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2024年最新! いま世界が注目する美術館10選【一度は見るべき世界のアート2024 vol.3】

  • 2024.8.28

【ナショナル・ポートレート・ギャラリー】英国・ロンドン

ロス・プレイスと名付けられた新しいエントランス。正面の像はヴィクトリア朝時代の名優ヘンリー・アーヴィング。Photo: Olivier Hess

およそ75億円を投入した大規模改修を終え、2023年7月に3年ぶりに再オープンを果たした肖像画のみを展示するユニークな美術館。展示スペースは2割ほど増え、歴史的建造物にありがちな薄暗い会場は、ガラス窓を多用することで、自然光が差し込む明るい空間に一新された。新ギャラリーの顔ともいうべきエントランスの3枚の扉には、トレーシー・エミンによって45人の女性像が刻まれた。ジャン・ハワースとリバティ・ブレイクによるヴァージニア・ウルフやケイト・モスの大型の肖像画、英国の黒人女性アーティスト、トーマス・J・プライスによるブロンズ彫刻「リーチング・アウト」など、近現代の女性の肖像も数多く加わり、それらの新作が、17世紀のジョン・テイラーの作とされるシェイクスピアの肖像画など歴史上の人物のポートレートと、違和感なく同居している。

リニューアルに伴ってコンテンポラリーアートの展示も充実。Photo: David Parry
古典的な彫像に交じって、スマホを操作する女性の像はトーマス・J・プライスの「リーチング・アウト」Photo: Gareth Gardner for Nissen Richards Studio

ナショナル・ポートレート・ギャラリー(National Portrait Gallery )

St Martin’s Place ,London WC2H 0HE , U.K.

Tel./+44-20-7306-0055

https://www.npg.org.uk/

【クンストシロ】ノルウェー・クリスチャンサン

ノルウェーで6番目の人口規模の都市、クリスチャンサンの海辺に位置する白亜の美術館。Photo: Alan Williams

総額200兆円を超える政府系ファンドを運用するノルウェー中央銀行投資管理部門のCEO、ニコライ・タンゲンは、ノルウェー有数の資産家であり、長者番付の常連だ。その彼が、2015年に30年以上かけて収集した1,000点以上の美術品を、故郷のクリスチャンサンに寄付すると発表した。展示会場として、港に隣接する穀物倉庫に着目。飢餓に備えるために穀物を貯蔵してきた高さ40m、30個のコンクリート円筒からなるサイロ(倉庫)を、アートを収蔵するサイロに改修し、構想から9年後の2024年5月11日に開業にこぎ着けた。クンストシロの素晴らしさは、北欧の現代アートに絞り込んだタンゲン・コレクション。ピカソもゴッホもないが、ノルウェーのレイダー・オーリーやデンマークのフランチェスカ・クラウセンなど、1920年以降に活躍したアーティストを中心に約5,500点の作品を揃えている。

飢饉に備えるために1935年に建てられた穀物倉庫をリノベーション。Photo: Alan Williams
絵画、グラフィックから、彫刻、織物、陶芸、手工芸、写真、コンセプチュアルアートまで、幅広い作品を展示。Photo: Alan Williams

クンストシロ(Kunstsilo)

Sjølystveien 8, 4610 Kristiansand, Norway

Tel./+47-38-07-49-00

https://www.kunstsilo.no/

【VS.】大阪市

JR大阪駅北側の巨大な再開発プロジェクト「グラングリーン大阪」の目玉のひとつとして開業。©RAM KATZIR Photo: VS. PROJECT

大阪・関西万博を目前に控えた大阪で、今年最大の再開発プロジェクト「グラングリーン大阪」が、いよいよ始動する。先行まちびらきとして9月6日にオープンするショップ、レストラン19店舗と同時に、緑が広がる公園の中に異彩を放つ“2つの箱”が出現する。内部には3つのスタジオに分かれた合計約1,400㎡の展示空間があり、特に天井高15mの Studio Aは、没⼊感のあるデジタル映像の上映や⼤型のインスタレーションの展⽰が可能だ。VS.は、さまざまなジャンルの人々が、「良い対峙」をしながら新たな価値や関係性を生むことを理想とする新しいミュージアムだ。オープニング記念は真鍋大度の新作個展「Continuum Resonance:連続する共鳴」、11月1日からは著名アーティストやブランドのビジュアルを数多く手がける吉田ユニの個展が予定されている。

スタジオ間を結ぶホワイエは、さまざまな展⽰やイベントが可能なフレキシブルな空間。Photo: VS.PROJECT

VS.

大阪府大阪市北区大深町6-86

グラングリーン大阪 うめきた公園 ノースパーク VS.

https://vsvs.jp/

【ラインハルト・エルンスト美術館】ドイツ・ヴィースバーデン

槇文彦は、街と美術館に連続性を持たせて、市民が気軽に利用できる空間を目指した。Photo: Helbig Marburger

ヨーロッパで最も古い温泉地の一つであるドイツ・ヘッセン州のヴィースバーデンに、2024年6月23日にオープンしたばかりの美術館。地元の起業家、ラインハルト・エルンストが、1980年代から収集した作品には、ドイツをはじめとするヨーロッパの抽象芸術に加え、ヘレン・フランケンサーラー、ロバート・マザーウェル、リチャード・ディーベンコーン、ジャクソン・ポロックなど米国のアーティストの作品、日本の井上有一の書などが含まれ、1940年代から50年代にかけてNYを中心に隆盛を極めた抽象表現主義というムーブメントの特徴を知ることができる貴重なコレクションだ。設計は、プリツカー賞受賞の槇文彦。残念ながら開館を待たずに、6月6日に亡くなってしまったが、彼がぎりぎりまで手掛けていた最後の作品群のひとつでもある。

ヘレン・フランケンサーラーは、オーナーのラインハルト・エルンストが最も愛する画家。(Zarathustra, Helen Frankenthaler)

ラインハルト・エルンスト美術館(Museum Reinhard Ernst)

Wilhelmstraße 1, 65185 Wiesbaden, Germany

Tel./+49-611-763-8888-0

https://www.museum-re.de/en/

【国立女性美術館】米国・ワシントンDC

モロッコ出身のアーティスト、ララ・エッセイディの「Bullet #3」。金色のマットレスには無数の銃弾が埋め込まれている。Photo: NMWA

2023年10月21日に再オープンした、米国初の女性とクイアのアーティストに特化した美術館。1903年にフリーメイソン寺院として設計されたネオルネッサンス様式の建物に、2年間の歳月と6,600万ドルを費やして大規模なリノベーションを施し、展示スペースを15%ほど拡張。大型のインスタレーションも展示可能になった。約6,000点のコレクションには、マリー・アントワネットお抱えの宮廷画家として知られるエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランに始まり、フランスの最高勲章・レジオンドヌール勲章を女性芸術家としてはじめて受賞したローザ・ボヌール、エドガー・ドガの絵画に触発されて米国人としては珍しく印象派に参加したメアリー・カサット、メキシコの現代アートを代表する民族派の画家のひとり、フリーダ・カーロなどの貴重な作品が鑑賞できる。

右手前はニキ・ド・サンファルの「妊娠したナナ」。Photo: NMWA
優雅なネオルネッサンス様式の建物は、1987年にアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録された。Photo: NMWA

国立女性美術館(National Museum of Women in the Arts)

1250 New York Ave. NW, Washington DC 20005, United States

Tel./+1-202-783-5000

https://nmwa.org/

【M+】香港

巨大なLEDディスプレイに投影されるデジタル映像は、ビクトリア・ハーバーの対岸からも見える。Photo: Kevin Mak
サウス・ギャラリーに展示中の宮島達男作品「Region No. 43701–No. 43900」。

香港の西九龍文化地区に2021年11月にオープンしたアジア初の世界的なビジュアル・カルチャー美術館。総床面積65,000㎡に33のギャラリーという途方もない広さのスペースに、香港、中国本土だけでなく、アジア各地、世界をカバーするビジュアルアート、デザイン建築、動画の3分野の約8,000点以上のコレクションを収蔵。大衆文化やテクノロジー指向の表現方法などを含む視覚文化(ビジュアル・カルチャー)が集合し、絵画だけでなく、建築模型、グラフィックデザイン、工業製品、ゲームなどの展示が、香港という都市の特色を際立たせている。1階のパブリックスペースでは映像作品を常時上映しているほか、2階の「キャビネット」コーナーには、200点以上のダイナミックコンテンツが展示され、自分のスマホなどで体験できる。インタラクティブな体験は、これからの美術館の在り方を示しているようだ。

2024年9月21日から2025年4月6日まで、中国初のクチュールアーティスト、グオ・ペイの特別展を開催。Photo: Guo Pei

M+(エムプラス)

West Kowloon Cultural District, 38 Museum Drive, Kowloon, Hong Kong

https://www.mplus.org.hk/

【オスロ国立美術館】ノルウェー・オスロ

2003年にナショナル・ギャラリー、建築博物館、装飾美術・デザイン博物館、現代美術館などが統合して生まれたオスロ国立美術館の初めての新棟。Photo: Iwan Baan

2022年6月にオープンした北欧地域で最大級の美術館。オスロ港を一望するスクエアな建物は、ドイツの建築家グループ「クライフス+シュベルク」のデザインによるもの。ノルウェー政府が推進する、温室効果ガスの排出量を半分以下に削減する取り組み「FutureBuiltプログラム」にも参加している。2フロア、約90の展示室に古美術から近・現代美術、建築、デザイン、工芸まで5,000点以上を常設展示。2階の中央部には、1893年作の「叫び」を含むムンクの作品が集結。一足先の2021年10月に、歩いて30分ほどの場所に開館した「ムンク美術館」には、クレヨン画、テンペラ・油彩、リトグラフという異なる3つの手法の「叫び」も展示されている。海沿いの景色を眺めながら街散策を兼ねた美術館のハシゴがおすすめだ。

古美術から近代・現代美術、建築、デザイン、工芸まで5000点以上を常設展示。Photo: Iwan Baan
NOR Skrik, ENG The Screamムンクの名作「叫び」は必見。

オスロ国立美術館(The National Museum of Norway)

Brynjulf Bulls plass 3, 0250 Oslo, Norway

Tel./+47-21-98-20-00

https://www.nasjonalmuseet.no/

【ブルス・ドゥ・コメルス】フランス・パリ

キムスジャの「To Breathe – Constellation」2024年。

パリの中心部、ルーブル博物館とポンピドゥセンターの間に位置する、1767年に開設された穀物取引場の建物をリノベーション。グッチイヴ・サンローランバレンシアガなどを擁するケリングの総帥、フランソワ・アンリ・ピノーが世界中のアーティスト約350人の10,000点余りの作品を集めた「ピノー・コレクション」を展示する。設計は安藤忠雄。巨大なガラス張りのドーム屋根を持つ伝統建築の建物の中心に、直径29mのモダンな鉄筋コンクリートの円筒を収めて、展示スペースを構成した。絵画、彫刻に限らず、写真、インスタレーション、動画や音声作品などあらゆる芸術表現が対象で、新進アーティストの作品も幅広く受け入れる。講演会、パフォーマンス、コンサートなど、年間を通して多彩なプログラムを用意し、常に新たな“体験”を提案している。

スン・ユァン+ポン・ユゥの「Old People‘s Home」2007年。Photo: Sun Yuan et Peng Yu
1767年に穀物取引場として開設され、19世紀末から商品取引所として使われていた美しい建物を全面改修した。Photo: Vladimir Partalo

ブルス・ド・コメルス(Bourse de Commerce)

2 Rue de Viarmes, 75001 Paris, France

Tel./+33-1-55-04-60-60

https://www.pinaultcollection.com/fr/boursedecommerce

【下瀬美術館】広島県・大竹市

可動式の展示室を水に浮かべるという世界でも類を見ない美術館。Photo: SIMOSE

広島・大竹市の下瀬美術館が、2024年6月13日、ユネスコが発表する世界的な建築賞・ベルサイユ賞の「世界で最も美しい美術館」部門に選出された。今年選ばれた7館のうち、日本からは唯一の受賞だ。設計を担当した坂茂は、美術館の前に広がる瀬戸内海の島々から、水盤の上に8つの可動展示室を浮かべるというアイデアを着想。それを広島が誇る造船技術によって実現した。地元企業の丸井産業の経営者、下瀬ゆみ子が先代から引き継ぎ、半世紀をかけて形成したコレクションには、原点ともいえる京人形・雛人形を中心とする工芸品に始まり、エミール・ガレのガラス作品や家具、ミレー、ピサロ、ルノワールなどの油彩画、東山魁夷、加山又造、小磯良平を中心とする日本の近代美術などが含まれ、ゆっくりと時間をかけて鑑賞したい。

アンリ・マティス「青いチュチュの踊り子」1942年。Photo: SIMOSE

下瀬美術館

広島県大竹市晴海2-10-50(Simose Art Garden Villa内)

Tel./0827-94-4000

https://simose-museum.jp/

【横浜美術館】横浜市

石造りのファサードが左右に広がる美しい建物は、1989年の横浜博覧会の際に建てられた。Photo: 新津保建秀

今年3月に大規模改修工事を終えて、約3年ぶりにリニューアルオープンした横浜美術館。外部に保管していた約14,000点のコレクションを館内に戻すために、6月10日から10月末まで一時的に休館しているが、11月に一部再開し、2025年2月には全面的に開館する。全長180メートルのファサードを持つ美しいシンメトリーの建物は、丹下健三の設計。リニューアルにあたって巨大なガラス天井の開閉式ルーバーが修復され、その下に広がるグランドギャラリーは、無料で入場できる開かれた空間「じゆうエリア」として開放され、誰もが思い思いに過ごせる場所になる予定だ。収蔵作品には、ダリやピカソ、マグリットなどのダダ・シュルレアリスムを中心とした絵画や、日本における写真発祥の地にちなむ歴史的な写真作品など、貴重なコレクションも多く、全面オープンが待ち遠しい。

市民が自由に行き来できるオープンスペースとして開放される予定。Photo: 新津保建秀

横浜美術館

神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1

Tel./045-221-0300

https://yokohama.art.museum/

※※2024年6月10日から10月31日まで休館。11月1日に一部開館、2025年2月に全面開館を予定。

Text: Yuka Kumano Editor: Sakura Karugane

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