、タクシー利用で約5分とアクセスの良い同ホテルは、観光にもビジネスにも対応し、さらに地元の人々の憩いの場としての利用も可能だ。同ホテルの開業が奈良県の宿泊者増加の追い風となるか期待される。

取材・文・写真/いずみゆか

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