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第1話から強烈に描かれた“遊郭”の姿…!新大河ドラマ『べらぼう』NHK100年、節目作品で見えた制作陣の意欲

  • 2025.1.6

2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の第一話が、1月5日の夜放送された。

今年はNHKが放送を開始してから100年の節目となる。そんな記念すべき年にNHKが大河ドラマの題材として選んだのは、江戸時代のメディア王、蔦屋重三郎。泰平の時代に多くの刺激的なエンターテインメントを生み出した男の痛快な人生を描く作品となる。

第一話は、そんな男がいかにして成り上がったのか、その最初の一歩が描かれることとなった。

蔦屋重三郎とは

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』1月5日放送(C)NHK

主人公の蔦屋重三郎(横浜流星)は、江戸時代の中期から後期にかけて活躍した版元だ。貸本屋から始まり本屋を開業、卸業へと事業を拡大し、本のプロデュース・出版へと進出し、華やかな江戸文化を支えた人物だ。

彼は多くの才能を見出したことでも知られる。曲亭馬琴のような作家や、浮世絵師の喜多川歌麿、葛飾北斎、そして東洲斎写楽など名だたる文化人の作品を世に送り出してきた。

物語は、そんな重三郎がまだ版元業に精を出す前の時代から始まる。1772年の江戸中を巻き込んだ大火事「明和の大火」から物語は幕を開けた。吉原で生まれ育った重三郎は、女郎たちと火の海を逃げ回る。そんな中、両親とはぐれた少年を助け、からくも逃げおおせる。

その1年後、吉原は再建されたが、客足は鈍い。吉原は幕府公認の遊郭だが、当時、違法に売春営業する宿場町に客を取られ、末端の女郎たちの生活は苦しかった。彼が幼馴染の花の井(小芝風花)とともに姉のように慕っていた朝顔も病に倒れ、裸で寺に遺体が投げ込まれていた。しかし、女郎屋の主人たちは富を貪っていた。重三郎はそんな連中に食って掛かるが、力のない自分にはどうすることもできない。せめて、違法営業の宿場町を取り締まってもらおうと、老中の田沼意次(渡辺謙)に直談判に出るが、それは国益を損なうと拒否される。

しかし、田沼はある助言を重三郎に行う。「吉原が自ら価値を落としているのでは。人を呼ぶ工夫が足らんのではないか」と。そこで重三郎は自身が務める茶屋(遊郭の案内所)で配布する吉原細見に目をつける。

弱きを助ける熱血漢の主人公

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』1月5日放送(C)NHK

主人公の蔦屋重三郎は、吉原で身寄りのないところを、駿河屋の主人に拾って育てられた。吉原にやってくる人々は、ほとんどワケアリだ。重三郎は「吉原に好き好んで来る女はいねえ、口減らしのために売られてくるんだ」と言う。

それでも白いご飯を食べられることが吉原のいい所だとも、彼は言う。しかし、客足が鈍り食べることさえままならない女郎が出たことで、重三郎はなんとかその状況を変えようと助けようと立ち上がるのだ。本作の主人公は、そんな弱きを助ける熱血漢として描かれている。彼が商売を始めるのも、吉原の客足を取り戻し、女郎たちを助けるためであったことが第一話で提示されている。

そんな熱血漢を横浜流星が威勢の良い芝居で演じてみせている。主人に対しても物怖じしせずに意見を具申し、老中にまで直談判する度胸の持ち主だ。殴られてもへこたれず、自分の信念を曲げないまっすぐな男を嫌味なくストレートに演じている。

共演陣も第一話から豪華なメンバーが登場した。田沼役の渡辺謙はさすがの重厚さを発揮し、重三郎を導く役目を果たしている。この2人が今後も様々な場面で邂逅するだろう。花魁・花の井役の小芝風花はその美しさだけでなく誇り高さと気の強さも見せてくれた。

気になるのは、「厠の男」とクレジットされた安田顕だ。厠で、唐突に重三郎に的確なアドバイスをして去っていったこの男が、これからどのように物語で重要な役目を果たすのか注目される。

その他、女郎屋の女将・りつを演じた安達祐実が強烈なインパクトを残した。安達祐実はかつて映画『花魁道中』で美しい花魁役を演じたが、今回は女郎たちを苦しめる経営層の女将として悪辣な存在感を発揮しそうだ。

吉原はどう描かれたか

第一話の主舞台は、吉原だ。重三郎は吉原で版元として開業し、後に出版の中心地・日本橋へと進出するのだが、しばらくは吉原が舞台となりそうだ。この日本一有名な遊郭を『べらぼう』はどのように描いただろうか。

吉原は絢爛豪華な場所で「一晩で3000両は金が動く」と言われたりもするが、その内実は強烈な格差社会であったことが描写される。重三郎が姉と慕う朝顔に食事を届けた際にも、他の女郎が奪うようにそれに食いつこうとする一方、女郎屋の主人たちが豪勢な食事にありついている。この対比が強烈に描かれていた。食い詰めて死ぬ女郎がいることに対して、「次々に死んで入れ替わってくれたほうが客も喜ぶ」などという暴言を吐く者もいるくらいだ。

遊郭の華やかな側面、花魁道中も描かれる一方で、最下層の女郎が集う浄念河岸(じょうねんがし)も登場した。本作は、吉原の様々な側面を見せようという意欲を持っていることが伺える。

第二話以降では、重三郎がどのような工夫で吉原を再興していくのかが描かれると思われる。果たして、どんな奇想天外な発想をするのか、注目だ。

NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』 毎週日曜よる8時放送
NHKプラスで見逃し配信中



ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi