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我ながら、こんなスーパー店員イヤだ。私ががめつく試食を配りまわった理由

  • 2024.9.4

大学在学中、スーパーで試食販売のアルバイトをしていた。派遣会社に登録しており、その日によって違う店舗で働く。売る商品も毎回違う。飲料であれば用意されたコップに注ぐだけだが、加工食品などはホットプレートで簡単な調理をせねばならない場合もあった。

◎ ◎

私はこの仕事が結構得意だった。マルチタスクが苦手なので調理が複雑な商品では微妙だったのだが、販売に集中できる飲料の売り上げはなかなか良かった。途中で店舗の在庫を売り尽くしてしまって派遣会社に連絡したことも何度かある。電話口の社員さんが「もうなくなったの!?」と驚いていたから、比較的早いペースで売ることができていたのだと思う。

後日給料を受け取りに行く際にレポートを提出するのだが、そこに記した売り上げ数についても誉めてもらえていた。
売り上げをあげたからと言って給料が上がるわけではなかったが、それでも評価してもらえることは嬉しかった。毎回違う店舗に行くことやレポート提出が面倒くさすぎたため、これをメインのバイトにすることはなかったが、販売している時間に限ってはやりがいを感じられた。

◎ ◎

この仕事をストレスなくこなすには、いくつかの心構えが必要だ。

まず一つは、寒さへの耐性。買い物していればお分かりになるだろうが、スーパーの店内は非常に寒い。食品を傷ませないためだから仕方が無いが、それにしても冷える。特に飲料などの場合、冷蔵品コーナーに一日中立っていることになる。私は別に寒さに強い方ではなかったので、なかなか辛かった。これに対してはもう、ただ着込むほかない。どんなに外が暑かろうが、スーパーの中は寒い。そのことを忘れずに、羽織れるものを持って行くしかない。店舗やコーナーによって差があるため、あくまで脱ぎ着できるものが良い。

あとは、売り上げへの執着も少しくらいあったほうがいい。先述したように売り上げは給料に響かない(影響する場合もあるのかもしれないが、私が働いていたところでは一切関係なかった)ため、強くこだわる必要はない。ただ、多少なりとも頑張らないと、一日中暇で仕方ないのだ。大抵1人で派遣されるから話し相手もいないし、お客さんからもスーパーの従業員さんからも見られているから、サボることも出来ない。

私に体力がないせいでもあるだろうが、ずっと立っていると非常に疲れる。そしてその疲労は、暇であればあるだけ強く感じられる。この暇と疲れを誤魔化すには、真面目に試食を配ってお客さんと話すしかないのである。そして多分、テキトーにやるよりも、売り上げに執着しながらの方が時間が短く感じられる。どんな言葉が響くのか、どうやって渡せばいいか。工夫しながらやることで、自分自身が退屈から救われた。

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しかし、執着したところで売り上げが悪いと落ち込んでしまう。そうならないために、あると便利なのが「がめつさ」だ。試食を欲していなさそうな人にも、臆せず渡す。受け取ってもらえたら、目が合わない相手でも営業トークをふっかける。日本人というのは、断れない人が多い。もらっちゃったから、頑張って話してくれてるから……みたいな理由で、渋々でもカゴに入れてくれる。このがめつさを利用して、私は暇を潰してやりがいを作った。そうでもしなけりゃ、この仕事は退屈すぎる。

きっと、がめつくせずとも売り上げを上げられる人もいるのだろう。元からお話が上手い人とか、人柄の良さがにじみでている人とか。そういう人なら商品を必要としてくれそうなお客さんにターゲットを絞ったとしても、高い売り上げを残せるんだと思う。残念ながら私はそうではなかった。

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でもまあ、やっておいて良かったとは思う。お客さんには申し訳ないが、がめつさを発揮しているときはなかなか楽しかったし。もし今自分がそういう店員さんに出会ったらと考えたら、めちゃくちゃイヤだけど。

■田道間ハヤシのプロフィール
札幌在住の25歳会社員。

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