マルベリーxレジーナピョウ、限定コラボレーションが発売。アジア人女性デザイナーならではの感性が光る15点がラインナップ

『VOGUE BUSINESS』は昨年10月、ラグジュアリーブランドのデータをもとにした「Vogue Business Index」のトップ30ブランドで、33人のクリエイティブディレクターのうち女性はわずか8人であることを報じた。また、そのなかで有色人種であるのはジミー チュウ（JIMMY CHOO）のサンドラ・チョイのみ。これはファッション業界に生きる女性、特に有色人種の女性にとって、困難な時期が続いていることを示していると言えるだろう。

だからこそ、ロンドンを拠点に活動する韓国生まれのレジーナピョウ（REJINA PYO）がイギリスの大手アクセサリーブランド、マルベリー（MULBERRY）からコラボレーションを打診されたとき、女性を中心としたチームで進めることが何よりも重要だった。9月4日に発売される新作コレクションでは、女性のコミュニティを軸に据えたラインナップが展開されるほか、さまざまな“女性らしさ”をコンセプトに扱うアルゼンチン人アーティストでデザイナーのコニー・ヴァレーゼをキャンペーンに起用。女性フォトグラファーのグウェン・トラノイがルックの撮影を手がけた。

今を生きる女性の日常ために

「私たち女性は、日常生活に寄り添うパーソナルでリアルな感覚をデザインにもたらすことができると思っています。ファッション業界は長い間、男性によって牽引されてきましたが、現代女性が身につける服は私たちの気分や経験、アイデンティティと密接に結びついています。私自身の体験から話すと、2人目の子どもを産んでからは母、娘、妻、そしてプロフェッショナルとしての役割のバランスを取りながら、これまで以上に今日働く女性であることの意味を探求するようになりました。女性には身につけるものに自信を持ち、心地よさや力強さを感じてほしい。こういった想いを衣服に落とし込むのに、日々女性として生きている人以上の適任者がいるでしょうか？」

マルベリーはこれまでにリチャード・マローン（RICHARD MALONE）、アルワリア（AHLUWALIA）、ステファン クック（STEFAN COOKE）などの注目ブランドともタッグを組んできた。ピョウとの最新コレクションは、バッグ、ジュエリー、そしてマルベリーとしては珍しいプレタポルテを含む15の限定アイテムで構成され、ブラウン、カーキグリーン、グレーといったアースカラーのパレットで表現されている。

ノートPCも収まるレザートートに、『VOGUE』エディターも絶賛するカーゴショルダーバッグ、どんな装いにも合わせやすいピアス、デザイナーのシグネチャーであるスカーフディテールをフィーチャーしたニットなど、どのアイテムも新しい季節に向けてワードローブをアップグレードしたい今にぴったりだ。

「私がデザインした服を纏う女性たちに想いを馳せました。（私がイメージするのは）タイムレスであることとクオリティの高さを重視し、控えめでありながらもいつまでも色褪せない美しさを求める女性たちです」とデザイナー。「マルベリーのアーカイブからは、コレクションの原点となるような宝物を見つけることができ、とてもインスパイアされました。そこから、繊細でありながら自信に満ちた色、素材、ディテールを用い、私らしいひねりを加えながら、エフォートレスな世界観を作り出したいと考えたのです」

女性の直感を信じること

ピョウは2011年にセントラル セント マーチンズで修士号を取得し、2013年に自身の名を冠したレーベルをローンチ。2019年のブリティッシュ・ファッション・アワードでウィメンズウェア部門のブリティッシュ・エマージング・タレントを受賞し、2021年にはハイストリートブランドのアンドアザーストーリーズ（& OTHER STORIES）とのコラボレーションを実現するなど、着実にキャリアを築いてきた彼女のデザインには一貫して「より上質なベーシック」というテーマがある。

「ブランドを立ち上げた当初は、いろいろな人からの意見に耳を傾け、すごく混乱したこともありました。直感では『違う』と感じても、ほかの人の言う通りにやってしまうこともありましたね」と彼女は回想する。「でもすぐに、これじゃダメだと気づきました。それから私は一歩引いて考えるようになり、学びの姿勢を保ちながらも周囲に振り回されることなく、アドバイスを選別していきました。私自身の直感に従うことが、ブランドの成功につながったのです」

こうして自分の直感を信じる力を取り戻したピョウ。マルベリーとのパートナーシップは、彼女が女性デザイナーとしての地位をしっかりと築いていることを証明していると言えるだろう。才能ある若きデザイナーたちがますます不安定になる業界に次々と飛び込んでいるが、ピョウにとって最も役に立ったアドバイスは何だったのだろうか？ 尋ねてみると、こんなエピソードを明かしてくれた。

「セントラル セント マーチンズの名物教授、ルイーズ・ウィルソンから多くを学びました。彼女はすごく気難しい人だったけれど、ルイーズはデザイナーとしての私の本当の強みを引き出す手助けをしてくれましたね。彼女は私にこう言ってくれたんです。『今あなたがやっていることを、“うまく”やりなさい！ そうすれば、必ず活躍の場がやってくる』って」

「Mulberry X Rejina Pyo」はmulberry.comにて限定販売中。

Text: Joy Montgomery Photos: Courtesy of Mulberry Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.CO.UK