先の見えない親の介護。
特に在宅介護は気が休まらず、介護される側も介護する側も疲れ切ってしまうという話を耳にします。
これは筆者の知人50代女性から聞いたお話です。
誰にもおとずれる老い
親の介護は遠い未来のことだと思っていましたが、ゆっくりとその時は近づいていました。
私の父は早くに亡くなりました。
残された母はいつも元気で明るく、そして世話好き。
同居する共働きの弟夫婦の家事を一手に引き受け、弟夫婦の生活を助けていました。
そんな母も加齢とともに体が不自由になり、介護が必要になってきたのです。
お互いにイライラ
母は動作が遅くなり、トイレに間に合わないことが増えてきました。
失禁したことを知られるのが恥ずかしかったのでしょう。
汚してしまった下着をタンスの中に隠していたことが何度もありました。
もともとしっかりものの母は、自分のことが自分で出来なくなり人の手を借りなければならないことに、情けなさやもどかしさもあったのかもしれません。
我慢できないイライラを弟夫婦にぶつけてしまうこともありました。
母からの不条理な態度に弟夫婦も疲れてしまい、母にキツい態度をとってしまうようになったのです。
衝撃的な言葉
私が近くに住んでいればもっと頻繁に母を訪ねることが出来たのですが、住まいが遠くてなかなか帰れず、弟夫婦に介護の負担を背負わせることになってしまいました。
弟夫婦は誰にも頼らず背負い込んでしまった介護の負担に追い詰められて、さらに厳しい態度を取ったり言葉をぶつけてしまったりしていました。そんな二人に、母はこう言ったそうです。
「私はこれからそんなに長く生きないのだから、そんなにいじめないでほしい」
介護を抱え込まないで
その言葉を聞いて弟夫婦はハッとし、「自分たちの心身に余裕が持てる介護をしなければいけない」と思ったそうです。
自分たちだけで介護をしようとせずに積極的に公的介護サービスを利用し、母から離れて休める時間を持つようにしました。
母もデイサービスやショートステイを利用することで、同世代の人と話ができてリフレッシュできたようです。
精神的な余裕を取り戻し、以前のようにお互いの心を傷つけ合うことがなくなりました。
介護は家庭内だけで抱え込まず、公的介護サービスなどを利用して、お互いが疲弊しないようにすることが大切だと感じるエピソードでした。
【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2024年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Itnライター:K.Sakura
セラピスト・販売員・介護士の職を通じて常に人と関わる職務経験から得た情報を記事化するブロガーを志す。15年ほど専業主婦兼ブロガーとして活動するも、モラハラな夫からから逃げるために50代にして独立。母としては、発達障害のある子どもの育児に奮闘。自分の経験が同じような状況に悩む人の励みになって欲しいと思い、専門ライターに転身。アラフィフでも人生やり直しができることを実感。