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「君が泣く理由に、僕はなれない」たった3分で共感必至!タイパ抜群、どっぷりと切ない気分に浸れる報われない恋の超短編

  • 2024.8.31
ダ・ヴィンチWeb
『さようなら、かつて大好きだった人』(メンヘラ大学生/スターツ出版)

幾度となく恋をし、その恋に破れていても、この痛みには慣れない。心にぽっかりと穴が空いたような喪失感、どうしようもない孤独感。失恋した後、何をする気力もなく、ぼんやりとした毎日を過ごしている時、その傷を癒す方法などあるのだろうか。

そんな時読みたいのが『さようなら、かつて大好きだった人』(メンヘラ大学生/スターツ出版)。報われない恋ばかりを描いた超短編集だ。著者は、作家・メンヘラ大学生。メンヘラ大学生といえば、SNS(X、Instagram、TikTok)総フォロワー40万人超、昨年刊行した連作短編集『君に選ばれたい人生だった』(KADOKAWA)が大ヒットしたことも記憶に新しい大人気作家だ。そんな著者が紡ぎ出す破れた恋の物語は、共感必至。ページをめくれば、どっぷりと切ない気分に浸ることができる。

この本の短編は1編あたり2000~5000字。どれもわずか3分足らずで読めてしまう。昨今、タイムパフォーマンスが良い文芸書「タイパ文芸」が話題だが、この本はまさにタイパ抜群。朝の電車の中、学校の休み時間、夜眠る前、何をする気力もない失恋後でもスッと読むことができるから、普段本をあまり読まないという人でも読みやすい。

自分の全てともいえる恋人との別れ。すぐそばを歩いている大好きな人がすごく遠く思えてしまう夜。久しぶりに会った元恋人から漂う、今まで嗅いだことのない香水の匂い。いくら一緒に楽しい時を過ごしても、恋人の心から消えない別の誰かの影。「俺、実はお前のことがずっと好きだったんだよ」という部活仲間からの告白。長い友人関係、心地よい関係から抜け出せずにいるふたり……。この本には25編もの物語が収録され、それは男視点のものもあれば、女視点のものも、1つの恋を男女それぞれの視点から描き出した連作短編もあり、どの物語も痛いほど胸を締め付けてくる。どうして恋ってこんなにも上手くいかないのだろう。どの恋だって、ほんの少し素直になれなかったというだけ。たとえ互いが互いを思い合っていたとしても、些細なすれ違いが気づけばふたりの距離を決定的に遠ざけてしまう。

「君の面倒なところが、本当に嫌いで、たまらなく好きだった」ダ・ヴィンチWeb
「ただ願わくば、もう一度会えたら、親友なんかじゃなくて、セフレでもなくて、彼に とってたったひとりの恋人になりたい」ダ・ヴィンチWeb
「君が泣く理由に、僕はなれない」ダ・ヴィンチWeb

まるで口寂しさからドロップを口に投げ入れたような感覚。それは甘くて苦い。私たちの気分を少し変えてくれる。物語の一つ一つの台詞が心に残り、確かな余韻を与えてくれる。そして、つい自分の恋を思い出してしまう。「ああ、恋が上手くいかないのは自分だけではないのだな」「誰もが自分の気持ちに素直になれずにいるのだな」「もし、また恋をするとしたら」……。この超短編集は、男女問わず、きっと自分の恋に効く。物語の報われない恋たちが、自分の恋を振り返る機会を与えてくれる。前を向くキッカケをくれるに違いない1冊だ。

文=アサトーミナミ

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