自分だけの特別なおみやげ。香りから思い出す、旅の記憶

あなたが旅のなかで大切にしていることはなんですか？絶景を見ること、美味しいものを食べること、現地の人と交流すること……

私は、「その場を五感で楽しむこと」を大切にしています。

五感のなかでも、嗅覚＝「香り」に関しては、強く意識しているわけではないけれど、場所やシチュエーションとともに、記憶に残りやすいなと感じています。

「この香りは、あの国のビーチの香りに似てる」「この香りは、あの場所で嗅いだことがある気がする」

香りの記憶は、自分以外の誰かに話しても伝わりにくいもの。

今回は、香りから思い出す旅の記憶を書きとめてみます。この記事が、「それなら私も...…」と、あなたの旅の記憶を思い出すきっかけになればうれしいです。

マンダリン・オリエンタル・バンコクのロビー

先日、友人からプレゼントでもらった、とあるバスジェル。100mlのサイズなので、「機内の手荷物にも入れられるな〜」なんて考えながら、ふたをあけてみました。

試しに嗅いでみると、高貴なお花や、きらびやかな空間を彷彿とさせる、オリエンタルな香り。鼻を抜けて頭いっぱいに広がり、一瞬で心が満たされる感覚になりました。

それと同時に浮かんだのは、タイへひとり旅をした時の記憶。ワーケーションの休憩時間に、マンダリン・オリエンタル・バンコクでお茶をした時間を思い出しました。

オリエンタルな花がたくさん飾られたロビーラウンジで、甘いデザートを楽しむ。ノートを広げて今後について書きとめる充電時間を過ごし、顔を上げると、高貴な花の香りで癒される、最高の空間でした。

自分ひとりのために、たっぷりと時間を使うことができた、幸せな記憶。バスジェルの香りで、体中によみがえり、再充電されたような気持ちになりました。

ハワイ、オアフ島の空港から

きっと共感していただける方が多いのでは？と思うのは、ハワイの玄関口、ダニエル・K・イノウエ国際空港の香りです。

税関手続きの前、木製の囲いをくぐる下りエスカレーターで感じる香り。一瞬、屋外を歩くため、花壇に咲いた南国の花と、ハワイのあたたかい空気が混ざった、おだやかな香りがふわりと鼻に届きます。

不思議なもので、ハワイの街中では同じ香りを感じることはなく、もちろん日本国内でも遭遇できない、まさにホノルル空港の“あの場所ならでは”の香りです。

長いフライトを終えて、ハワイに足を踏み入れるタイミング。やっとハワイに来れた！という気持ちも重なり、あの香りを感じた瞬間、「ただいまー！」といつも心の中で叫んでいます。

シンガポールのホーカーで食べたチキンライス

最後は、香りと密接につながっている「食」の記憶。

おいしかった、苦手だった、辛かったなどの味の記憶はもちろん、誰と一緒に食べていたのか、その日はどこを観光していたのか、前後にどんなことがあったのか、という思い出も鮮明によみがえるから、旅で刻まれる香りの力って本当に不思議。

例えば、生姜の効いた肉料理を前にすると、シンガポールの旅を思い出します。

「ここがおいしいらしい」と聞きつけて、友人とはるばる食べに行った屋台のチキンライス。ホーカー（シンガポールの屋台街）の独特な香りと、暑い暑いといいながら行列に並んだ時間を思い出し、楽しかったなとほっこりした気持ちに。

そんな記憶のストックが増えるたびに、「私はしあわせな人生を送れているんだな」と幸福感に溢れます。

香り好きの私は、自宅用のおみやげも香りものを購入することが多いです。お香や紅茶をはじめ、タイガーバームやヤードムなどの、香りに特徴のあるコスメを手にとりがち。

どれも「あの国で買ったものだ」と、記憶や楽しかった思い出を一瞬で思い出すことに一役買っているので、とてもおすすめです。

旅の記憶や経験を、五感を刺激するものと一緒に持ち帰る。ふとした時に思い出して、生活をもっと豊かで幸せなものにする。

これからも、そういう旅をしていきたいと思っています。

あなたにも、香りと旅のエピソードがあれば、それはきっとステキな記憶と思い出のはず。何度も何度も思い出して、旅の思い出としあわせな人生を、ぜひ噛み締めてみてください。

All photos by Miyamoto Hazuki