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松村北斗とのハグシーンが愛おしい…松本若菜の演技力を再確認したワケ。『西園寺さんは家事をしない』第8話考察レビュー

  • 2024.8.30
『西園寺さんは家事をしない』第8話より ©TBS

松本若菜主演、松村北斗共演のドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)が放送中。本作は、家事をしない主人公・西園寺さんが年下の訳ありシングルファーザーと「偽家族」として暮らすハートフルラブコメディ。今回は、第8話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

『西園寺さんは家事をしない』第8話より ©TBS
『西園寺さんは家事をしない』第8話より ©TBS

『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)第8話、瑠衣(松井愛莉)が最期に語った「1年くらいは想い続けてくれないと、わたし化けて出ちゃいそうで…」という言葉から、楠見くん(松村北斗)への深い愛が伝わってきて、涙が止まらなかった。

瑠衣は楠見くんを心から愛していた。だから、ずっと苦しんではほしくなかったのだろう。それでも、すぐに忘れて新しい恋をされるのも、ちょっぴり寂しい。だからこその、“1年”。この期間には、瑠衣の最後のわがままと、楠見くんへの深い愛が込められている。

「解かれた数式が、脳に語りかけてくるんですよね。ここは、通過点です。先へ進みなさいって」

学生時代、瑠衣が無邪気に語っていた言葉が、今になって生きてくるとは思ってもみなかった。楠見くんと瑠衣をつないでいた“ある数式”。答えが分からないままなら、楠見くんはその数式とずっと向き合い続けることになる。つまり、それは瑠衣を忘れられないということだ。

大学の同級生・エリサ(太田莉菜)に、「わたしが死んでから1年後に渡して」と、その数式を解くヒントを渡したのは、「ここは、通過点です」「先へ進みなさい」というメッセージを楠見くんに伝えるため。そのメッセージを受け取ったとき、楠見くんが流した涙にはさまざまな感情が混じり合っているように感じた。

楠見くんは、いまも瑠衣を愛しているのだろう。でも、心のどこかでは“愛し続けなければならない”という義務感もあったのかもしれない。若くして亡くなった妻を忘れて、新しい恋をするべきではない。娘のルカ(倉田瑛茉)のためにも、ずっと瑠衣をいちばんに愛し続けていくべきだ…と。

『西園寺さんは家事をしない』第8話より ©TBS
『西園寺さんは家事をしない』第8話より ©TBS

これまでずっと、恋の先に愛があるのだと思っていた。「恋と愛のなにがちがうの?」と聞かれるとむずかしいけれど、たとえるなら、連絡がないとき浮気の心配をするのが“恋”で、体調を心配するのが“愛”とか。ドキドキするのが“恋”で、心が安らぐのが“愛”だとか。恋をしているなかで、信頼を積み重ねていくことが、揺るぎない愛につながっていくものなんじゃないか? と。

しかし、西園寺さん(松本若菜)と楠見くんの間には、恋よりも先に愛が芽生えているように感じる。だからこそ、お互いに自分の気持ちがよく分かっていないのだろう。友達から恋人に発展した場合、最初はちょっぴり気まずい…なんてことはよく聞くが、西園寺さんと楠見くんの場合は“家族愛”から始まっている。今さら、恋のお相手として見るのは難度が高すぎるのだと思う。

ただ、瑠衣からのメッセージを受け取ったとき、楠見くんがいちばんに会いたいと思ったのは、西園寺さんだった。ふだんから効率派の楠見くんは、考えがまとまらないまま誰かに気持ちをぶつけるのは、好きではなさそう。それなのに、西園寺さんの前では、まるで子どものように泣きじゃくり、「話したくて、話したくて…」とただただ感情をぶつけていた。カッコ悪いところを見せられるのって、やっぱり愛だ。

そして、泣きじゃくる楠見くんを優しく抱きしめた西園寺さん。このハグは、かなりこだわって演出されていたように思う。西園寺さんは、横井(津田健次郎)と交際をスタートさせているため、楠見くんと恋仲っぽいハグをしてしまうと、視聴者が違和感を覚えてしまう。

偽家族としての“家族愛”と、ちょっぴりの“恋心”、そして上司としての“包容力”。すべてをうまくMIXしたハグの仕方と表情。松本若菜の演技力を再確認した瞬間だった。

『西園寺さんは家事をしない』第8話より ©TBS
『西園寺さんは家事をしない』第8話より ©TBS

それにしても、やっぱり横井がいい人すぎる。楠見くんに嫉妬心を抱いてもいいはずなのに、「楠見さんも見たいかと思って」とわざわざ花火の動画を撮影してあげたり、「楠見さんの分で」と西園寺さんにご飯を預けたりする。

「西園寺さんには、西園寺さんらしくいてほしいと、僕は思っています。だから、なんでも話してください」という言葉は、西園寺さんの本心を察しているからこそ出たもののようにも思えるが…。それでもいいと思えるほど、西園寺さんに恋しているのだろう。

ただ、西園寺さんの恋の矢印がまったく横井に向いていなさそうなのが切ない。楠見親子がアメリカに行くかもしれない…なったとき、「当初の予定どおり、わたしとリキと2人だけの暮らしになるだけ」と言っていたのには、「おいおい、横井はいるぞ!」と思わずツッコミを入れてしまった。

楠見親子か、横井。どちらか片方としか一緒にいられないとしたら。西園寺さんはきっと楠見親子を選ぶのだろう。それが、“偽家族”としての愛情からくるものならば、横井はまだ受け入れられるかもしれない。しかし、第9話の予告では、西園寺さんが「楠見くんに恋愛感情があります」と言っている場面が。これは、もう横井と別れるしかないのだろうか…。

その前に、お互いが恋愛感情を抱いてしまった以上、“偽家族”は成り立たなくなっている気がする。

(文・菜本かな)

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