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【telling,座談会】「私たちの40歳を探して」〈後編〉キャリアも人生も「まだまだ頑張れる」。迷いを力に変えて

  • 2024.9.1

人生の節目として意識してしまう“40歳”を目前に、女性が抱えるさまざまなモヤモヤを綴る連載「“私の40歳”を探して」。筆者の秦レンナ・ライターと、独身、子あり、会社員、フリーランス……さまざまな立場の読者が集い、語り合ったtelling,読者座談会「“私たちの40歳”を探して」の模様をお伝えします。後編は、キャリアと生き方について。それぞれ異なる道を歩む女性たちが自身の40歳について共に考え、見出した光とは……?(コーディネーター:柏木友紀・telling,編集長)

【座談会参加者】(仮名)
清水真子さん(37)独身 東京都 会社員
30歳で転職を思い立ち上京。以前は結婚・子どもへのプレッシャーから、婚活に焦りを感じていたが、東京で多様な女性たちと出会い、考え方に変化も。最近は推し活が楽しみ。

佐藤あかりさん(40)パートナーと同居 子どもなし 東京都 学生
39歳で一念発起、仕事をやめて大学生に。結婚や子どもを持つ決断をできぬままこの歳に。バリキャリでもなく、既婚でもないことから、周囲からは「気楽」と思われがちだが……。

堤はるかさん(39)独身 千葉県 専門職
普通に結婚し、子どもが欲しいと思いながら20年。同僚の多くは既婚者で、心から話せる人がいない。両親への申し訳ない気持ちや、今後一人で生きて行くのかもとの不安を抱える。

瀬戸内千明さん(38)独身 東京都 会社員
新卒で入社した会社で、やりがいを持って働いてきた。仕事がひと段落した30代後半になって結婚願望を持つように。アプリで出会いを求めるがなかなかうまくいかない。

富沢絵里子さん(38)既婚 子ども2人 埼玉県 専門職
「子どもが出来にくい体質」からキャリアよりまずは結婚・出産を優先。バリキャリの同期の友人と比較してモヤモヤすることも。夫は脱サラして自営業に。

社会のレールから外れても、成長を感じられればいい

柏木友紀・telling,編集長: “不惑”と言われる40歳を控え、「惑わないどころか、仕事も生き方もますます悩みが深くなる」と感じる女性たちは少なくないようです。「40代までには何者かになっていないと……」という固定観念に縛られてしまうという声も聞きます。

朝日新聞telling,(テリング)

秦レンナ・ライター: 私自身、結婚もせず、子どももいない自分は、仕事で社会に認められなければという思いに縛られてきました。でも、ここにいる皆さんがそうであるように、本来それぞれの幸せと、さまざまな生き方があっていいはずですよね。

40歳を前に、一歩を踏み出したと言えば、佐藤さん。聞けば、39歳で仕事を辞め、現在は大学生として日々勉強に勤しんでいるとか。40代を目前にキャリアアップで悩む女性も多いなか、そのような選択の理由が気になりました。

佐藤あかりさん(以下、佐藤): 私は、新卒でIT企業に入りサラリーマンをしていたのですが、30歳で体を壊し退職。その後は全く違う職種で、アルバイトという雇用形態を選んで働いていました。お給料は半分になってしまい、当初は「もう人生の優先レールを降りちゃったな」と思っていました。でも、アルバイトながらも仕事にはやりがいを感じていましたし、異業種でも頑張れるんだという自信もつきました。その仕事を39歳で辞めたのは、会社の変化のなさに、先が見えなくなってしまったからでした。

じゃあ次はどうしようかと思ったとき、新たなキャリアを作るのもいいなと思ったんです。「今が一番若い」という言葉を励みに、ちょうど40歳を迎えたタイミングで、社会人向けの通信制大学に入学。サラリーマン時代の貯金と、パートナーの存在も後押しになりました。今は朝から晩までずっと勉強していて、大変ですがとても楽しいです。外から見ればめちゃくちゃキャリアダウンだと思うんですけど、自分の中では人間的な成長を感じているから、それでいいと思っています。

秦: 独身だと、どうしても「仕事で認められるしかない」と、キャリアに縛られがちになってしまうことがありますが、本当に自分の人生の豊かさを考えると、選択の幅はもっと広がるのかもしれないですね。

30代独身、仕事もビミョー。そこから解き放たれたのは……

清水真子さん(以下、清水): 私は30歳で一念発起し上京したことで、自分の世界が大きく変わりました。独身だから、仕事しかないからと考えていた優先順位が下がり、精神的にすごく楽になりました。それまでは、「この代わり映えのない生活をいつまで続けるのか」という漠然とした不安を抱えていました。暮らしていたのが地方ということもあり、私くらいの年齢の女性はみんな結婚して子どももいて当たり前。そうじゃないなら、せめて仕事で認められなければ、という焦りもあったと思います。

そんな状況を打破したくて転職活動を始め、2年かかって東京に出ることができました。結果、すごく生きやすくなったと感じています。今働いている会社では、独身の女性も多いですし、何より趣味に生きている人が多くて驚きました。実際、社長にも「仕事が一番じゃダメだよ」と言われ、気づいたのが、今まで勝手に自分に制限をかけていたんだなということ。

「30代にもなって、結婚していない、仕事もビミョー、推し活なんかしている場合じゃない」とかいう、何か負い目みたいなものがあったんです。でも、「ここ(東京)では自分を許していいんだ」とわかって、すごく解放された気持ちになりました。今は、仕事も「推し活」も、どっちも楽しむことができています。

朝日新聞telling,(テリング)

バリキャリの友人たちと「どこで違っちゃったんだろう」

柏木: 一方で、母になった側も悩んでいるというのも、また現実です。子どものいる今の人生を幸せに思いながらも、出産を優先したことで自身のキャリアを諦めてしまったというモヤモヤを抱え続けているというのは富沢さんですね。

富沢絵里子さん(以下、富沢): もし、自分が自然に子どもを産める体質だったなら、やりたかった研究職について、自分の良きタイミングで出産を考えていたと思います。でも事前に無理だと言われていたから、何よりも子どもをつくることを優先し、夫の転勤に合わせて場所を選ばず働ける現場を選びました。その後、夫は脱サラして今は自営業をしています。

先輩や同期のほとんどは、大企業の研究員や教授になり、私の3倍は稼いでいる。みんなを羨んでしまうつらさから、同窓会があってもなかなか顔を出せません。先日も、都心で働くバリキャリの友人たちと食事をした際にも、私は彼女たちの華やかな非日常の話を聞くばかりでした。学生時代はみんな一緒だったのに、「何がどこで違っちゃったんだろう」。そんな虚しいような寂しいような気持ちになりました。

子どもは欲しかったし、いま幸せです。それでも、もう一つの自分の人生をどうしても考えてしまうんです……。

まだ産めるかもしれない……。キャリアもマンション購入も動けないまま

柏木: キャリアか子どもか。本来は比べようもない選択を迫られ、人生の岐路に立たされてしまう女性は少なくありませんよね。

秦: まさに私もそのひとりです。「仕事一筋」と決められたらいいのですが、心のどこかにはこの先結婚し、子どもを産む道もあるかもしれないという期待を抱えながらここまできました。独身でパートナーがいないという状況だと、なかなか決心できないですよね……。

瀬戸内千明さん(以下、瀬戸内): 私は新卒で入った会社でずっと働いているのですが、数年前に海外赴任も経験して、やりたかったことも一通りできたと感じました。それで、そろそろ結婚でも……と婚活もしましたが、うまくいかないまま今日に至ります。

あと1年半で40歳。このまま同じ会社で勤めるのであれば、今よりも責任のある仕事がしたいと、この秋、昇進試験にチャレンジするつもりです。受かれば全国を飛び回って仕事ができるのですが、つまりは「1人確定」ということでもあるんですよね(笑)。

堤はるかさん(以下、堤): 私も新卒で入った所で15年働き続け、最近は次の人事で役職を付けるという声もかかっています。正直、迷っています。同期の中にはキャリアアップのために勤め先をどんどん変える人もいますが、私はその勇気がなかなか持てなくて。それに加えて今、マンションを買おうかどうか考えているんです。でもそうなれば、このままここで働くことも、この先ずっと1人という人生も認めるような気がして、なかなか動けずにいます。

秦: 私たちのこのモヤモヤって、「まだ産めるかもしれない」という小さな可能性にありますよね。完全に「産めない」となったら、もっと清々しい気持ちでいられるのかなぁなんて思います。

朝日新聞telling,(テリング)

つながれる時代。シスターフッドを築いていこう

柏木: 立ち位置はそれぞれに異なっても、共通するのは「どこか感じる生きづらさ」のようですね。一歩踏み出そうとされていることも、近い部分だったかと思います。最後に、今回の座談会を振り返って、お一人ずつ、今後への思いを伺えましたら幸いです。

瀬戸内: 40歳という年齢もそうですが、女性の人生にはいろんな節目があると感じます。その度に、思い悩んできた上の世代がいたから、今私たちが選び取れることもあるだろうなと感じます。今日ここで語り合ったことが、これからの世代にも届くといいなと思っています。

清水: 同感です。改めて感じたのは、みんな進み方が違うだけで、同じことに悩んだり、焦ったりしているんだなということ。自分がこれから経験するであろうことを、すでに経験されている方がいるのは、心強くもあります。

佐藤: 私は自分がこんなふうに社会の“レール”から外れて生きていくとは思っていませんでした。それでも、そこには新しい道があるのだと、そう教えてくれたのは、今日出会った皆さん含め、これまで出会ってきたさまざまな女性たちです。いろんな選択肢があると知ることは、やはり救いになると感じます。だから私も、若い世代に、自分のような生き方もあるよと示せるようになれたらいいなと思っています。

堤: 私は普段、周りに自分の気持ちを吐き出せるような場がないので、今日は本当に貴重な機会でした。いろんな立場の人がいますが、互いの違いを認め合えることが一番大切だと思うんです。社会はそういう風潮になりつつあると言いますが、まだまだ偏見も決めつけもあると感じます。多くの人が、一人ひとりの想いに耳を傾け、手を取り合える世の中になったらいいですよね。

朝日新聞telling,(テリング)

富沢: 私、今日家を出てくるときに「アラフォーの女性たちと語り合うんだと」と夫に言ってきたんですけど、「どうせ夫のグチの言い合いでしょ」って言われて。まず、その考えを変えてほしい。どうしてアラフォー女性が集まると、グチしか言わないと思っているんでしょう。私たち、自分のことも、家族のことも、社会のことも、すごくいっぱい考えているじゃないですか。そんな私たち一人ひとりの状況に目を向けてもらえたら、ステレオタイプな考えも無くなっていくんじゃないかな。シスターフッドという言葉がありますが、今は、インターネットやSNSで簡単につながれる時代です。「1人じゃない」と声を掛け合って、どんどんつながっていきたいですね。

秦: 子どもがいても、いなくても、結婚していてもしていなくても、それぞれにそれぞれの迷いや苦しみがあるんですよね。でも、それを1人で抱え込む必要はないのだと思いました。対話の先に見えた、シスターフッドという光。孤独な夜がやってきたとき、心が押しつぶされそうになったとき、その光は、私を勇気づけてくれるに違いないと思います。これからも、語り合いたい、分かち合いたいです。この光が決して消えることのないようにと願います。

柏木: シスターフッドは、今後を考えるカギになるのではないでしょうか。こうして共に考える機会を、これからもtelling,は大事にしていきたいと思います。本日の座談会に参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました!

■秦 レンナのプロフィール
ライターやエディターとして活動。女性の様々な生き方に関心を持ち、日常の中のセルフケアや美容、ウェルネスをテーマに取材・執筆を続ける。また、ファッションやコスメブランドのコピーライティングなども手がけている。

■Rei Kuriyagawaのプロフィール
イラストレーター。見た人のこころがゆるむような、やわらかくのびのびとしたイラストを描いています。趣味はイラストを添えた映画日記をコツコツつけること。

■柏木友紀のプロフィール
telling,編集長。朝日新聞社会部、文化部、AERAなどで記者として、教育や文化、メディア、ファッションなどを担当。教育媒体「朝日新聞EduA」の創刊編集長などを経て現職。TBS「news23」のゲストコメンテーターも務める。

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