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平安の働く女子まひろ、藤式部になる!突然の里帰りからのひきこもり?道長との変わらぬ愛を確認

  • 2024.9.3

「光る君へ」言いたい放題レヴュー

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光る君へ 第33回「式部誕生」あらすじ&今週も言いたい放題平安の働く女子まひろ、藤式部になる!新米なのに突然の里帰りからのひきこもり?道長との変わらぬ愛を確認

 

 

今週のお当番、N子です。とうとう、まひろさんが彰子さまの女房として出仕しましたね。はじめてのお勤め、働く女子まひろが誕生!と思ったら、いきなり里帰りって、いつも自由なまひろさんです。

でも先週のエンディングで内裏に上がった際、女房軍団からの刺さるような視線に、まったくなじめる気がしなかったですよね。案の定です。

平安女子の女房ライフ、結構大変そう!いつの時代もやっぱり人間関係なんだな

まひろさん、出仕後に皆さまにご挨拶して、いきなり父・為時の官職から取って藤式部という、女房名をいただきました。このとき、藤式部ですよと伝えてくれたのが、ドラマでは小林きな子さん演じる宣旨の君と呼ばれるお方。醍醐天皇の孫というやんごときなき血筋のお方です。

 

 

彰子の女房は、それこそ入内もできるんじゃ?と思うほど、格式の高い家の姫たちばかりです。彰子さまが入内する際に集められた女房は、40人ほど。身内を中心に集められたと言われています。

女房にもクラス分けがある。まひろさんは一応、トップクラスの女房だった

ひとくちに女房と言っても、クラス分けがありました。中宮彰子さまのお側仕えする上臈(じょうろう)、下働きの者をたちを監視したり雑用を担う中臈(ちゅうろう)、その下に下臈(げろう)と、3クラスにわかれていたのです。

 

 

まひろさんはもちろんトップクラスの上臈です。でもドラマの中では上臈の女房たちも、こまごまとしたお仕事をこなしていましたね。宮仕えはツラいのよ。

彰子さまの女房軍団は、宣旨の君を筆頭に、紫式部は上から5番目の上位ランクの女房だったそうです。彰子さまが行啓した際の牛車の順番からわかっているんだとか。家格では他の女房たちから引けを取っていましたが、やはり『源氏物語』の威力があったのでしょうか。まひろ、すごいです。

女房のお部屋=局(つぼね)は、間仕切りは几帳だけ?まひろ、たった8日間で女房終了……

まひろたち女房が寝起きする局のシーンは面白かった!俯瞰したカメラが、局を移動しながら見せていく、まるでブライアン・デ・パルマの映画のような演出!

 

 

それぞれの女房たちがどんな風に過ごしているのかがよくわかりました。いびき、激しい寝言を言う者、公達との逢引に出かける者までいましたよ。ちょっとした寝息まで漏れるような、几帳や御簾、屏風で細切れに仕切っただけの局で休める気がしません。

 

 

気が散ってしまい、物語の執筆がまるで進まないまひろさん。とうとう道長に直談判です。道長は声を荒げて引き止めます。左大臣ともあろうものが平身低頭お願いしたのに、やっぱりまひろさんには勝てないのですよね。まひろさん、たった8日間の出仕で里帰りです。

約半年間の引きこもりの末、「桐壺巻」成立!

実際、紫式部は女房たちとの折り合いが悪くて、さっさと里帰りしているそうです。その後は約半年くらい、実家に引きこもっていました。その間、執筆もしていたのでしょうが、どうしよ?いつ戻ろう?とウジウジしていたそう。ドラマではササッと里帰りして、サクッと執筆して帰ってきたように描かれていましたが、本当は約半年も戻っていなかったのです!

 

 

戻ってきては?と催促の和歌が贈られたり、正月だから彰子さまにご挨拶の和歌贈って?=だから出仕しなよ!って言われても、和歌だけ贈ってまたウジウジ。

 

 

戻るタイミングを完全に逸して、さらに焦るばかり。結局、倫子さんから出仕を促される和歌が来て、やっと重い腰をあげたそうです。このあたりの紫式部のヒッキーな様子は、「紫式部集」の和歌の贈答の記録からわかります。

 

 

紫式部さんは、相当内向的な人。まひろさんとは違いますね。

まひろさんは、実家でのびのびと執筆を続行。桐壺巻を仕上げ、再度出仕してきました。とてもいい顔しています。早速、一条帝のお目通りとなりました。桐壺巻を読み、最初は自分への当てつけと感じていたけれど、次第に心に残る……、みんなにも読ませたいと有難いお言葉を頂きます。『源氏物語』が『枕草子』を追撃です!

彰子さまは奥ゆかしいにもほどがあるけど、まひろには心を開いてくれそうな予感

さすがにまひろさんは、物語を書く女だけあって、彰子さまへの観察が細やかです。ほかの女房が見逃している彰子さまの別の顔をいくつも発見します。

 

 

わざとお手玉をあらぬ方向へ飛ばして、親王さまにおやつを差し上げたり、自分の本当に好きな色は空の色、青だと教えてくれたり。まひろにだけこっそりと、自分の本当の気持ちを伝えてくれました。

これ、わかるなあ。どんなに近くにいても、自分のことを見ていない人と、ささいなことでも見逃さないでいてくれる人がいる。まひろさんは、彰子さまにとっては、初めて自分を曇りのない目で、本質を見ようとしてくれた、心の動きを見逃さないでいてくれた人なのでしょう。

 

 

今後、ふたりの間にどんなやり取りが生まれるのが、とても楽しみです。

 

 

しかし、奥ゆかしいにもほどがあるお姫さまです。自分の考えはまったく出さないけれど、自分というものがないわけではないヒロインといえば……『細雪』の雪子かな!

摂関政治から院政、そして武力の時代への萌芽もあり

今回、政治的な動きでいえば、伊周の復権でしょうか。一条帝は伊周を除目の儀に復帰させるように、道長に命じます。明らかに道長へのけん制ですよね。このまま彰子に皇子が生まれなければ、伊周の復権路線まっしぐら。道長は本当にピンチなのです。どうにかして一条帝と彰子を結び付けたい……ってまひろ頼みなんですけど。

また、摂関政治から院政期への気配もありました。除目での人事問題で、一条帝が推挙する平維衡(たいらのこれひら)を伊勢守にすることに対し、道長が異を唱えました。道長は、寺社や貴族が武力で争いごとや勢力拡大を目論むような世の中になってきたこと、平維衡は平致頼(たいらのむねより)と戦いを起こしていたため、武力による争いごとは世を乱すもとだと、任命に反対します。

平維衡は、のちに平清盛へと繋がる一門の祖です。道長やまひろが生きた時代から約150年後、道長が恐れた通り、武力で問題を解決し、勢力拡大していく時代が訪れます。大河ドラマでも描かれた『太平記』の時代、そして武士の世へと移っていくその萌芽は、もうこの時代にあったんだということがわかりました。

そこにあるのは、変わらぬ愛だった!幼いふたりの出会いが描かれた扇を胸にキュンキュンするまひろ

『源氏物語』効果で、一条帝が彰子のもとに訪れてくれたことに感謝する道長は、まひろの局を訪れ、褒美の品を渡し、去っていきました。箱を開けると、そこには扇が入っています。おそるおそる広げるとそこには、鴨川のほとりで出会ったときのふたりが描かれているではないですか!

 

 

逃がしてしまった小鳥を追って、鴨川まで探しにきたまひろと、元服前の三郎君だった道長。あのとき交わした言葉、風景が、蘇ってきます。扇を胸に抱き、心が震えるまひろさん。

彰子さまの女房に上がったのは、一条帝の心を彰子さまに向かわせたいという、ひとえに道長のまつりごとのため。そして父・為時が散位(官職がない状態)で、家計を支えたいという思いと、書くことで自分の力を試したかったという思いと、様々な理由がありました。

でも、扇の絵が、あの頃の幼いふたりのまま、今でも私の気持ちは出会った時のままですよ、という道長からのメッセージ????だとしたら、すごい熱愛ぶりです。まつりごとのために、まひろの才能を使うけれども、その根底には変わらぬ愛、思いがあると。

 

 

そして、この扇から導かれるように、『源氏物語』の第五帖となる若菜巻が書かれるって展開でしょうか?そうよねきっと。

 

「すずめの子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちにこめたりつるものを」
「雀の子を犬君が逃がしてしまったの。伏籠の中に入れておいたのに」と泣いている若紫を垣間見る光る君の、有名なシーンです。

若紫、長じて紫の上と、光る君は正式な夫婦にはならなかったけれど、終生離れることはありませんでした。

 

 

まひろは若紫で、光る君は道長なのだとすれば、このふたりも結ばれることはないのだけれど、離れることもないのだな……すごい強度の高い愛情だな……と、今週も感心しきり!のN子でありました。

「光る君へ」言いたい放題レヴューとは……

Premium Japan編集部内に文学を愛する者が結成した「Premium Japan文学部」(大げさ)。文学好きにとっては、2024年度の大河ドラマ「光る君へ」はああだこうだ言い合う、恰好の機会となりました。今後も編集部有志が自由にレヴューいたします。編集S氏と編集Nが、史実とドラマの違い、伏線の深読みなどをレビューいたしました!

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