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NHK新“ドラマ10”大人気マンガの実写化がどハマり!細部までこだわるリアリティの高さ

  • 2025.1.9

昨今、東京で外国人を見かけない日はない。インバウンド旅行者の増加もあるが、居住者も確実に増加しており、すでに東京は異なる文化や生活習慣を持つ多くの民族・人種が生活する「人種のるつぼ」となっている。

NHKドラマ10でこの1月から放送開始となった『東京サラダボウル』は、そんな外国人と共生する東京の今を鮮やかに映し出したドラマだ。

奈緒と松田龍平が刑事と通訳の異色コンビに

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『東京サラダボウル』1月14日放送(C)NHK

主な舞台となるのは新宿。東新宿署にある国際捜査係に務める鴻田麻里(奈緒)は、困っている外国人を助けるのを日課としており、どんな小さな事件も追いかけるため「国際捜査のこぼれカス」と同僚から揶揄されている。

鴻田はある日、街で困っている中国人留学生の女子に遭遇。しかし、言葉が通じないため、偶然居合わせた、警視庁・通訳センターに属する有木野了(松田龍平)に通訳を頼む。聞けば、彼女の親友が突然いなくなったというのだ。

有木野は、取り調べなどで通訳の仕事を淡々とこなし、相手に感情移入しないことにしている。数年前には巡査だったが、今は通訳の仕事に専念しているという。そんな小さな事件は放っておけばいいと諭す有木野だが、鴻田は強引に彼を巻き込み、行方不明者を探し始める。

捜査手法が非合理的すぎる鴻田に対して有木野は、仕方なく自身のツテを紹介して進展に導く。その結果、行方不明の女性は悪い中国人の男に大麻を吸わされ意識混濁の中、男と自分の荷物を取り違えてしまい、違法薬物所持で勾留されていたことが発覚。中国では違法薬物関連の犯罪は重罪であり、しかも言葉の通じない国で突然の勾留で心細く、何も話せずにいたのだ。

無事に事件を解決できた2人は、それ以降もなにかとコンビとなり、外国人の困りごとや事件を解決してゆくことになる。

第一話のサブタイトルは「サソリと水餃子」だ。これは鴻田と有木野が作中で食べているもので、鴻田は好奇心旺盛なためかいつもサソリのような変わったものを食べている。一方、有木野は堅実な性格なので、水餃子を注文するのだ。

そんなデコボココンビといえる主人公の2人を演じるは、奈緒と松田龍平だ。奈緒が演じる鴻田は、緑色の髪色がトレードマークの異色の刑事。困っている人を見たら放っておけない優しい刑事を、はつらつと演じている。対する松田龍平の有木野は、仏頂面で人に心を開こうとしない。何やら過去に何かあったらしく、それが巡査を辞めて通訳の仕事だけをするようになった原因らしい。彼は、「外国人はすぐに嘘を付く」と言って憚らないが、心根は優しいところがある。彼がなぜ心を閉ざしてしまったのかも、ドラマのポイントになりそうだ。

現実の新宿ロケがリアリティを醸し出す

本作は『クロサギ』などで知られる黒丸の同名マンガを原作としている。マンガの実写化は、厳しい目を向けられがちだが、本作についてはアニメ化よりも実写化に向いた作品と言えるだろう。

それは、本作が今の東京のリアルを描く作品だからだ。第一話のセリフにもあるが東京には居住者だけで60万人以上の外国人が暮らしている。そして、最も外国人が多いのが新宿区だ。東京はすでに多くの外国人と共生している都市なのだ。

本作は、そんなリアルを描くために、実際の新宿で撮影を行っている。歌舞伎町や新大久保など、外国人がとりわけ多い場所でも撮影しており、東京近郊に暮らしている人なら感じたことがあるだろう、異国文化の混ざった街の風景が出てくる。このことが作品全体に強い説得力を与えている。

また、第一話の出演者には数多くの中国系のキャストが登場。本物の中国語が飛び交う物語となっていたのも、リアリティを高めていた。実際に、新宿の街を歩けば、中国語が聞こえてこない日はない。そんな今のリアルを的確に映し出すことに成功している作品だ。

外国人の生活の実態を知るきっかけに

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『東京サラダボウル』(C)NHK

これだけ街中に外国人が溢れていても、実際の彼らの生活を知っている日本人は多くないだろう。このドラマは、そんな彼らの生活の暮らしと人生を丁寧に描くことを試みている。第一話では、日本のアニメが大好きで留学してきた女性が失踪する物語だ。わざわざ異国の地にやってくる理由は様々だが、せっかく住んでもらうならいい思い出になってほしい、と鴻田は語る。

刑事が主人公のため、犯罪が描かれることにはなるが、その背景にある事情にもきちんと光を当てることで、メディアがよく使う「外国人犯罪」という安易なレッテル貼りに収まらない内容になりそうな作品だ。異なる人種や文化背景を持った人々といかに共生していくのか、そのヒントがたくさん詰まった作品になるだろう。

ドラマ10『東京サラダボウル』 毎週火曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中



ライター:杉本穂
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi