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「あなたの考えは分かる(分かっていない)」議論がこじれる原因を解明!

  • 2024.9.4
「あなたの考えは分かっている(分かっていない)」は、よく生じる / Credit:Canva,ナゾロジー編集

「あなたの言っていることは分かります。○○ってことでしょ?でもね……」

相手と意見が対立している時、あなたはよく「反対する理由はわかっている」と相手の考えがをある程度理解している気になっていないでしょうか?

しかし、その感覚は的外れである可能性が高いようです。

新しい研究は、こうした経験が自分だけではないことを示しています。

イギリスの国立大学であるキングス・カレッジ・ロンドン(KCL)に所属するブライオニー・ペイン氏ら研究チームが、人は、自分と反対意見を持つ人の考えを理解できていると強く感じているにもかかわらず、その推測は往々にして間違っていると報告したのです。

研究の詳細は、2024年8月28日付の学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • 「意見が異なる相手」の考えを推論する実験
  • ほとんどの人は反対意見を持つ相手の考えを理解できていると勘違いしていた

「意見が異なる相手」の考えを推論する実験

自分とはまったく異なる考えの人間と話し合うとき、あなたはおそらく相手がなぜその様に考えるのかを推測しながら議論しようとするはずです。

冷静に議論を進めるならば、相手の考え方をトレースし、きちんと相手の事情も理解した上で話す方が理性的ですし、それが大人の対応とも言えます。

しかし、反対意見を持つ相手の考えを推論するとき、私たちはどの程度正確に理解できているものなのでしょうか?

相手の考えを「分かっている風」に話す人 / Credit:Canva

今回、ペイン氏ら研究チームは、人々が他人の考えを推論する時にどのような傾向が生まれるのか調査しました。

アメリカから256人の参加者が募集され、彼らが持つ政治的見解において、保守主義(右派)のグループとリベラル(左派)のグループに均等に分けました。

彼らには、さまざまな政治的なトピック(例:移民は社会に有益である)が提示され、それぞれにどの程度同意するか5段階(強く同意~強く反対)で評価してもらいました。

そして参加者たちは、意見が同じ2人、または意見が対立する2人でグループを作り、別のトピックに対して相手の意見を推測し合いました。

ちなみに参加者たちは、相手の意見を予測するために、他のトピックにおける相手の回答を最大5つまで受け取ることができました。

また彼らは、自分の推測にどれほど自信を持っているかも報告しています。

この実験により、相手の意見を推測する際の精度や条件などを明らかにできるはずです。

ほとんどの人は反対意見を持つ相手の考えを理解できていると勘違いしていた

人は、異なる意見を持つ相手の考えを誤解しやすい。しかも自信満々。 / Credit:Canva,ナゾロジー編集

分析の結果、参加者たちの「反対意見を持つ人に対する推測」は、往々にして間違っていることが明らかになりました。

いくつかのトピックにおける相手の回答から、その人の考えを部分的に学んでいたとしても、正しく推測できていなかったのです。

しかも悪いことに、相手の考えに対して間違った推測をした人は、自分の推測に対して高い自信を示していました。

つまり人は、自信満々に、「あなたの言うことは分かるよ。○○だと思っているのでしょう?」なんて考えたり話したりする傾向があるものの、実は、その推測は大きくズレている場合が多かったのです。

そのため、誤解した推測を前提に、「あなたはきっと○○と考えているだろうけど、でもね……」と自分の意見を押し通そうとしてしまうのです。

誤解された人からするとたまったものではありませんね。

パートナーや友人、また同僚や上司からこのように、自分の気持ちをわかったつもりで反論され、イライラした経験を持つ人も少なくないでしょう。

ちなみに今回の研究では、主に政治的見解に関する意見の食い違いについて扱われました。

研究チームは、政治的二極化(国民の政治傾向が保守とリベラルのどちらかに偏り、中庸が少なくなること)の原因の1つに、今回の研究結果が関連していると考えています。

人々は自分と異なる考えの人を理解できていないことに気づいておらず、それゆえ一層極端な考えを持つようになってしまうというのです。

相手の考えを決めつけずに、「理解しよう」と対話することが大切。 / Credit:Canva

そして研究チームは、こうした問題がすぐに解決することは難しいことを認めつつも、「異なる信念を持つ人々との会話は、互いに対する誤った思い込みを正すのに役立つかもしれません」と直接の対話が正しい理解への近道であると考えています。

確かに私たちは、意見の異なる相手に対して、言いたいことはわかる、というようについついわかった気になってしまいがちです。

しかし断片的な情報だけで判断していると、相手の考えを勘違いしてしまう可能性が高くなります。

これは会議でも、パートナーとの喧嘩でも、友人との会話の中でも起こりうることでしょう。

だからこそ、「自分は相手のことを正しく理解できていない」という考えを持って、相手としっかり会話することが大切です。

重要なのは相手の気持や考えをわかった気になって話を進めないことなのでしょう。

そしてもし、「自分が誤解されている」と感じた時も、誤解されたままにするのではなく、丁寧に話し合うことで、円滑な人間関係を構築できるかもしれません。

参考文献

People are consistently and confidently wrong about those with opposing views
https://www.kcl.ac.uk/news/people-are-consistently-and-confidently-wrong-about-those-with-opposing-views

元論文

Poorer representation of minds underpins less accurate mental state inference for out-groups
https://doi.org/10.1038/s41598-024-67311-3

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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