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恋愛禁止の彼女達が素晴らしい表現力で恋愛ソングを歌う皮肉と矛盾

  • 2024.9.3

精神的に辛くなると子供の頃に聴いていた歌を聴きたくなる。アニソンだったり、特撮の歌であったり、J-POPだったりとその時々で様々だ。

ふと、私が子供の頃に流行っていたアイドルの歌を聴いた。そのアイドルはメンバーを変えながら現在も活動している。自動再生に任せていたら、新しい歌も流れてきた。キラキラとエネルギッシュで可愛い彼女たちに心奪われ、物の見事にハマってしまった。

しかし、歳をとったからだろうか、若い子の見分けがつかない。衣装や髪型が変わっただけで大混乱。若い子の成長は目まぐるしいため、リリースごとにイメージが変わる。曲によってはもう卒業しているメンバーもいて、さらに混乱を極めた。この子、いいなと思って調べればもう卒業していたり、芸能界を引退していたりして落ち込むこともあった。

そんなこんなを繰り返し、現メンバーの歌声を聞き分けられるくらいになった。

◎ ◎

そうなると次は欲が出てくる。生で見てみたい。ありがたいことに定期的に全国津々浦々を巡ってくれていて、私の生活圏内でもライブがある。

迷った末、ギリギリにチケットをとった。にわかだからというより体力や病状面を心配して、座って観る席をチョイスした。座って観る席なので振り付けを覚えたりする必要はない。しかし、アイドルのライブは初めてなのでローカルルールなどがあるのではないかと色々と調べていた。

すると一人のメンバーが卒業するという記事を見つけた。そのメンバーはまだ卒業するには早いが、学業などの意向で卒業し得る年齢でもあるので、ドキドキしながら記事を開いた。結論としてはデマだった。

その記事はファンの掲示板のようなものに載っていた。デマが平気で載るような場なので、メンバーに対してどうしたらそんなひどいことが言えるのかという内容が多く載っていた。

なんであのメンバーは卒業しないのか、何歳までいるつもりなのかなど年齢を揶揄するようなものから、胸が大きくなった、まじエロい、早くもっと脱いだ写真集を出してなど性的なものもあった。

◎ ◎

もちろんこの場ではオブラートに包んでいる。にわかな私でさえ目に入るくらいの場で、なぜそういう発言をするのだろうか。思うのは自由だが、それを自分の外に出したら責任が伴うし、本人を含め誰かを傷つける可能性があるのに。

年齢に関しては今時ナンセンスだなの一言に尽きる。ここ数年はコロナの影響で活動がままならず、今までの平均的な卒業年齢の通例に当てはめるのはかわいそうだなと思う。そしてアイドルの定年は何歳というのを外野が強制するものではないとも思う。

性的なものはもはや論外だ。性的な売り方をしているわけではないし、そんな目にさらされるためにアイドルになったわけでもないだろう。未成年もいるのに、本人が見るかもしれない場でなぜそういう言葉を出しちゃうのか。不躾である。

それらの記事と同時にもうグループとして落ち目とか女性ファン離れが激しいとかも語られていたが、どの口が言うのか。ファンのそういう振る舞いも一因なのではなかろうかと思った。

◎ ◎

モヤモヤしながらもライブ当日を迎えた。彼女たちの楽曲は女心を歌った女性に刺さる曲が多い。中でも恋愛ソングはどうしたらそんな詩が書けるのかというくらい刺さる。

でも、それらを歌い、舞う彼女たちは恋愛禁止だ。なんという皮肉と矛盾。ライブで見ると、彼女たちの表現力が素晴らしいがゆえに、その事実が生々しく感じられた。

ライブは楽しかったけど、純粋には楽しめなかったような気がする。性的な視線に晒されたり、恋愛禁止だったり、彼女たちを応援していることが、何かの悪事に加担しているかのようにすら思えてきてしまった。

ライブから少し時間が経って新曲が発表された。新曲は私には刺さらなかった。画面越しに可愛いなと思っているくらいが、私と彼女たちのちょうど良い距離だったのかもしれない。

■馬須川馬子のプロフィール
毒親育ち。今は親から離れ、自分を育て直しています。ノンフィクションの作文が好きで、社会復帰のための活動の一環として投稿活動しています。

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