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自然と場所の記憶の話

  • 2024.9.6

こんにちは!

私は現在大学を休学して、専門である美術について学校の外で学ぼうと、修行中です。

私は小さいころからたくさんの家族旅行をしてきました。そんな私にとっては旅はもう生活の一部です。

旅のことを見つめなおす良い期間だと思い、TABIPPOの第二編集部“TABIPPO CARAVAN”に参加してみることにしました。

今回が初投稿!旅の哲学みたいなものが好きなので、気楽にアウトプットして楽しく書いていこうと思います。

直近では留学を終えるという大きなイベントがあったので、留学先だったオーストラリアでのことを執筆してみようと思います。

通りすがりの老夫婦がスケッチを褒めてくれた話

私は交換留学で、オーストラリアの大学に通って授業を受けていました。日本の大学では座学系の美術をやっていた分、留学先では違う角度から美術を学んでみたく、美術の作品制作を専攻しました。

じつは日本の一般的な総合大学では美術制作の学部や授業が少ないのです。そのためオーストラリアの留学先で美術制作を学べるのは私にとって貴重な経験であり、とても楽しい経験となりました。

授業が始まって間もない頃、木炭を使ったドローイングがありました。私は木炭を使ったドローイングの経験があまりなく、その扱いにかなり苦戦していました……。そこで描く数を増やそうと、近所の公園にスケッチをしに行きました。

木漏れ日がきれいな土曜日の昼に

興味ありげに私の手元を覗いていく人もちらほらいたりして、「彼らは何を思って見ているんだろうな~」とぼんやり考えながら制作を進めていました。

そのなかで、通りかかったある老夫婦が、声をかけてくれたのです。

「この景色を描こうと思ったんだね!素敵だよ。彼(夫)がとてもこの絵を気に入ったみたいなのよ。」

という言葉をおそらくかけてくれました。全てを聞き取ることができず、突然のことに驚いたのもあり、言えたのは「ありがとう」だけでした。

しばらく笑顔で話しかけてくれた後、彼らは去っていきました。

老夫婦からかけてもらったこの言葉は、意味や解釈を加えず、そのままの状態で覚えておくように意識している記憶の一つです。このときの気持ちを思い出すと、いつでも感謝の念がふわりと浮かびます。

「それいいね」と素直に伝えてくれることの温かさ。

目の前で応援の言葉をもらえることの感動。

何よりありがたかったのが「自分が居たいと思った場所で自分の好きなことをしていいんだ」という感覚を得られたことでした。

そのときに描いていた木炭スケッチ

誰かに話して「その出来事って〇〇だね」という言葉を聞くのは違うし、「素敵な出来事」として簡単にファイリングするのも怖いなと思うほどに、私にとっては心に残った出来事でした。

当時、私はこれから先も美術に真剣に関わると決めていいものかと悩んでいたので、老夫婦からの言葉は文字通り「ありがたい」ことでした。

旅をしていると、このまま自分のなかに大切にアーカイブしておきたいようなことに結構出会うなと、私は感じています。

そういうものに落ち着いて向き合うためにも、旅先ではロングステイしたい派です。

留学先の海を絵ハガキにして友人にあげた話

私には、作品の世界観をとてもリスペクトしている友人がいます。

彼女は海外の旅先でインスピレーションを受けて作品を制作することも多くて、そんな彼女と話をしあえるのが、私にとってとても貴重な時間です。

そんな友人に留学の近況報告をしよう、と思い、パースの海岸でみた風景を絵葉書にして送ったときの話です。

お気に入りのとあるビーチの写真!この海ではサーフィンしました

パースという場所についての私の記憶は、海が多くを占めています。

気持ちの良い青がどこまでも広がって、地元の人も観光客も集まる場所。

名前の違う海岸へ行ってもみんな同じインド洋を見つめている、というつながりの気持ち。

そんな気持ちをなるべくリアルに伝えたくても、互換性のある言葉を上手く見つけて、当てはめるのは難しいかもしれないと思ったのです。

そこで、私は絵に任せてみることにしました。狙いとしては、一つの海を描くだけで、「パースの海」の情感を背負ってくれるような、昇華が起こればいいなと。

この記事のキャッチの写真をもとに描きました

これにすこし言葉を添えて、彼女に渡しました。

この絵葉書を見て、何を思ったのかは彼女にしかわからないけれど、私から彼女に伝える時に「特に海がきれいで元気をもらった」「元気にやっていた」とか、そういう言葉を借りるよりはその場にいた私の感情をよりまっすぐに伝えられる気がしました。

私の手元にこの絵葉書はもうないけれど、パースという場所の記憶について、一つの「表紙絵」になったという点で、場所についてこんな捉えなおしの方法があるんだと感じました。

自然が好き!

バスから見たキングス・パーク、明暗が最高

自然っていいですね。描くのも楽しいなって改めて感じています。

自然は一種の匿名性を持っているような気がします。

誰かの頭にある森や海の記憶は、どこか特定の場所とリンクしているはずですよね。でも、森の空気、海の香り、みたいな概念は、人それぞれの中にあるものだったりします。

少し哲学的な話になりますが、nature(名詞:自然)とnatural(形容詞:自然の摂理、生まれ持ったもの)という2つの単語をご存知ですか?

日本語では「自然」「自然と〜」と訳されたりしますが、特に“natural”には構文として“It is natural that~”「〜なのは当然だ、〜なのは無理もない」という意味合いを持っていたりします。

nature(自然)というものからnatural(自然の摂理、生まれ持ったもの)という形容詞が生まれたと考えると、「自然とは“自然に”“当然に”みんなの心の中に概念としてあるもの」であり、森の空気、海の香りのような自然の概念もまた、みんなの心の中にそれぞれの概念があるのだろうな……そんな発見をした気がしておもしろいなと思いました。

パース素敵だよ

ちなみにオーストラリアではパースに留学していましたが、パースのある西オーストラリア州は広大な土地面積で、大自然を感じられるスポットが多くあります!

いろんな場所でいろんな自然の神秘に出会っていこう、という思いが強まった経験でした。

All photos by Nonoka Kojima

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