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悪夢のような世界で精一杯の恋をした―― タイムスリップした少女と特攻隊員の切ない恋愛を描いた『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を漫画で読む

  • 2024.9.3

終戦から80年近くが過ぎさった。しかし戦争によって多くの人が犠牲になった事実は変わらない。そんな戦乱の時代にも、恋をし、家族を作り、必死で生きた人がいたのもまた確かな事実だ。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(マツセダイチ:漫画、汐見夏衛:原作/KADOKAWA)は、終戦直前へタイムスリップした少女と、そこで出会った特攻隊員の青年との切ない恋を描いたラブストーリーだ。原作シリーズはすでに累計発行部数150万部を突破。2023年には映画版も公開され大きな人気を博している。

中学生の主人公、加納百合は、その日、母親とケンカし家を飛び出してしまう。降りしきる雨から逃れるため防空壕らしき場所に入りこみ、そのまま寝込んでしまった。そして、目が覚めると終戦直前の1945年の6月にタイムスリップしていたのだ。

百合はそこで、特攻隊に入隊したばかりの大学生、佐久間彰に出会い、さまざまな出来事を乗りこえ、徐々に彼の誠実な性格にひかれていくのだった……。

現代に生きる少女と、特攻隊の青年が恋に落ちる話となれば、素直で、順調な恋愛になりえないだろうことは容易に想像がつく。それが薄氷の上を歩かされているような緊張感につながり、物語を読む手を止めさせてくれない。

くわえて、戦時下という激動の時代には、現代の価値観では理解することの難しい価値観がまん延している。いや、理解はできても納得はできないというべきだろうか。国のために自分ができることがあるならばやり遂げなければいけないと、まっすぐな瞳で思いを語る姿は胸を打つ。しかし遠からず敗戦する未来を知っている百合からすれば、その行動にどれほどの意味があるのか疑問をもたないわけがないのだ。

そうやって価値観の違いを感じたとしても、人と人が同じ時間を共有すれば、相手に魅力を感じ、恋に落ちることは当然にありえる。日本の敗戦と違い、百合と彰の恋の結末は歴史に決められているわけではない。ぜひ、本作を読んでその恋のゆくえを目に焼きつけて欲しい。

文=ネゴト/ たけのこ

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