そろい踏みした都心のラグジュアリーホテル

【建築・デザイン】東西の伝統・文化を互いにリスペクト

5大ホテルに共通するのは、余分な装飾を排したシンプルモダンで快適な居住性。和の要素を取り入れながら、ヨーロッパ発のエレガンスを取り入れたインテリアだ。ブルガリ ホテル 東京のインテリアは、他の8つのブルガリ ホテルと同様、イタリアの建築設計事務所ACPVアーキテクツ アントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィエルが担当した。ブランドが持つ世界観を人々に体感してもらう場という共通のコンセプトを継承しながら、日本的な感性と卓越したクラフツマンシップに敬意を表した、ローマと東京の伝統と文化を紡ぎ合わせたデザインが特徴だ。ホテルの全体に、洗練されたイタリアのエッセンスが散りばめられ、機能的にも優れた空間を創り上げている。

ジャヌ東京のインテリアを手がけたのは、アジア各国を中心に活躍するベルギー出身の建築家兼インテリアデザイナー、ジャン=ミシェル・ギャシー。日本のミニマリズムにインスパイアされながら、ヨーロッパ的な優雅さも加えたコンテンポラリーなデザインは、一瞬はシンプルに感じるものの、やがて上質なエレガンスに魅了されてくる。

日本初進出のスペース・コペンハーゲンがインテリアを担当したのがホテル虎ノ門ヒルズ。コペンハーゲンのレストラン「Noma」を手がけたことでも知られるデンマークのデザイン事務所だ。日本と北欧の建築に共通するタイムレスでミニマルなインテリアは、東京という国際都市の中心に位置するホテルにふさわしい。

スペース・コペンハーゲンと同じデンマークのデザイン会社のノーム アーキテクツが、建築家・芦沢啓治とコラボレーションしたのがベルスター東京だ。カリモク家具のライフスタイルブランド「カリモク ケース」の温かみを感じる木製家具を配し、住まいとしての快適さも追求している。ホテルが入る複合施設「東急歌舞伎町タワー」の外装デザインを手がけた建築家・永山祐子は、地上から吹き上がり、空に溶けていく噴水をイメージしたビルを通して、歌舞伎町という地に脈々と続く人々の思いを未来につなげようとした。

東京エディション銀座のデザインを担当した隈研吾が打ち出したコンセプトは「織る」。銀座を「世界の最先端と日本の伝統文化が織り成す街」と位置付け、ホテルは街全体を織り上げ、世界へと繋げていく新たなランドマークとなるべきだと考えた。得意とする直線的でシャープなディテールに、やわらかな印象を与える円のモチーフを組み合わせたシンプルモダンなインテリアは、快適な居住性とまるで自分のアパルトマンに帰ってきたかのようなインティメート感をもたらす。

【レストラン＆バー】東京のグルメシーンに加わったきら星のレストランたち

5大ホテルには、東京のグルメシーンの頂点を極める、合わせて22軒のレストラン＆バーがきら星のごとく並ぶ。ホテル虎ノ門ヒルズの「ル・プリスティン東京」は、オランダ出身のスターシェフ、セルジオ・ハーマンが監修する、”ニュー・イタリアン”ともいうべき新感覚のガストロノミー。日本料理にも通じる繊細で軽やかな料理に、「世界のベストレストラン50」に8年間連続ランクインした伝説のシェフの実力が垣間見える。

ブルガリ ホテル 東京のメインダイニングは、ミシュランガイド東京2024で、はやくも1つ星を獲得した「イル・リストランテ ニコ・ロミート」。時代が求める新しい味わいを探求し、明快で余分な装飾のないクチーナ・イタリアーナを提供する。例えば、トマトとほんの少しのEVオリーブオイルだけで仕上げる「スパゲッティ ポモドーロ」。凝縮したトマトの旨みは異次元のおいしさだ。

ジャヌ東京が誇る8つのレストラン＆バーのなかでも、朝8時から夜の22時まで営業し、ホテルの顔ともいえるオールデイダイニングの役割を果たすのは「ジャヌ メルカート」。RED U-35の受賞歴を持つ山口卓也シェフが率いる、活気あふれるイタリアの市場をイメージしたレストランだ。ベルスター東京の「レストラン・ベルスター」では、地上45階、天井高13mという、天空に浮かんでいるかのような解放感に満ちた空間で、全国から集めた厳選素材を駆使したフレンチが楽しめる。

東京エディション銀座には、ホテルのシグネチャーといえる存在の「Lobby Bar」、フルーツやハーブ、スパイスを使ったカクテルの原型、パンチにフォーカスした「Punch Room Tokyo」、今年4月6日にオープンした銀座初のナチュラルワインにフォーカスしたルーフトップバー「The Roof」の3つのバーがある。エディションというユニークなブランドを立ち上げた創業者イアン・シュレ―ガーが唱える”ロビー・ソーシャライズ”の場を、銀座という街の真ん中で提供している。

【客室】トレンドは上質さをまとったシンプルモダン

スイートルームの頂上対決は、ブルガリ ホテル東京の「ブルガリスイート」とジャヌ東京の「ジャヌ スイート」。416㎡という圧倒的な広さを持つブルガリ スイートは、マクサルトやフレックスフォルムといったイタリア製高級家具を置いた４つのシーティングエリアを持ち、壁には篠田桃紅の墨象画も。ジム、オフィスコーナー、キッチンや本格的なバーを備える。

片やジャヌ スイートの広さは284㎡だが、隣接する客室とコネクティングすれば519㎡まで拡張可能。東京タワーや麻布台ヒルズの緑豊かな中庭を一望する2つのプライベートバルコニー、バーカウンター、フルキッチン、ライブラリーを備え、シンプルな和のスタイルと優雅なヨーロッパの設えが融合した上質な空間だ。

スイート5室を含む97のゲストルームを持つベルスター東京とスイート10室を含む86室の東京エディション銀座は、それぞれ新宿、銀座という繁華街の中心にありながら、すべて41㎡以上の広さを持ち、快適でゆったりとすごせる客室が特徴。

ベルスター東京は、全客室が地上200m以上にあり、東京を一望できる抜群の眺望を誇る。日本の伝統文化を織り交ぜて、シンプルモダンにまとめられたインテリアはきわめて居心地がいい。東京エディション銀座の客室は、重厚感のあるウォールナットのフロアと、ミニマルなインテリアで統一されている。

ホテル虎ノ門ヒルズは、他のホテルとは少し異なるアプローチを取る。霞が関、赤坂、新橋・汐留などを結ぶ官庁街、ビジネス街の中心にあって、客室数は27㎡や32㎡のコンパクトな部屋を含む全205室。他の4つのホテルのおよそ2倍の規模だ。シンプルで機能的に設計されたインテリアで、バケーションだけでなく、ビジネスを目的とした宿泊客にも利便性の高い客室を提供し、全室に共通する天井までの高さの窓で開放感を演出する。

東京に舞い降りた5大ラグジュアリーホテルは、グローバルブランドらしい非日常感を感じさせるインテリアや洗練されたサービスに和のもてなしのエッセンスが加わり、充実した滞在を約束してくれるだけでなく、それぞれが卓越した個性を放っている。旅の目的に合わせて、マイベストホテルを選びたい。

ブルガリ ホテル 東京

東京都中央区八重洲2-2-1

Tel.／03-6262-3333

bulgarihotels.com/ja_JP/tokyo

BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel（ベルスター東京）

東京都新宿区歌舞伎町1-29-1

Tel.／03-6233-8800

https://www.panpacific.com/ja/hotels-and-resorts/bellustar-tokyo.html

ホテル虎ノ門ヒルズ

東京都港区虎ノ門2-6-4 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー

Tel.／03 6834 5678

hoteltoranomonhills.jp

ジャヌ東京

東京都港区麻布台1-2-2

Tel.／03-6731-2333

janu.com/janu-tokyo/ja

東京エディション銀座

東京都中央区銀座2-8-13

Tel.／03-6228-7400

www.editionhotels.com/ja-JP/tokyo-ginza

（※開業順）

Text: Yuka Kumano