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山田涼介”加賀美”の成長ぶりが素晴らしい…ラストに残された問題とは? 『ビリオン×スクール』第9話考察レビュー

  • 2024.9.3
『ビリオン×スクール』第9話 ©フジテレビ

山田涼介主演のドラマ『ビリオン×スクール』は、日本一の財閥系企業のトップである億万長者が、身分を隠して高校教師となり、生徒と様々な問題を通して成長する痛快・学園エンターテインメント。今回は、第9話のレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

『ビリオン×スクール』第9話 ©フジテレビ
『ビリオン×スクール』第9話 ©フジテレビ

絵都学園校長・東堂真紀子(水野美紀)が小学生の頃に担任だったことや、学校の屋上で真紀子と対峙したことなど、失っていた一部の記憶を取り戻した加賀美零(山田涼介)。そんな中、真紀子の娘でゼロ組の生徒である雪美(大原梓)の行方がわからなくなる。

『ビリオン×スクール』第9話では、事前に「全伏線回収」と告知されていたように、謎に包まれていた加賀美の過去が東堂親子の問題と向き合う過程で明らかとなった。

自分のやり方が間違っていたことを受け入れ、雪美を加賀美に託した城島佑(奥野壮)。それによって、完全に孤立した雪美は学校の屋上から飛び降りようとしていた。

そんな彼女の居場所を見つけたのは、梅野ひめ香(上坂樹里)。梅野は彼女からいじめを受けていたのだから、普通は今の状況も“自業自得”として放っておいてもいいはず。だけど、雪美の孤独も死ぬほど辛い気持ちも一番理解できるのは梅野だった。だからといって、雪美のことを許したわけではない。 自分がしてきたこととも向き合わず、逃げようとしていた彼女に「被害者みたいな顔をして死ぬのはずるい」と梅野は訴えかける。

さらには城島や紺野直斗(松田元太)、松下リナ(倉沢杏菜)も雪美のもとに駆けつけた。彼らは雪美より早く更生したとはいえ、間違った道に進む彼女を止めず、そこに加担したことは事実だから。罪を雪美だけに背負わせず、自分も一緒に向き合おうとしている。

『ビリオン×スクール』第9話 ©フジテレビ
『ビリオン×スクール』第9話 ©フジテレビ

自分の居場所はもうどこにもないと思っていた雪美だが、そんなことはない。自分を強く見せるためだけにつるみ、本音で語り合うことなど一切なかった頃の彼らよりよほどいい関係になった。そして、それこそ真紀子がゼロ組を作った理由であることが明らかとなる。

雪美が死のうとしていた現場に駆けつけ、彼女を家まで送り届けた加賀美。そこで彼は“三者面談”と称し、自分の過去がきっかけですれ違ってしまった東堂親子と向き合う。

20年前、加賀美は真紀子の教え子だった。母親を亡くし、途中から学校に通い始めた加賀美を自身が担任を務めるクラスに明るく迎え入れた真紀子。しかし、実は彼女のクラスにはいじめがあり、被害に遭っていたのが絵都学園の元校務員・内巻雫(神木隆之介)だったのだ。

そんな彼をかばったことで今度は加賀美がいじめられるように。ただ彼は生まれつき知的能力が高いため、あくまでも冷静にいじめの証拠を集めていった。

真紀子はそんな加賀美からいじめの事実を突きつけられ、動揺しながらもきちんと問題に向き合おうと彼が証拠集めに使っていたボイスレコーダーに手を伸ばす。だが、不幸にも真紀子がいじめの事実をもみ消そうとしていると勘違いした加賀美は、思わず彼女から逃げようとして屋上から転落してしまったのだ。

その瞬間も録音されていたボイスレコーダーをのちに、見つけてしまった雪美。彼女は幼い頃から真紀子から「どんな時も自分に恥ずかしくない行動をしなさい」「困っている人に手を差し伸べられる人でありなさい」と言われて育ち、そんな母親のことを尊敬していた。にもかかわらず、真紀子が過去にいじめをもみ消したかもしれないことがわかり、疑心暗鬼になってしまったのだろう。

だけど、真紀子はいじめをもみ消そうとしていたわけじゃない。意図的ではないにしろ加賀美に怪我を負わせてしまった罪とも向き合おうとしていたが、加賀美の父に「全て忘れろ」と言われ、それ以上どうすることもできなかった。代わりに、いじめに気づけなかった過去を省みて、孤立した生徒に居場所を与えるべくゼロ組を作ったのだ。

『ビリオン×スクール』第9話 ©フジテレビ
『ビリオン×スクール』第9話 ©フジテレビ

そうして長い間すれ違ってきた親子の関係を修復すべく、加賀美は大胆な行動に出る。それは2人の前でわざと屋上から転落すること。その瞬間、真紀子は咄嗟に手を伸ばし、加賀美と一緒に屋上から落ちるが、下にはあらかじめ光学迷彩透過布で覆われたマットが敷いてあり、二人は助かる。加賀美は真紀子がいざという時は身を程して自分を守ることがわかっており、その姿を雪美に見せたかったのだ。

そして加賀美は雪美に「人間である限り、過ちを犯す。だが、たった一つの過ちで、その人の全てを否定する必要はない。信じてた言葉や感じた感情まで、否定する必要はない。その人を好きだった自分まで、否定することはないんだ」と語りかける。

一度でも間違えば、叩いてもいい人間だと判断され、総攻撃に遭う時代。大きな器で人を許し、やり直す機会を与える加賀美の言葉は雪美たちと同じ10代の視聴者だけではなく、幅広い年齢層の視聴者に響いたのではないだろうか。

もちろん、自分の過ちを心から反省したからといって、そんな簡単に許してもらえるわけじゃない。たくさんの人を傷つけてきた雪美たちにはまだまだ試練が残されており、ゼロ組の生徒たちから次々と「東堂さんと城島くんがいるなら文化祭には参加しない」という声が上がるのだった。

そんな中、加賀美がAIに頼らなくなったことでティーチ(安達祐実)が暴走を始める。最終回も目前に迫る本作。ラストは全員が更正するも未だ心が一つになっていないゼロ組の問題と、加賀美がこの学園にやってきた本来の目的であるAI教師の開発に向き合うこととなるのだろう。

(文・苫とり子)

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