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【悩み】自分のセクシュアリティがわからず悶々としてしまう…確かめた方がいいもの?#69

  • 2024.8.30

はーいみなさん、ごきげんよう!満島てる子です。

とうとうこの季節がやってきたのね……という感じがしているわ。
いやあたしったらね、ここしばらくパソコンを3画面にして、キーボードを”高橋名人”レベル(←)で連打しまくる日々を送っているんだけれど。

Sitakke
ライター・満島てる子

これ実は毎年恒例。

なんでかって言うと、そう。来月の9月14日•15日(土日)に、札幌でいよいよ今年もLGBTQのプライドパレードが開催されるのです。

主催団体の副実行委員長を、ここしばらく務めさせていただいているあたし。
例年同様、ほぼ血眼で準備に奔走しているってわけ。ひえー!!

……と、こんな叫びをあげつつも。
セクシュアリティをひとつの観点としながら、様々なマイノリティについてみんなで共有し、考え、ひとつのアクションを一緒に作り上げる取り組みがこの街で続いてきたこと/続いていくこと。それは、自分というひとりの当事者にとっても、かなり大きな意味を持っているところがあって。

今年もたくさんの人と9月の札幌を虹でいっぱいにしたいなぁと、そう思いながらこの残暑の日々、なんだかせわしなく送っていたりします。

そうそう、そんなタイミングでこのお悩み相談室に、とあるお手紙が届きました。これがとっても印象的だったの。紹介させてください。

読者のお悩み:自分のセクシュアリティがわからず悶々としてしまう…確かめた方がいいのかな?

Sitakke
Sitakke

いやぁ……短い文章ながらも、いろんな背景というか、様々な苦労をこうも感じるお手紙、なかなかもらうことないよなぁ。
エゾモモさん、まずはお手紙を送ってくださり、本当にありがとうございます!

(ペンネームからして、エゾモモンガがお好きなのかしら?まさしく森の妖精って感じがして本当に可愛いよねぇ)

そうかぁ。「自分のセクシャリティが分からずに悶々」としてらっしゃるのね。身勝手な話かもしれないけれど、なんだかすごくエゾモモさんのこと、応援したくなっちゃってる自分がいるの。

ただでさえ生きづらい世を生きる中で…

実はあたしもね。おのれの性のあり方、今となっては「ずっと昔からゲイで」みたいな話を講演会などいろんなところで語らせてもらっているわけだけれど。
かつてはみずからが何者なのか自分自身に対しても満足に説明できず、モヤモヤした日々を送っていた経験があるんです。
詳しくは語りきれないけれど、ちょうど、大学院生ぐらいのときかな。

そうなんだよね。
なんかこれ、このコラム上で毎度書いてる気もしますが、エゾモモさんの表現で言う「ハードモード」がぴったりくるぐらい、世の中そもそも生きづらいじゃない?

ものをじっくり考える時間も取れないぐらいやたらとせわしないし、日々の生活を成り立たせるだけでも、それはもう、実に大変!(だからと言って、エゾモモさんがこれまで抱えてきた色々というか、あなたの歩んできた歴史を「みんな辛いんだから、そうで当たり前」と、ここで矮小化したいわけではないってことは、きちんと伝えておきたいわ。本当に大変だったね……月並みな言葉だけれど、ご愁傷さまだよ……!)。

そんな中なのに、です。
自分の性に揺らぎを抱えていたり、周りとの差異を感じ、セクシュアリティについて違和感を覚えている当事者であった場合。
日常を成り立たせるための思考や段取りをなんとかこうとか進めている最中であるにも関わらず、「え、自分って何なんだろう」とか「ゲイなのかな」「自分レズビアン?」と、同時並行かつ追加で小さくないクエスチョンというか、おのれ自身を定め、自分を守って生きていくためのとっても重要な問いが降りかかってくることがあるわけです。

これ、しんどいのよ

そう、しかも。
エゾモモさんは「婚活」というわかりやすいワードを出してくれていたけれど。
自分のセクシュアリティについて知ることと、おのれの人生について考え、見定め、行動していくことは、ときに不可分というか、なんなら密接に絡まり合っていたりもするのよね。
(あたしも「ゲイ」で「長男」という立場だったから、家業を継がなきゃいけないのかとか、結婚して血筋を絶やさぬようにすべきなのかとか、相当真剣に悩んだ時期がありました。)

だからね。
エゾモモさんの迷いというか、今あなたが抱えているであろう葛藤は。
LGBTQコミュニティに関わっている人間として、なんなら、似たような主題に思いをめぐらせたことのあるひとりの「仲間」として、決して他人事じゃない。
向き合うならば、自分なりという限界はあるかもしれないけれど、少しでもあなたのこれからが明るくなるような言葉を紡ぎ、届けたい。

窓エアコンの出力を最大にして、なんとかかんとか涼を取りながら。笑
あたしは今、そんな風なことをパソコンの前で思っているのでした。

あたしなりのAnswer

さて、エゾモモさん。
あなたからの願いは、自分のセクシュアリティについて「どうすれば確かめられるか、または執着しない方が良いのかアドバイスを」というものだったわよね。
そうね。ちょっと迂遠(うえん)な道を通りそうですが、ここからはあたしの考えを少し綴ってみることにしようかしら。

セクシュアリティを確認しておくべき?それとも固執しないべきか?

まず、自分のセクシュアリティを確認しわかっておくべきか、はたまたそこに固執しないべきか、というところからだけれど。
そうだねぇ。あたしこの点については「そもそも"わかる"という幻想にとらわれないでほしいな」って思うんだよね。

なんだか「自分らしさ」という単語が大きなものとなり、「自分のことをきちんと知って愛そう」という発信が、様々なSNSを通じてそこかしこで見られるようになった昨今。
あたしは個人的に今の社会って、おのれを把握した上で自らの持つ輝きを放つことへと、みんなが強迫観念的に向かわされているなって感じているの。
しかも、セクシュアリティに関する話題となると、なぜかなおのことそう。

だから、もし例えば昨今流行りのMBTI診断みたいに、ぽちぽち画面をタップして「あなたはレズビアン!」とか出せるのであれば、知識としておさえる上では楽なのかもしれないけれど(実際そういうサービスもあるとは聞いたことあるけどね)。
エゾモモさんには、そういう類の「分かり方」に囚われてほしくはないなって、あたしは思ったんです。

むしろ。
自分のことを確かめようとも、執着を手放そうとも、どう思っていようともいいから。
エゾモモさんには「分かる」「分からない」の地平で考える前に、ぜひ「動いて」「行動して」みてほしいなって。そっちの方がきっと視界がサッと開け、あなたの今希求しているものが見えやすくなるだろうなって。
かつてあなたと同種の悩みを抱えていた人間としては、そう感じているの。
伝わるかしら。

「動いて!」なんて言われても……と思うかもしれません。うん、それは真っ当。
そうね。例えばあなたの場合、レズビアンの交流会に行ってみたり、コミュニティを支える飲食店やバーに行ってみるというのが、あたしとしてはそれはもうしっかりオススメしたい選択肢。

さっぽろレインボープライドの関連イベントにもそうした企画がありますし、言わずもがなパレード自体に参加するというのも、きっとひとつの「動き方」として有効なんじゃないかしら。

Sitakke

「他者」と出会っていく中で…

誰かと知り合い、触れ合うことを通じて「そうか!自分はレズビアンなんだな」と得心がいくかもしれない。
はたまたそこで「うーん、なんだかやっぱり色々違う」となれば、それはそれでいいんです。そこからは満を持して、執着を捨てていけばいい。
大事なのは、そう思い至るまでエゾモモさんが身をもって事に向き合ったかどうか。

あれこれひとりで想いを巡らせるのではなくて、自分が「そうなのかな?」と思うセクシュアリティを自己のアイデンティティーとしている他者に出会い、話をするために足を運んでみる。
そのアクションがもたらすであろう納得は、単なる知識を超えた説得力を持っているはず。

(多分そんな意味で、泥酔しながらも勇気を出してゲイバーに飛び込んだ10年前の自分に、あたし今でもどこか感謝しているんですよね)

月並みな表現かもしれませんが、人と人とが出会わないと、物語は始まりません
恋も愛も、仕事も友情も。なんなら、そうしたものと一線を置くあり方でさえも。
エゾモモさん、ぜひ自分のセクシュアリティというか、生きていく方向を確かめる(あるいは「確かめることをやめよう」と決断する材料を手に入れる)ために、あなたにはいろんな人と実際に知り合い、おおいに語り合ってみてほしい。
そうした邂逅がきっと、あなたのこれからを明るく照らす、いい導き手となってくれるはずだから。

文字通り「体感」すること。
そしてその積み重ねを、自分のこれからへの一歩にしていくこと。
甘くも苦くもあるかもしれないけれど、その味わいの豊かさ、実りの確かさは至高のもの。

エゾモモさんが自らのアクションを大いに楽しみ、この世を自分にとっての飛翔の舞台としてくれることを、コミュニティの仲間としてこころから応援しています!

ま・と・め♡

ということで、今回はセクシュアリティを主題に筆を走らせてみました。
冒頭にも書いたけれど、さっぽろレインボープライドが近づいてきているこのタイミングでこのお手紙。なんだか感慨深かったわぁ。

9月14日と15日(土日)。2日間にわたって開催される札幌のLGBTQパレード。
その存在は、エゾモモさんのようなモヤモヤを抱える人たちにとって、どうか少しでも資するものであってほしい。
あたしは、7年間主催側で関わってきた身として、真剣にそう思っています。

よし、準備頑張るか。会場でみんな、待ってるからね。
ではまた次回。Sitakkeね〜!

***
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部 ナベ子
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「 さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。

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