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深海探検で「未知の生物」を新発見!生きた姿を初めて見る「幻のイカ」も!

  • 2024.9.2

新たな深海モンスターたちが見つかったようです。

米シュミット海洋研究所(SOI)はこのほど、南太平洋のチリ沖で行われた深海探査にて、新たな海山と新種と見られる生物20種ほどを発見したと報告しました。

その中で、今まで死んだ状態でしか見つかっていなかった極めて希少な深海イカを史上初めて生きた姿で捉えることに成功したとのことです。

さて、今回はどんな未知の生物たちが見つかったのでしょうか?

目次

  • 今年3回目のチリ沖探査、新たな「海山」を発見!
  • 約20種が新種の可能性!生き姿を初めて見る「幻のイカ」も

今年3回目のチリ沖探査、新たな「海山」を発見!

今回の調査は調査船ファルコー号による今年3回目のチリ沖の深海探査となります。

前2回は今年1月と2月に行われており、それまで知られていなかった未知の深海生物を一挙に150種以上も見つける成果を挙げていました。

調査場所となったのは、チリ沖からイースター島までの約2900キロにおよぶ「ナスカ海嶺およびサラ・イ・ゴメス海嶺(Salas y Gómez and Nazca Ridges)」です。

ナスカ海嶺とサラ・イ・ゴメス海嶺(ピンク:海山、点線:国の保護領域、白線:生物・環境的に重要な場所)
ナスカ海嶺とサラ・イ・ゴメス海嶺(ピンク:海山、点線:国の保護領域、白線:生物・環境的に重要な場所) / Credit: CORAL REEFS of the HIGH SEAS COALITION

この海嶺には200以上の海山が連なるように並んでいます。

海山はデコボコに隆起した険しい斜面が生物たちのすみかや隠れ家、あるいは産卵場所に適しているため、生物多様性のホットスポットとなる場所です。

3度目となる本調査ではチリ沖から約1450キロのナスカ海嶺を対象とし、28日間にわたって10カ所の海山を探査しました。

その中でこれまで知られていなかった海山を新たに一つ見つけています。

こちらがそのスキャン画像です。

新たに見つかった海山のスキャン画像
新たに見つかった海山のスキャン画像 / Credit: Schmidt Ocean Institute(2024)

海山の面積は約70平方キロで、周囲の海底から約3109メートルの高さまで隆起しています。

チームはこの海山に多様な深海生物が繁栄していると考え、無人の海底探査機「SuBastian」を遠隔操作して生態調査を行いました。

これに加えて、隣接する9カ所の海山も同時に調査しています。

その結果、今回もまた驚きと魅惑に満ちた深海生物の姿が捉えられました。

それでは深海探査で見つかった生物たちを一挙に見てみましょう。

約20種が新種の可能性!生き姿を初めて見る「幻のイカ」も

フサアンコウ

まずは深海探査でおなじみとなったこちらの魚。

フサアンコウ科の深海魚
フサアンコウ科の深海魚 / Credit: Schmidt Ocean Institute(2024)

前回の調査でも見つかっていたこの生物はフサアンコウ科(Chaunacidae)の一種と見られる深海魚で、真っ赤な体と無数に生えた細い突起が特徴的です。

彼らは胸ビレを使って海底の岩場を歩くように進みます。

この個体は水深1430メートル付近で見つかりました。

キャスパータコ

続いてはこちらの青白い風船のようなタコ。

これは非常に珍しいタコで、2016年に太平洋のハワイ沖で初発見されました。

キャスパータコ
キャスパータコ / Credit: Schmidt Ocean Institute(2024)

しかしそれ以降、生きた標本が採取されなかったため、詳しい調査が進んでおらず、いまだ正式な学名がついていません。

現在は見た目がファンタジー映画『キャスパー』(1995)に出てくるお化けに似ていることから「キャスパータコ(Casper octopus)」と通称されています。

南太平洋で見つかったのは初めてであり、この個体は水深4443メートル付近で捉えられました。

ユメカサゴ

こちらの色鮮やかな魚は、ユメカサゴ属の一種「ヘリコレヌス・レンゲリチ(Helicolenus lengerichi )」です。

ユメカサゴの一種
ユメカサゴの一種 / Credit: Schmidt Ocean Institute(2024)

ユメカサゴはインド洋、太平洋、大西洋にかけて広く分布するよく知られた魚種です。

海底でじっとしている姿が眼を開けたまま夢を見て寝ているように見えることから、この和名が付けられたとの説があります。

チリ沖の海山にも住んでいたようですね。

コシオリエビ

コシオリエビ上科(Squat lobster)の一種と見られるロブスターも見つかりました。

コシオリエビは深海探査でよく見つかる生物ですが、こちらの薄ピンクの種は観察例がなく、チームも「新種の可能性が高い」と考えています。

コシオリエビの新種か
コシオリエビの新種か / Credit: Schmidt Ocean Institute(2024)

スパゲッティモンスター

さらに前回の探査でも見つかっていたエイリアンのような深海生物が確認されました。

こちらはクダクラゲ目のボウズニラ科に属する一種と考えらており、たくさんの触手と海中をふわふわと漂う様子から”空飛ぶスパゲッティ・モンスター(flying spaghetti monster)”と通称されています。

スパゲッティモンスター
スパゲッティモンスター / Credit: Schmidt Ocean Institute(2024)

生き姿を初めて見る「幻のイカ」

そして今回の目玉となるのは、こちらの小さな深海イカです。

これはプロマコテウティス属(Promachoteuthis)に分類されるイカであり、このグループはこれまでに3種のみが確認されています。

しかし、いずれも1800年代後半に採取された少数の遺骸にのみ基づいており、死んだ状態でしか見つかっていませんでした。

生きた姿は初めて!
生きた姿は初めて! / Credit: Schmidt Ocean Institute(2024)

それが今回ついに生きた姿が初めて確認され、海洋生物学上の貴重な発見となりました。

28日間にわたる深海探査で、新種の可能性が高い生物は20種ほど見つかったとのことです。

SOIの海洋生物学者であるトマー・ケッター(Tomer Ketter)氏は「私たちの発見は深海の生態系の驚くべき多様性を浮き彫りにした」と説明。

その上で「これらの調査で収集されたデータは将来的に、海山の生態系の保護活動に役立つと期待される」と話しました。

深海探査は今後も定期的に継続される予定で、その度に深海に潜む未知の生物たちが明らかになるでしょう。

こちらはチリ沖の深海探査の第1弾です。

こちらの記事が第2弾です。

こちらの動画は今回の調査で見つかった生物たちのダイジェスト映像です。

参考文献

New Seamount and Previously Unknown Species Discovered in High Priority Area for International Marine Protection
https://schmidtocean.org/new-seamount-and-previously-unknown-species-discovered-in-high-priority-area-for-international-marine-protection/

Flying Spaghetti Monsters And 20 Potential New Species Spotted At Sea Mounts
https://www.iflscience.com/flying-spaghetti-monsters-and-20-potential-new-species-spotted-at-sea-mounts-75696

New images of deep sea wonders are surprisingly adorable
https://www.popsci.com/environment/deep-sea-cute/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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