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「役者ならではの快感があった」映画『マンガ家、堀マモル』で主演を務める山下幸輝単独インタビュー。俳優としての展望を語る

  • 2024.8.31
写真:武馬怜子
写真:wakaco

写真:武馬怜子

 

―――映画『マンガ家、堀マモル』は、物語、映画、漫画、主題歌が生まれていくというメディアミックス作品です。繊細なマモル役をナチュラルに流れるように演じていましたが、脚本を読んですぐに役の特徴を掴むことはできましたか?

「思っていることを素直に言葉にできないところや、物事を深いところまで考えすぎて自分の気持ちを表に出すことに躊躇してしまうところなど、僕にソックリです。

『こんなこと言ったら、次に会ったときに気まずい空気になってしまうかも…』とか、そんなに考えなくてもいいのにということまでつい考えてしまって…マモルもそういうところがあるから、脚本を読んだとき『めっちゃ似てる!』と驚きました」

―――では、役を解釈するのにはそれほど苦労しなかったのですね。

「正直、マモルのキャラクターについては掘り下げなくても、似ているから変に考えすぎない方がいいと思いましたし、監督からも『それでいいよ』と言われました」

―――ただマンガ家の役で、絵を描くシーンもありますよね。そこはどうやってクリアしたのでしょうか?

「マモルの漫画家としてのスタイルについては、漫画家の先生に漫画を描く際のペンの持ち方、ペン捌き、体の使い方など、細かく教えてもらいました。マモルは漫画を描くときに、紙を斜めに置いて描くので、そういう細かい動作も気をつけましたし、立っているときも猫背気味なので、意識してポーズを作っていきました」

―――マモル役においては、まず見た目やスタイルを重要視して作り上げていったんですね。

「そうですね。普通に絵を描いていても漫画家には見えないので、堀マモルという漫画家のスタイルから入って、役を立ち上げていきました」

写真:wakaco

写真:武馬怜子

 

―――この映画は、榊原有佑監督、武桜子監督、野田麗未監督という3人の共同監督作品ですが、撮影現場では役割分担をして、山下さんのお芝居を演出されていたのでしょうか?

「監督の役割はそれぞれあったとは思いますが、シーンごとに監督が変わるのではなく、どのシーンにも3人がいてくださいました。ずっと芝居を見て、アドバイスをくださったので心強かったし、すごくやりやすかったです」

―――マモルは小学生、中学生、高校生の幽霊と対峙しますよね。彼らとのやりとりがこの映画の鍵になっていますが、撮影現場ではいかがでしたか?

「みんな可愛かったです。撮影合間にはルービックキューブで遊びました。子供達の間で流行っているらしく、今は立方体だけでなく、いろんな形のルービックキューブがあるんですね。それぞれ持参していましたよ。楽しかったです」

―――今回、主演なので山下さんは座長ですが、プレッシャーはありましたか?

「座長として自分が引っ張るという気持ちではなく、みんなで一緒に頑張ろうという気持ちの方が強かったですね」

―――グイグイ引っ張るタイプではないんですね。

「実は初めての主演作のとき『自分が現場を作っていかなくては!』と意識して頑張ったことがあったのですが、空振りだった経験がありまして…。現場は問題なく、いい雰囲気の中で仕事ができたのですが、自分的には“これじゃない感”が拭いきれなくて」

―――なるほど、そういう経験をされたんですね。

「だから今回は座長ということは考えず、作品をみんなで作っていくという感覚で臨みました。撮影していたのはすごく寒い時期だったから、みんなで声を出して気分を上げていこうみたいな。リーダーシップを発揮するのではなく、みんなで仲良く並んで進んでいきましょう! という感じでした」

写真:wakaco

写真:武馬怜子

―――好きなシーンはありますか?

「マモルの編集担当者・林とのシーンですね。岡部たかしさんが演じているのですが、岡部さんがYoutubeで、役者仲間の方と即興芝居をしているのを見ていたので、林役が岡部たかしさんだって聞いたとき『え、マジか?』と、テンション上がりました(笑)。一緒にお芝居をするのが楽しみで仕方がなかったです」

―――実際に共演してみていかがでしたか?

「動きとか想像の斜め上をいく感じというか…。林という人物にリアリティを持たせるために体を乗り出すように話してみたり、動きも工夫されていて、こうやって人物を作り上げていくんだと。岡部さんが目の前で演じているのを見て、勉強させていただきましたし、とても楽しかったです」

―――岡部さんにYouTubeの即興芝居を見ましたという話をしたのですか?

「言ってないです」

―――そうなんですね。緊張しましたか?

「そうですね。岡部さんを前にして、緊張もしていたし、恐縮しちゃって言えなかったです」

―――山下さんはデビュー以来、順調にキャリアを重ねていて話題作にも多く出演していますが、もともとはダンサーですよね。俳優の仕事に興味を持ったきっかけは?

「ダンサーとして生きていこうと思っていたのですが、高校生のとき、友達から『ジュノン・スーパーボーイコンテスト』があると聞いて、応募したら、ファイナリストに残り、それがきっかけでデビューのチャンスをいただいたんです」

―――そこから俳優の仕事もやってみようと思ったのですか?

「実は姉も俳優なんです。同じ事務所に所属している山下ナオというのですが僕は以前から姉のお芝居を見ていたので、気持ちのどこかに『お芝居も楽しそうだ』というのがあったんだと思います。だから『お芝居をやりませんか?』と声をかけられたとき『やります!』と答えたのかもしれません」

―――お姉さんの影響でダンスに加えてお芝居もするようになったのですね。同じ表現でもダンスと芝居は違うと思いますが、ダンサーの山下さんから見てお芝居をどのように捉えていますか?

「ダンスは舞台に立ってお客さんを前にして踊るライブなんです。だからお客さんの盛り上がりが、自分のダンスにも影響を与えて、より高いところに到達できる感じがします。

俳優の仕事は、対峙する俳優さんと芝居で表現を高めていく印象があります。セリフのやりとりがリズムに乗ってうまくいくと快感がありますし、めちゃくちゃ楽しい! この快感は役者ならではだと思います。舞台の芝居はまた違ってくるかもしれませんけど」

―――今後、舞台でお芝居を披露してみようとは考えていませんか?

「舞台には興味あるのですが、まだ2時間とかぶっ通しで演じることに自信がなくて。少し怖いです」

―――意外ですね。ダンサーとしてステージに立っていたので、舞台の芝居にもハマりそうな感じがしますが。

「よく言われますが、意外とまだ踏み込めていないんです。映像の仕事はカット割りがあり、通してやることはあまりないじゃないですか。稽古を数ヶ月やって臨むので、しっかり芝居を固めることはできると思うのですが、本番で失敗したらどうしようという恐怖が拭いきれません。舞台は生ものだし、目の前にお客さんがいると思うと…。もう少し時間が必要かなと思っています」

写真:wakaco

写真:武馬怜子

 

―――ちなみに得意なダンスは?

「僕はロックダンスが得意です。型が決まっていてダンスのシルエットがとても綺麗なんです。ヒップホップはノリが重要で流れるようなダンス。これはこれでかっこいいのですが、ロックダンスは緩急がはっきりしていて、ダンスに詳しい人が見ると技術の高さがよくわかるのがロックダンス。ダンサーそれぞれのこだわりも強くあるところも好きです」

―――ダンスのスキルがお芝居に活かされていると感じますか?

「バンバン感じます。お芝居はセリフだけでなく同時に動きもつけますよね。例えばセリフを言いながら、テーブルの上のペットボトルをパッと取ったり。僕はそういう動作が自然にできていたらしく、監督から『体がスッと動くね』と褒められたことがあります。

芝居経験がないと、セリフを言いながらの動作はぎこちなくなることが多いけれど、僕にはそのぎこちなさがなかったそうです。それはダンスで体を動かす瞬発力などが鍛えられていたからかなと思っています」

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写真:武馬怜子

―――今回は岡部さんとの共演がいい経験だったようですが、これまでのキャリアで影響を受けた俳優さんはいますか?

「横浜流星さんですね。前から好きな俳優さんではあったのですが、短編の映像作品MIRRORLIAR FILMS Season5『MIMI』(2024)で共演させていただき、生で横浜さんのお芝居を見られたのは良かったです。横浜さんは目だけで芝居ができる方なので、目の芝居を研究していました」

―――共演する俳優さんからストレートに受ける芝居の力は、いい影響を与えているんですね。

「やっぱり、演技派の俳優さんのお芝居を目の前で見られるのは喜びです。実際にお芝居でやり取りができたらもっと嬉しいし、現場に行かないとわからないことがたくさんあると感じています」

―――岡部たかしさん、横浜流星さんなど憧れの俳優さんと共演して、自分もこうなりたい、こういう芝居をしてみたいという将来的なヴィジョンが見えたのではないですか?

「役者同士の掛け合いが中心のお芝居をやってみたいです。ドキュメンタリーみたいな感じのリアルな世界観の中、セリフのキャッチボールで成り立つような作品。完全に作り込まれたフィクションの世界とは真逆の究極のリアリズムの世界でとことん芝居をしてみたいですね」

―――では最後にこの映画を楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。

「『マンガ家、堀マモル』は、思いを素直に伝えられないマモルが、過去を振り返り、封印していた思いを蘇らせていく姿を描いています。思っていることを伝えられないことって、誰にでもあると思うんです。そういう人にこそ見ていただきたい。マモルが秘めていた思いを少しずつ伝えていく姿は『あなたの想いを伝えてもいいんだよ』と、背中を押してくれると思います。ポジティブな気持ちになれる映画だし、ほっこり心が温かくなってくれたらうれしいです」

(取材・文:斎藤香)

【作品情報】
『マンガ家、堀マモル』
2024年8月30日(金)公開
配給:NAKACHIKA PICTURES
コピーライト:©2024「マンガ家、堀マモル」製作委員会
出演:山下幸輝 桃果 宇陽大輝 斎藤汰鷹 竹原千代 岡部たかし 坂井真紀
三浦貴大 占部房子 竹中直人
監督:榊原有佑 武桜子 野田麗未
原作:seta
主題歌:seta「さよなら僕ら」
エンディングテーマ:槇原敬之「うるさくて愛おしいこの世界に」

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