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かなり期待度が高い、新大河ドラマ『べらぼう』 メディアのあり方が問われる現代に投げかける“注目の題材”

  • 2025.1.4

毎年、大きな注目を集めるNHK大河ドラマ。2024年の平安時代を舞台にした『光る君へ』も好評を博したが、2025年も注目すべき作品が世に送り出される予定だ。

新たな大河ドラマは江戸時代を舞台に、日本のメディア、ポップカルチャーの礎を築いた蔦屋重三郎の生涯を描く『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』だ。2025年にこの題材をNHKが世に放つ意義はとても大きい。筆者も必ず視聴しようと思っているが、本作にどんな期待ができるか整理してみよう。

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(C)NHK

NHK放送100周年に江戸時代のメディア王を取り上げる意義

近年、メディアのあり方が問われることが多くなってきた。大手のメディアはネット発の新興メディアや個人インフルエンサーとの激しい競争にさらされ、従来の事業モデルが崩れ始め苦戦を強いられている。一方、ネットには不確かな情報が飛び交う空間となった。そんな状況の中、テレビ局も今のままではいられないという危機感を感じているに違いない。

一方、アニメやマンガをはじめとした日本のポップカルチャーは、世界中で愛されるようになってきた。そんな状況でNHKは、2025年に放送100周年の節目を迎える。節目の年に、NHKが大河ドラマで日本のメディアの礎を築いた人物を取り上げるという。そこには、何らかの意義を込めているに違いない。

主人公の蔦屋重三郎は、江戸時代に活躍した版元であり、曲亭馬琴のような作家や、喜多川歌麿、葛飾北斎、東洲斎写楽といった有名浮世絵師を世に送り出したことで知られている。江戸時代以前には、本を欲しければ写本として自ら書き写すしかなかったが、木版による印刷技術が向上したことで庶民も本を読むようになっていった。重三郎の活躍した時代の江戸では、世界的に見ても非常に多くの書物が出版されたというが、そんな時代にあって彼は、出版業で時代の寵児となった。蔦屋重三郎は、まさに江戸時代のメディア王なのだ。そして、彼がプロデュースした葛飾北斎のような才能は、海を越えてフランスの画家たちに影響を与えたことでも知られている。今、日本のアニメやマンガがグローバルに人気を博している時代とも呼応する側面があり、日本エンタメの魅力に迫る内容が描かれるのではないか。

メディアのあり方が問われる時代に、江戸時代のメディア王を取り上げることは、視聴者にとっても、製作するNHKにとっても意義深いものになるだろう。エンタメやメディアの役割といった観点で、『べらぼう』がどんな問いを投げかけてくるのかに、筆者は注目しようと考えている。

演技派・横浜流星が満を持して大河初主演

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(C)NHK

主人公の蔦屋重三郎を演じるのは、若手演技派俳優として注目を集める横浜流星だ。2020年に日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得し、2023年には映画『ヴィレッジ』『春に散る』の演技で報知映画賞の主演男優賞を受賞。2024年も映画『正体』で、無実の罪を晴らすために、様々な変装をして逃げる青年の役で、高い演技力を発揮している。

そんな彼が、満を持してNHK大河ドラマに主演として初出演を果たす。破天荒なメディア王の人生をどう体現するのか、注目される。

また、共演陣も豪華。特に注目されるのは、今やハリウッド俳優となった渡辺謙の出演だ。彼はこれで大河ドラマへの出演は6本目となり、大河ドラマと縁の深い俳優だが、どんな貫禄ある芝居を見せてくれるのか、楽しみだ。

ちなみに、横浜流星と渡辺謙は2025年公開予定の映画『国宝』でも共演している。撮影は『国宝』の方が先だったようで、『べらぼう』では2度目の共演となる。

その他、若手演技派の宮沢氷魚や小芝風花、ベテランの石坂浩二や安田顕など、実力ある俳優が揃っている。これらのキャストが痛快なエンタメを作り上げた男の物語をどう盛り立てていくのかも注目したい。

脚本家・森下佳子は江戸の人々をどう描く?

本作の脚本を務めるのは、森下佳子。大河ドラマの脚本を担当するのは、2017年『おんな城主 直虎』に続いて2度目となる。その他、NHKドラマでは『大奥』の脚本も担当しており、NHKで時代劇を書くのは3度目だ。また、TBSの名作『JIN-仁-』も森下氏の脚本作品であり、女性の武将、男女逆転の大奥、タイムスリップ時代劇と、異色の時代劇を書き続けてきた作家だ。

また、『ごちそうさん』や『義母と娘のブルース』など女性たちのドラマを描く作品にも定評がある。蔦屋重三郎は吉原で育った人物であり、『べらぼう』でも吉原は重要な舞台のひとつとして描かれる予定だ。森下氏が吉原で生きる人々をどのように描くのかも気になるところだ。

200年以上前に、エンタメによって社会に旋風を巻き起こした人物から、今を生きる我々も学ぶところがきっと数多くあるはずだ。どんなドラマになるのか、楽しみにしている。

NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
2025年1月5日(日)放送スタート!<初回15分拡大版>



ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi