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100歳を超えることが当たり前に。「人生100年時代」にどう向き合うべきか/100歳は世界をどう見ているのか①

  • 2024.9.4

『100歳は世界をどう見ているのか データで読み解く「老年的超越」の謎』(権藤恭之/ポプラ社)第1回【全4回】 2050年には50万人以上が100歳を超えるといわれる日本。敬老精神が高く長寿をめでる日本だが、介護や認知症のイメージにより、自分ごととしての「長生き」はネガティブにとらえられがちだ。本書は500人以上の百寿者と実際に会い、調査を続けてきた著者が加齢をめぐるさまざまなデータ、研究結果を紹介。高齢期に高まるとされる「老年的超越」の謎に迫る。多くを失いつつも幸せを感じられる老いとは何か。『100歳は世界をどう見ているのか データで読み解く「老年的超越」の謎』は、100歳を超える超高齢者の心と体を理解し、確実に訪れる人生への向き合い方を考える1冊です。

ダ・ヴィンチWeb
『100歳は世界をどう見ているのか データで読み解く「老年的超越」の謎』(権藤恭之/ポプラ社)

100歳以上は9万人

「人生100年時代」という言葉をあちこちで見かけるようになりました。日本人の2022年の平均寿命は女性87.09歳、男性81.05歳と世界トップクラスですので、100歳を超えることはもう特別なことではありません。

では100歳以上の人は何人いるのでしょうか? 厚生労働省は毎年「敬老の日」に当たる9月15日に100歳以上の人口を発表しています。2023年の発表では、9万2139人。昨年から1613人増えていて、1971年から53年連続の増加です。内訳は女性が8万1589人、男性が1万550人と、9割近くが女性。ちなみにこの時点での最高齢は大阪府柏原市の女性で、1907(明治40)年生まれの116歳です。男性の最高齢は千葉県館山市在住、1911(明治44)年生まれの111歳です。

100歳以上の人口を公的に調べはじめたのは1963年で、その時は153人でしたから、60年間で600倍以上に増加したことになります。1981年に1000人を、98年に1万人を超えて、日本の長寿化に伴いその数が増えてきました。

この背景には医学の進歩、社会保障・社会福祉の充実、健康意識の向上など、さまざまな関連がありますが、平和で安定した世の中であったことも忘れてはならないでしょう。

日本の平均寿命は世界トップクラスといいましたが、人口10万人当たりの100歳以上の数も世界1位です。フランス、アメリカ、ドイツを上回り、福祉の充実で知られるスウェーデン、デンマーク、フィンランドをも超えています。

ただし、これらの世界各国の百寿者の割合が正しいかどうかといったことに関しては議論の余地があります。少し前に調べた時は、実はマレーシアが1位だったのです。しばらくしてから修正されましたが、日本のような戸籍制度と住民基本台帳制度を持っている国は必ずしも多くはなく、特に発展途上国の場合、実体と異なっている場合が見られます。

2014年には、日本で開催されたマスターズ陸上競技にインドの「自称116歳」の男性が参加登録していることが「年齢が本当なら走れないのでは」と各メディアで話題になりました。パスポートの写しの生年月日には1897年10月6日と書かれていたそうですが、結局ビザが下りず、来日しませんでした。

100歳を超えることが当たり前に

長寿化は進むに伴い100歳以上の人口も増加しています。国立社会保障・人口問題研究所の推計(2017年)では、2065年には54万6566人になるとしています。ちなみに100歳以上の人を「百寿者」もしくは「センテナリアン」(centenarian)と呼びます。110歳以上の人はスーパーセンテナリアンです。

政府は1963年に100歳以上の高齢者を表彰して以来、「敬老の日」の記念行事として100歳を迎える高齢者に総理大臣からのお祝い状と記念品を贈呈しています。私が100歳の人の訪問調査をすると、居間や寝室に総理大臣の名前が書かれた表彰状が壁にかかっていることがあります。当時不人気だった総理大臣の名前が書かれている表彰状を指さしながら、「みんなは嫌っているけど私は大好きです」と話す人もいました。

昔々は、記念として100万円を提供していた自治体もあるそうですが、百寿者人口の増加とともに減額され、記念品だけになっているところが多いのではないでしょうか。実は、私の祖母も100歳の表彰を受けています。100万円の賞金はもらえませんでしたが、総理大臣の表彰、金杯、白磁のツボをいただきました。当時すでに百寿者の研究をしていたので、それを見た時は正直誇らしかったです。

このように、100歳達成は社会で祝うべきことでありますが、今や特別なことではなくなりつつあります。むしろ将来的には、100歳を超えることはごく普通のことになるでしょう。まさに「人生100年時代」は一部の人たちのことではなく、私たち一人一人が直面する事柄となっているのです。

それは家族などの介護を含めた100歳の人との付き合い方として、また自分自身が100歳になるということとして、さらに社会としてそれぞれにどう向き合うかという課題として表れています。つまり個人のレベルでも社会のレベルでも、「人生100年時代」のモデルが必要となっているのです。

人は何歳まで生きることができるのか

では、人間はいったい何歳まで生きることができるのでしょうか?

これまでの世界最長寿者はジャンヌ=ルイーズ・カルマンさんの122歳と164日です。フランスの女性で1875年に生まれ、1997年に亡くなっています。一方、男性の世界最長寿者は116歳と54日の木村次郎右衛門さんで、1897年に生まれ2013年に亡くなりました。このふたりについては研究者による調査データが残っていますが、認知機能の衰えはなかったという結果が出ています。

カルマンさんはアルルに住んでいて、そこに滞在していたフィンセント・ファン・ゴッホが親族の営む画材店に絵具と鉛筆を買いに来たということを覚えており、世界的に話題となりました。また、カルマンさんは100歳まで自転車に乗っていて、114歳で大腿骨を骨折するまで歩くことができました。長寿の秘訣は大好きなチョコレートを食べて赤ワインを飲むことだったそうです。

私がカルマンさんの話を聞いて長生きは悪くないと思ったことがあります。「リバースモーゲージ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本でも少し知られるようになりましたが、これは自分が住んでいる家を担保にお金を借りることができるシステムで、彼女はその契約を地元の人と結んでいたのです。細かいところは知りませんが、死んだら不動産を接収してもよい、しかし、生きている間は生活費を支払ってもらうということが条件だったと記憶しています。

でも予想以上に長生きするとどうなるか、想像できるでしょうか。カルマンさんが長命だったために、相手のほうが先に亡くなってしまい、その契約が息子に引き継がれたそうです。そして、彼女の生涯の生活費はその契約をもとに支払われたとのことでした。

早起きは三文の得といいますが、長生きは億万の得というところでしょうか。この話を聞いて私も長生きしようと思いました。彼女は凍った水道管の氷を解かそうとして地下室でボヤ騒ぎを起こした後、施設で最晩年を過ごしたのですが、その最晩年の様子はほとんど知られていません。

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