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「井上尚弥vs.ドヘニー」を展開予想 相打ち覚悟の左フックで、二度目の“サプライズ”は起こるのか……

  • 2024.8.31
井上尚弥(左)、武居由樹 撮影:SPREAD編集部
SPREAD : 井上尚弥(左)、武居由樹 撮影:SPREAD編集部

WBAスーパー・WBC・IBF・WBO世界スーパーバンタム級統一王者、井上尚弥(大橋)の4団体防衛戦が9月3日(有明アリーナ)に迫った。対戦相手は、WBO2位のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)。楽勝ムードが漂う一戦だが、本当に波乱は起こらないのか? ドヘニーはどんな選手なのか? 試合の行方を占ってみたい。

■スランプを乗り越えてタイトル挑戦権を掴む

ドヘニーの戦績は30戦26勝(20KO)4敗。2018年に東京・後楽園ホールで、当時のIBF世界スーパーバンタム級チャンピオン、岩佐亮佑(セレス)に判定勝ちしてベルトを巻いた。2019年にはWBA正規王者、ダニエル・ローマン(米国)と王座統一戦を行ったが、0-2の判定負け。IBFタイトルを失った。この試合はダウン応酬の熱戦で、ドヘニーの強さと弱さが出た一戦となった。
ローマン戦まで21戦全勝だったドヘニーだが、ここからスランプに陥る。2023年3月のサム・グッドマン戦までの4年間を2勝4敗と負け越し、ドヘニーのキャリアも終わったかに思えた。「井上戦はミスマッチ」と指摘する一部の専門家の論拠は、ここにある。
しかし、2023年6月、大橋ジムの中嶋一輝を4ラウンドTKOに下してWBOアジア太平洋スーパーバンタム級王座を獲得すると、その後の2試合も早いラウンドのTKO勝ちを重ね、今回の4団体統一戦というビッグマッチに駒を進めた。

■相打ち覚悟の左フックで、「サプライズ」が再びあるか?

ドヘニーのベストパンチは、サウスポー・スタンスから繰り出す左フックだ。体重を乗せて振り抜くパンチには威力がある。そして、これが当たると右フックをフォローし、思い切りのいい連打が飛び出す。20のKO勝利は、ほとんどがこのパターンだった。
ドヘニーが見せ場を作るとすれば、左フックがクリーンヒットしたときだが、スピードではモンスターが圧倒的に勝っており、そう簡単に当たるとは思えない。しかし、思い出すのは、ルイス・ネリ戦での「サプライズ」。モンスターでも、一発食らえばダウンするというボクシングの怖さを思い知らされた。相打ち覚悟の強い左フックが当たれば、番狂わせもありえる。
ドヘニーのもうひとつのアドバンテージは、体の大きさだ。ジャフェスリー・ラミド(米国)戦では、試合当日に12キロ以上体重が増えていたという情報がある。体格差を生かして接近戦を仕掛ける作戦もあるかもしれない。
とはいうものの、チャンピオンの有利は動かない。ドヘニーの弱点がボディにあることは明らか。ローマン、グッドマンという一流の世界チャンピオンとの対戦では、ボディでダウンを奪われている。一方の井上は、サウスポー相手のボディブローが得意中の得意。速いジャブと狙いすました左ボディショットで主導権を握るだろう。ドヘニーは、「逃げない」と宣言している。その言葉が本当ならば、中盤までのKO防衛が濃厚だ。

■セミファイナルの武居vs.比嘉が面白い

この日のセミファイナルには、ボクシングファン必見の好カードが組まれた。WBO世界バンタム級チャンピオン、武居由樹(大橋)に同級1位の比嘉大吾(志成)が挑戦する一戦だ。
武居はK-1のスターからボクシングに転向して、9戦目でジェイソン・モロニー(オーストラリア)を下して戴冠したエリートだ。一方の比嘉は元WBC世界フライ級チャンプで、デビューから15試合連続KOという日本記録を打ち立てたハードパンチャー。体重超過、ライセンス剥奪という挫折を乗り越えて、6年半ぶりに世界挑戦のチャンスを掴んだ。
勝負のポイントは、ズバリ距離。身長、リーチで上回る武居は、力のある左フックを遠い距離から変則的に打ち込んでくる。モロニー戦でもこのパンチが有効だった。しかし、武居は最終ラウンドにグロッキーとなりスタミナ面、経験の不安を露呈した。もともとスーパーバンタム級の体を、同じジムに井上尚弥がいるためにバンタムまで落とさなければいけない事情もある。比嘉が中に入って強いボディブローを打ち込めば試合は面白くなる。戦績は、武井が9戦全勝8KO、比嘉が21勝(19KO)2敗1分。KO決着必至だ。
現在、世界バンタム級は井上拓真(WBA)、武居由樹(WBO)、中谷潤人(WBC)、西田凌佑(IBF)と、日本人が制覇している。ここに比嘉、那須川天心が絡んでくれば、国内ドリームマッチの連続となりそうだ。

著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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