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八木勇征”別世界の南くん”が切ない…物語のヒントとなりそうな言葉とは? ドラマ『南くんが恋人!?』第6話考察レビュー

  • 2024.8.30
『南くんが恋人!?』第6話 ©テレビ朝日

飯沼愛主演、八木勇征(FANTASTICS)が出演するドラマ『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)が現在放送中だ。幾度となく映像化を果たした名作『南くんの恋人』が、南くんが手のひらサイズになる男女逆転バージョンとして蘇った。今回は、第6話のレビューをお届けする。(文・西本沙織)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:西本沙織】
1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。

『南くんが恋人!?』第6話 ©テレビ朝日
『南くんが恋人!?』第6話 ©テレビ朝日

【写真】八木勇征が可愛らしくも切ない…様々な表情を堪能できる劇中カット。ドラマ『南くんが恋人!?』劇中カット一覧

人生のタイムリミットまで、あと少しかもしれない。そう考えたときに真っ先に浮かぶのは、恋人や家族など、愛する人の顔だろう。自分がいなくなった後、大切な人がちゃんと生きていけるように…。そう思って突き放すのも、きっとひとつの愛の形なのではないだろうか。

『南くんが恋人!?』第6話では、さまざまな愛の形が示された。夏祭りが終わった後の一家団欒。ひとり悩ましげな表情をしていたのが、父・信太郎(武田真治)だ。彼は以前、ちよみ(飯沼愛)が15cmの南くん(八木勇征)と会話しているところを目撃してしまう。

ちよみが隠し通そうとしているのに、果たして誰かに話していいものなのか。家族に挙動不審の理由を聞かれる信太郎だったが、「信じて待ってもらえませんか」と頼み込む。口をつぐむことで、ちよみの大事な秘密を守り抜いたのだ。

そんな折、ちよみの実の父親・たけし(富澤たけし)が堀切家にやってくる。たけしはちよみの祖母・百合子(加賀まりこ)に愛想をつかされ追い出された、典型的な“ダメ男”。他人を飄々と自分のペースに巻き込むたけしの喋りは、まるでひとつのコントを見ているかのように軽妙だ。堀切家にとっては厄介者だが、どこか憎めないキャラクターである。

百合子は縁を切るという条件付きで、お金の入った封筒を差し出す。なかなか受け取らないたけしに先手を打ったのは、ちよみだった。実の娘の気持ちを理解したのか、お金を手にして素直に出て行こうとする。去り際にちよみと話をしたたけしの表情は、娘を見守るしっかりした父親の顔だった。

『南くんが恋人!?』第6話 ©テレビ朝日
『南くんが恋人!?』第6話 ©テレビ朝日

大学バスケ部のコーチ・美鈴(武田玲奈)も、ちよみを訪ねてくる。美鈴が南くんを好きになったのは、最初の試合がきっかけだった。コーチが下手だから負けたと笑う相手選手を、南くんが怒ってくれたのだ。南くんに恋人がいることは、その頃から知っていた。ちよみのように愛されてみたかった、うらやましかったと正直に言える美鈴は、なんて強い女性なのだろう。

「恋愛で勝てるとは思ってないよ。でも、コーチと選手の関係は奪わないでください」と、真剣な眼差しで口にする美鈴。南くんに恋するひとりの女性としてではなく、チームをまとめるコーチとしての訴えからは、彼女の気丈さと懸命さがひしひしと伝わってきた。

またある時には、手芸部部長の恭介(今井柊斗)と出会う。ちよみと南くん人形の、ペアTシャツを作ってきたというのだ。本来ちよみに想いを寄せる恭介にとって、南くんは恋敵のはず。それなのに仲を深めるような行為をしたのは、ちよみの役に立ちたかったから。

その献身的な行動は、愛以外の何物でもない。秘密を守る、理解する、コーチとして支える、友人として力になる…。多様な愛の形を見てきたが、南くんはちよみにどんな愛を捧げるのだろうか。

『南くんが恋人!?』第6話 ©テレビ朝日
『南くんが恋人!?』第6話 ©テレビ朝日

恭介が渡したTシャツには、大きく「HEAVEN CAN WAIT(天国は待ってくれる)」と書いてあった。洋画のタイトルだというが、脚本を担当する岡田惠和が執筆した小説の題名も『天国は待ってくれる』。この言葉が、今後物語の何らかのヒントになる可能性は高い。

南くんはTシャツの文字を見つめた後、ちよみに将来のことを聞く。同じ大学を受けるつもりと答えるちよみを、なぜか南くんは否定するのだ。「小さくなってから、ちよみは俺のこと好きになりすぎだって」「自立っていうか、俺がいなくても生きていけるようにならないといけないんだ」と言いながら、表情を歪ませる。

これはきっと、南くんの本心ではない。もし自分が早苗(国仲涼子)と同じように消えてしまっても、ちよみがひとりで人生を歩めるようにするための優しさなのだろう。自分はすでに死んでいるから、もうすぐちよみとも会えなくなる。

少し思い込みすぎているような気もするが、当事者である南くんはそうとしか考えられなかった。消える側に心構えがいるように、姿を消される側にも心の準備が必要になる。手遅れになる前に距離をとっておくことは、南くんなりのちよみへの愛なのだ。

ひとつ気になったのが、別世界線の南くんを思わせるシーン。雷鳴が鳴り響いた後、瞬く間に時間が戻っていく。そこには、事故にあって小さくなることなく、ちよみと無事“お城”に行けた南くんがいたのだ。

“もしも”を映し出した場面だが、その光景があまりにも鮮明だった。妄想や夢オチではない。あり得た世界なのだと突きつけられているようで、やりきれない気持ちが沸々と湧いてくる。南くんが元に戻れる可能性はあるのか。第7話を心待ちにしたい。

(文・西本沙織)

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