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またしても家族のピンチ…河合優実”七実”を支える頼もしい名脇役たちとは? NHKドラマ『かぞかぞ』第7話考察レビュー

  • 2024.9.5
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第7話 ©NHK

河合優実主演のNHKドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が地上波にて放送中。岸田奈美のエッセイを元にした本作は、2023年にNHKBSプレミアム・ NHKBS4Kで放送され大反響を呼んだ。今回は、第7話のレビューをお届け。(文・ 明日菜子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:明日菜子】
視聴ドラマは毎クール25本以上のドラマウォッチャー。文春オンライン、Real Sound、マイナビウーマンなどに寄稿。映画ナタリーの座談会企画にも参加。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第7話 ©NHK
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第7話 ©NHK

【写真】林遣都、山田真歩など主人公”七実”を支える魅力的な俳優陣たちを堪能できる劇中画像。ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』劇中カット一覧

年齢を重ねるにつれ、“変化”というものをだんだん切なく感じるようになった。特に親や祖父母が変わっていく姿を目の当たりにするのは、なかなか堪えるものがある。突然の事故や病気で一瞬にして変わることもあれば、本人も気付かぬうちに、徐々に変わりゆくこともあるだろう。

何度経験してもその変化に慣れることはない。受け止める側の根底にあるのは、当たり前の日常に慣れきった傲慢さではなく、「変わらないままでいてほしい」という切実な願いだ。

父の死、母の大病と怒涛の展開つづきだった『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK総合)は、ひっそりと家族の“老い”を描くフェーズに入った。波乱万丈な岸本家だけではなく、誰もが経験する切ない変化。

これで一件落着…となかなか腰を下ろせないのが、今作が“トゥルーストーリー(ほぼ)”である所以だ。

七実(河合優実)が作家人生を歩み始めてから3年の月日が経っていた。現在は住まいを東京に移しており、家族と離れて暮らしている。デビュー作「大丈夫じゃない日々、大丈夫な家族」は幾度も重版がかかるほどの大ヒット。

そのタイトルになぞらえて「今はマジで“大丈夫”な家族になりました」と七実が答えるくらい、岸本家は順調な毎日を送っていたのだが…ふたたび困難が降りかかる。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第7話 ©NHK
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第7話 ©NHK


母・ひとみ(坂井真紀)が数年前の大手術の後遺症で倒れ、面倒を見てくれていた祖母・芳子(美保純)に認知症の兆候が出始めたのだ。ひとみが大動脈解離で倒れたことを機に、岸本家と同居するようになった芳子。おおらかでこざっぱりとしたキャラクターは、かつて塞ぎ込んでいた岸本家に風を通してくれた存在でもあった。

しかし、異変を感じた七実が東京から駆けつけると、部屋は散乱状態。体調が悪化したひとみがベッドで項垂れていても、芳子はまったく気づいていない。お得意の茶色い手料理は醤油をいれすぎてほぼ食べられない状態になっており、それを口にするしかなかった草太(吉田葵)のコレステロール値は急上昇。

他にも七実を「ひとみ」と言い間違えたり、パジャマのまま外出していたりと、その兆候は顔を覗かせていたものの、気付かない七実は祖母に声を荒げてしまう。

祖母の調子も万全ではなく、支えであった母が倒れたいま、七実にとって最も苦しいことは、その辛さを家族の誰とも共有できないことだ。もちろん草太も。一緒に暮らしていた草太は、祖母の変化に気づいていたものの、SOSを出す術がなく、ただ見守るしかなかった。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第7話 ©NHK
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第7話 ©NHK

またもや大ピンチが襲いかかってきた岸本家。ふと頭によぎったのは、編集者・末永(山田真歩)の家族論である。

「人間って必ず人間から生まれてくるじゃないですか。そんで生まれた途端、好むと好まざるとに関わらず、大抵の人間が家族という集合体に属させられるわけで」

そう。大抵の人間は、家族という集合体に属さざるを得ない。抜け出す権利は誰にでもあるが、簡単には手放せないからこそ、家族はすべからく「めんどくさい」のだ。

だからこそ、家族間で行き詰まりを感じたとき、その集合体以外の場所に身を置くことが必要なのではないだろうか。マルチ(福地桃子)が弱っていた魚を一時的に別の水槽へと移していたように。

例えば、七実にとっては、「ALL WRITE」の小野寺(林遣都)、「Loupe」時代から付き合いがあるテレビプロデューサーの二階堂(古舘寛治)や末永。暴走しがちな七実に苦言を呈してくれるマルチ。カフェでアルバイトを始めた草太にも、新しい仲間ができた。

ときには別の拠り所に身を置き、ときには別の場所から家族という集合体を見つめ直すことが、その関係性をより長く、より持続しやすくするコツなのだろう。家族以外のつながりを持つことの大切さは、家族の愛おしさやめんどくささを描きつづけてきた『かぞかぞ』が、七実たちと関わる全ての人々を通して、繰り返し伝えつづけてきたことだ。

ひとみの手術は奇跡的に成功するものの、芳子の症状が止まることはない。家族の名前も積み重ねてきた思い出も、いつか忘れてしまう日がくるかもしれないけれど、ひとみちゃん」と娘の名前を呼ぶ声だけは、変わらず愛に満ちていた。

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