Netflix『地面師たち』ヒットの理由とは？ ハマる人続出の“中毒性抜群”な魅力を解説【ネタバレあり】

Netflixにて、2024年7月25日から配信がスタートしたオリジナルドラマ『地面師たち』が大きな話題になっています。新庄耕さんの同名小説が原作で、地主になりすまして土地の売買を進める不動産詐欺集団である「地面師」たちが主人公。綾野剛さん、豊川悦司さんがダブル主演を務め、その他にも豪華な俳優が多数出演しています。

ドラマのおもしろさにハマり、イッキ見してしまう人が続出している『地面師たち』について、その魅力を元テレビ局スタッフの筆者が徹底解説します。

※一部、ネタバレを含む内容となっています

綾野剛×豊川悦司がダブル主演！ 詐欺集団を演じる

配信スタートから高い注目を集める『地面師たち』ですが、豪華な出演者たちが目玉の1つです。

まず、登場人物をざっと紹介すると、綾野さんは主人公・辻本拓海を担当。かつて、親族で経営する不動産会社が地面師詐欺にあい、父親が一家心中を図り、母親、妻、幼い息子を一度に亡くした壮絶な過去を持ちます。冷静沈着なキャラクターで、地面師集団の中では交渉役として多方面で活躍。自分たち家族を追い詰めた地面師を探すため、自身も地面師になった裏の顔があります。

一方で、豊川さん演じるもう1人の主人公・ハリソン山中は、地面師集団のリーダーで元暴力団幹部という経歴の持ち主。誰にでも敬語で話す不気味な性格の持ち主で、残虐すぎる素性をドラマの中でたびたび披露します。

名バイプレイヤーぞろいなだけに良作間違いなし

この2人が中心の地面師集団の仲間として、法律関係の処理を行う後藤義雄（ピエール瀧）、なりすまし人物のスカウトをする稲葉麗子（小池栄子）、土地や物件の情報を仕入れてくる竹下（北村一輝）が登場。

そして、身分証などの偽造を行うニンベン師・長井（染谷将太）、さらに竹下のパシリであるオロチ（アントニー）が詐欺を補佐。胸焼けしそうなほど脂っこいキャラクターぞろいのグループですが、それぞれが抜群の活躍を見せて極上のチームワークを作り上げていきます。

さらに、地面師たちを追う刑事の下村辰夫にリリー・フランキーさん、その部下の倉持を池田エライザさんが担当。警察署内でもゴタゴタがあるストーリーで、この2人の動きがスリリングな展開を生み出します。その他にも、地面師集団と対峙（たいじ）する大手デベロッパーの青柳を山本耕史さん、ドラマの鍵をにぎる光庵寺の住職・川井菜摘を松岡依都美さんがそれぞれ怪演しています。

ネタバレ要素があるので詳細は書けませんが、俳優たちの演技がとにかく良い！ 民放ドラマでは表現できないような過激な場面も多いのですが、体当たり演技でドラマを盛り上げています。名前を見ただけで間違いないと思える俳優陣の演技だけで、『地面師たち』を見る価値は十分あります。

ヒットメーカー・大根監督が描く“汚い欲望”

さて、豪華な俳優がそろった『地面師たち』ですが、当然ながらストーリーも極上のおもしろさです。監督・脚本はヒットメーカーの大根仁さんで、作品は2017年に東京の五反田で起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモチーフにしているとされています。

大根監督といえば、良質な深夜ドラマなどを作り出す名手として知られ、映画監督としては『モテキ』『バクマン。』『SCOOP!』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』などさまざまなジャンルの作品を制作。スタイリッシュな映像と、エッジの効いた脚本で名作を生み出し続ける監督です。

近年では、冤罪事件を扱ったドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』（フジテレビ系・関西テレビ）を制作し、マスコミ業界の裏側にも迫ったスリリングな内容で高評価を得ました。

そんな大根監督が描く『地面師たち』では、全編を通して人間の汚いさまざまな欲望を見られます。

ストーリー展開としては、東京の高輪にある100億円相当といわれる土地を巡った詐欺事件が主題となります。この100億円の土地を取り扱う前に、ドラマでは額の小さい詐欺事件を序盤で紹介。いとも簡単に詐欺を成功させる鮮やかなチームワークを見せることで、視聴者は期待感が高まる演出になっています。

実在する事件を参考にしていることで、かなり精巧に地面師たちの「技」をリアルに見られるのがポイント。もちろん犯罪行為であり、まねすることは許されませんが、詐欺を行う地面師たちの鮮やかな手法が紹介され、知的好奇心が刺激されます。被害にあう人物もクセが強く、完全な弱者ではないことで後味の悪さもあまり感じない構成です。

Netflixならではのスリリングな演出が最高！

また、Netflixならではの魅力なのが、壮絶な暴力シーンやエロスが満載なところ。実際、作品は16歳以上の年齢制限あり、コンプライアンス重視の民放テレビでは難しい演出が随所に見受けられます。

特にエピソードを重ねるごとにサイコパス度が増していくハリソン山中に注目。ハリソン山中の異常なまでのサディスティックな行動は、こちらの想像を超えるもので、恐怖すら感じ目が離せなくなります。このハリソン山中を中心に、常に緊迫感ある雰囲気が漂い、不穏な裏社会の一面をのぞき見できるのが作品の魅力です。

最近では、民放ドラマだけでなく映画にもコンプライアンス重視の動きがあり、実際に大根監督も映像化するために四苦八苦したことをインタビューで明かしています。実験的な作品を多く発表している配信サービスのNetflixだからこそ実現した作品で、残虐でスリリングな映像に視聴者は引き込まれ、ついイッキ見してしまうことになるのでしょう。

俳優だけでなく、音楽や撮影も完璧な『地面師たち』

最高の俳優とストーリーを生かすスタッフも豪華で、撮影は超一流撮影監督の阿藤正一さんと森下茂樹さんが担当。また、スタイリストは伊賀大介さん、さらにナレーションには山田孝之さんを起用するなど、大根監督を中心に最高で完璧なスタッフが勢ぞろいです。

そして、劇中の音楽は日本のテクノシーンを引っ張り続ける石野卓球さんが務め、スリリングで最高にクールな音楽で作品を盛り上げています。俳優、脚本、撮影、音楽……全てが最高で、早くも今年度の最高傑作と言えるほどの出来栄えであることを保証するドラマです。

民放ドラマどころか、映画作品でも考えられないような豪華さで制作された『地面師たち』。まだ見ていない人は、時間を捻出してでも視聴することをおすすめします。

この記事の筆者：ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。

文：ゆるま 小林