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【映画】注目の映画監督・奥山大史の新作『ぼくのお日さま』9/13公開【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

  • 2024.8.28

映画パーソナリティ・映画評論家の伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は奥山大史監督の『ぼくのお日さま』。雪の降る街で少年、少女、青年に起こるできごとを美しい映像で描きます。9月6日(金)~8(日)にテアトル新宿・TOHOシネマズシャンテにて先行公開、9月13日(金)全国公開。


伊藤さとりさんレビュー

池松壮亮さんがタッグを組みたかった奥山大史監督

「奥山大史という監督にすごく興味があったんです」 そう言ったのは池松壮亮さん。大学在学中に撮った『僕はイエス様が嫌い』(2019)はサンセバスチャン国際映画祭で最優秀新人監督賞を22歳で受賞。その才能に注目した是枝裕和監督によってNetflixドラマ「舞妓さんちのまかないさん」でも3つのエピソードを担当した奥山監督は、「一緒に映画を作りたい」と以前から言われていた池松壮亮さんと、更にオーディションで発見したまだ中学生の俳優二人、越山敬達さんと中西希亜良さんとで映画を撮ります。それがカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門に選出された『ぼくのお日さま』です。

美しい映像にも注目

スケートリンクの上で優雅に舞う美しいさくら。そんな彼女に一目惚れしたタクヤの表情が初々しい。彼女への想いも相まって彼はアイスホッケーからフィギュアに転身するもののなかなか上達しません。それを丁寧に教えてくれるのが池松壮亮さん演じるコーチの荒川。この3人が氷の反射で光る世界の中でアイスダンスのレッスンをし、時には野外レッスンで、凍った湖の上で戯れる姿が愛おしいのです。 こんなにも氷と陽の光の相性が良かったんだとシーンごとに感心しながら、あるカットでは、池松壮亮さん演じる荒川と、若葉竜也さん演じる彼のパートナー五十嵐との無邪気な様子が小さな部屋の中で映し出されます。その光景が愛に溢れているのに、悲しいかな、偏見を抱えている少女とのコントラストが胸に刺さります。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に選ばれた

タクヤが吃音だったり、荒川と五十嵐という同性カップルなのも、監督は意図したわけではなく、自分が観たい映画を書いていたらそうなったと語っています。それでもそこに意味を持たせなかったのは、当たり前に世界に存在する人々という理由でしょう。そんなふうに社会にはまだ偏見があることを意識しつつ、美しい映像の中で純度の高い感情を描いた本作だから、世界三大映画祭のひとつであるカンヌ国際映画祭のコンペティションに入選したんだと思います。
それと忘れてはいけないのが、映画のタイトルはハンバートハンバートが2014年に発表した曲「ぼくのお日さま」から来ているということ。この曲からインスパイアされて物語は生まれ、結果、主題歌として映画のラストを飾ることになりました。これがまた胸がギュッとなる歌詞とメロディ。まさに隅々まで味わい深い愛情物語なのでした。

☑『ぼくのお日さま』 INFORMATION

9月6日(金)~8日(日)テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて先行公開 9月13日(金)より全国公開

【あらすじ】吃音のあるアイスホッケー少年・タクヤ(越山敬達)は、音楽に合わせてフィギュアスケートの練習をしている少女・さくら(中西希亜良)に心を奪われる。ホッケー靴のままフィギュアのステップをまねては何度も転んでいるタクヤを見かねて、さくらのコーチで元フィギュアスケート選手の荒川(池松壮亮)は、彼にフィギュア用のスケート靴を貸して練習に付き合う。やがて荒川の提案により、タクヤとさくらはアイスダンスでペアを組むことになる。 2024/日本/90分
監督・撮影・脚本・編集:奥山大史
主題歌:ハンバートハンバート「ぼくのお日さま」
出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩
配給:東京テアトル
Ⓒ2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS

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