【静岡・御前崎】歴史ある和食処「井筒屋」で由比港の桜えびと幻のご当地アジを味わう

静岡市清水区由比にある「井筒屋（いつつや）」は、駿河湾特産の桜えび料理が味わえる老舗料理店。大正5年（1916）の創業以来、新鮮な桜えびを使った「由比定食」をはじめ、地元の海の幸を生かした多彩な料理を提供しています。春と秋の漁期には、生桜えびが楽しめる特別なメニューが人気。由比の美しい風景とともに、地元ならではの味わいを堪能できる、井筒屋の魅力を紹介します。

創業当時の趣を残す、地元で愛される和食処

JR由比駅前「由比桜えび通り」のシンボリックな存在である、桜えびのモニュメントゲート。そこから20分ほど歩いたところにある「井筒屋」は、由比で最初に桜えび料理を提供した店として、地元の人々や観光客に愛されています。

この地に移転して40年ほど経つという建物は、昔ながらの食事処といった雰囲気で、東海道の歴史を感じながら食事を楽しむことができます。

のれんをくぐれば、穏やかな空気が流れる空間が広がります。大正5年（1916）の創業時はお蕎麦屋さんとしてスタートしたとのことで、当時の雰囲気を残した温かい店内。どこか懐かしい感じがします。

由比の桜えびを存分に堪能できる、一番人気の「由比定食」

井筒屋で最も人気があるメニューは、由比の名物・桜えびが存分に味わえる「由比定食」1650円。桜えびご飯と、ふんわりサクサクの桜えびのかき揚げが一度に楽しめる贅沢なセットです。

佃煮とお吸い物は時期により具材が変わり、今回お店にうかがった時はしらす。春と秋の桜えびの漁期は桜えびの佃煮と桜えびのお吸い物になり、御膳が桜えび一色に染まります。

かき揚げはサクサクの食感と桜えびの風味が絶妙で、箸が止まらなくなります。厚みもあるのでかなりのボリュームですが、サクっと揚がっていて軽さが良い！

テーブルに置かれている桜えびの塩をかき揚げに振りかけて食べると、えびの風味が増してより一層おいしくいただけます。

こちらの塩は、ボイルしてから干した桜えびをすり鉢で細かく砕き、塩と合わせた自家製。桜えびを丸ごと使うのポイントで、そうすることによって身の部分のうま味が残り、抜群においしい塩になるのだそう。

桜えびご飯は、桜えびのヒゲや足、尾を取り除いた「きむき」を使用しています。かつて由比の至るところで作られていたきむきは、手間がかかるため現在では少数の製造工場でしか作られていません。柔らかく舌ざわりが良いのが特徴で、ご飯に炊き込むことで桜えびのうま味がご飯全体に染み渡り、一口ごとにその風味を楽しむことができます。

ぷっくりと肉厚、脂がのった「幻の魚」倉沢のアジ

倉沢のアジは、駿河湾奥部の由比で漁獲される、知る人ぞ知る幻の魚。6月下旬から8月下旬までが旬とされ、定置網漁で釣りあげます。

アジは本来回遊魚ですが、倉沢のアジは回遊しないため、身体は丸々と太り、脂の乗りも抜群。ぷっくりと身の厚い、食べごたえのあるアジに育つのです。

井筒屋では、旬の時期に大きなアジが獲れるとお刺身で提供。倉沢のアジはプリッとした弾力のある食感で味が濃く、ほかのアジとは一味違ううま味が感じられます。

倉沢のアジで握る寿司も、また深い味わい。大きなアジが獲れなかった日でも、寿司であれば提供できるのだそう。

倉沢のアジは、桜えびやハダカイワシといった良質なエサを食べているので、脂のノリが良いのが特徴。ほんのり甘い脂が酢飯のまろやかな酸味とよく合って、忘れられないおいしさです。

倉沢のアジは鮮度が命。新鮮で身の締まったアジがいただけるのは、店舗のすぐ近くにある由比港から仕入れているからこそ。井筒屋で駿河湾の恵みを存分に味わい、由比の美しい景色とともに特別な食体験を楽しんでみてはいかがでしょうか。

■井筒屋（いつつや）
住所：静岡県静岡市清水区由比314
TEL：054-375-2039
営業時間：11時30分～14時、17～19時
定休日：月曜（祝日の場合は営業、翌日休）

Text：本杉まこ
Photo：森島吉直（くふうしずおか）

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