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池松壮亮”津野”のキャラが本編と全然違う!? 特別編に心を打たれたワケ。ドラマ『海のはじまり』特別編考察レビュー

  • 2024.8.29
©フジテレビ

目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、名作『silent』の制作チームが再集結し、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品だ。今回は、8月26日(月)に放送された特別編を中心に池松壮亮演じる津野晴明にフォーカスしたレビューをお届け。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

『海のはじまり』第7話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第7話より ©フジテレビ

【写真】池松壮亮の表情に涙…”演技”を超えた名演に心打たれる劇中カット。ドラマ『海のはじまり』劇中カット一覧

月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、主演を務めるSnow Man目黒蓮の体調不良による療養を受けた措置により、26日に特別編として「恋のおしまい」を放送した。

今回の特別編は、本編の3年前の夏を舞台に、古川琴音演じる南雲水季と池松壮亮演じる津野晴明を主軸とした完全新撮影のラブストーリー。放送前まではあくまでもスピンオフ的な立ち位置にあるとたかをくくっていたが、放送が始まってすぐにそんな予想は覆される。

冒頭5分で「こんな重要な事実を特別編で!?」という感想を抱くことになる。これまで水季と津野の関係は詳細には明らかにされておらず、娘を一人で育てる水季を同僚である津野が支えるという構図までは見えていた。第7話で水季が「未だに気持ち利用してます。最低です」という言葉があったことから、津野から水季への好意はあったのだろうと推察できる。

だが、実際に2人の間に恋が生まれていたかどうかは見る側の裁量次第。津野から直接的な“好意”はなかったし、単純に近くにいる同僚を助けたいという“気持ち”から動いていた可能性も否定できなかった。

しかし、「恋のおしまい」で小さな恋が確かにそこにあったことが明らかとなる。水季は出勤時にタイミングを合わせるために靴紐を結び直したり、ご飯のことを考える時に津野が頭の片隅にいたことを明かす。水季には確かに恋心があったが、娘である海のために「津野さんのこと好きになりたくないんですよ」と自制していたのだった。

『海のはじまり』第7話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第7話より ©フジテレビ

いわゆる“両片思い”のような状況で過ごす2人の姿に驚かされたのと同時に、ドラマ本編の津野の行動にも合点がいく。

これまでの津野のイメージといえば、つっけんどんな物言いだ。夏(目黒蓮)に第一声で放った「この7年のこと、ほんとに、何も知らないんですね」という言葉だったり、弥生(有村架純)への“外野”発言だったり、ともすれば単に性格の悪い人間とも取られかねないシーンは数多くあった。しかし、今回の物語を見て、一気に津野への印象が変わり、味方につきたくなった人は多いのではないだろうか。

単なる恋人よりも近い関係にありながら、自分ではだめな理由を水季本人に伝えられ、水季が亡くなって数か月経ったと思えば、海の父親である夏が急に現れる。津野からすれば青天の霹靂で、これまで誰よりも水季の近くにいた自分が突如外野に追いやられ、夏が海(泉谷星奈)の父親を始めるというのは受け入れがたいことだったろう。むしろその状況から夏との関係をしっかりと築いた(夏の歩み寄りはあったにせよ)津野には敬意しかない。

『海のはじまり』第3話より ©フジテレビ
海のはじまり第3話より ©フジテレビ

また、津野を演じた池松壮亮の演技に触れないわけにはいかない。夏や弥生と喋る時のようなボソボソと冷淡に言葉を紡ぐ姿は影を潜め、水季といる時の津野は実に“優しかった”。それは単に行動だけではなく、水季を見る目、表情、雰囲気、そのすべてから伝わってくるようで、水季への思いやりに溢れているように見える。

特に印象的だったのが笑いながら言葉を発するシーン。水季に「晴明」という名前をいじられて「失礼だよ。人の名前に、いくら本人が晴れやかでも明るくもないからって笑うのは」と返したり、一緒におにぎりを作っている時に水季が食べているのを見て「明日の海ちゃんのおにぎりが〜」と言ってみたり…。文字面で見てもユニークではあるのだが、池松壮亮というフィルターを通すとそこに幸せという要素も乗っかり、もはや演技と表現するのもはばかられるほどリアルな日常の一瞬を切り出していた。

水季がペディキュアを落とし、物語はまるで音を立てて行くように「恋のおしまい」として収束。その一方で「恋のはじまり」として夏と弥生の交際前の様子も描かれ、残酷なまでに美しい締めくくり方となった。これまで明かされなかった津野の背景も含め、何度でも見たい特別編を作り出した制作陣には最大級の賛辞と感謝を贈りたい。

(文:まっつ)

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