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シーズン23/24の終わりに、プルミエ・ダンスールに任命された2名は?

  • 2024.8.28

パリ・オペラ座ではシーズン2023/24の終了直前の7月12日に、プルミエ・ダンスール2名の任命が発表された。1860年以来、コール・ド・バレエの昇級はコンクールの結果で決まることになっている。しかし前シーズンはスジェからプルミエ・ダンスールへの昇級については実験的に任命形式で行われ、カドリーユとコリフェだけが11月9日と10日のコンクールに参加した。これはドゥミ・ソリストとして踊るスジェのダンサーたちにとって、年末の忙しい時期にコンクールの準備が大きな負担になることを考慮してのことであり、また彼らの仕事は上層部にしてみれば日常的にステージで見ることができるということも理由だ。

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トマ・ドキール。photography: Julien Benhamou/ OnP
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ジャック・ガズォット。photography: Julien Benhamou/ OnP

プルミエ・ダンスールの任命はシーズン終了までに、ということで時期は明言されていなかったのだが、まず2名がコンクール終了後間もない11月20日に任命された。既報のとおりイネス・マッキントッシュとフロラン・メラックである。彼らはコンクールの昇級者たちと一緒に2024年1月1日から新しい階級へと。その後、シーズン内に後2名が任命されるということで、さあ誰が?とパリ・オペラ座ファンはスジェのダンサーたちがどのように配役されているかを見ながら予想を巡らせていた。結果はThomas Docquir(トマ・ドキール)とJack Gasztowtt(ジャック・ガズォット)。女性のプルミエールはブルーエン・バティストーニがエトワールに上がったので空席はあるはずだが......昇級に値する該当者がいなかったのだろうか。トマとジャックが任命され、現在プルミエ・ダンスールは7名で、女性は長らくサバティックを取っているマリオン・バルボーを含めて5名である。なお、トマとジャックはこの任命日から遡って、昨年のコンクールでの昇級者そしてイネスとフロランたちと同様に2024年1月1日に新しい階級への昇級とされた。

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2024年4月、『ドン・キホーテ』より。初役でバジルを踊ったトマ・ドキール。photography: Yonathan Kellerman / OnP

トマ・ドキールは2023年の夏に『グラン・ガラ2023』で来日し、ビアンカ・スクダモアとレオノール・ボラックをパートナーに踊っているので日本のバレエファンの記憶に新しいだろう。それに2月の来日公演『白鳥の湖』でも、オニール八菜とジェルマン・ルーヴェが主役の公演でロットバルト役を披露している。ベルギー出身の彼はオペラ座のバレエ学校で5年学んだのち、2015年に入団。2017年にコリフェ、2020年にスジェに昇級。若さに似合わぬ落ち着きと存在感があり踊りも安定している彼はコリフェ時代の2018年12月に早くもロットバルト役に抜擢されている。ちなみにその時のプリンス役はユーゴ・マルシャンだ。この時代、『イン・ザ・ナイト』の第3パ・ド・ドゥの代役にも選ばれていた彼は、昨年10月にブルーエン・バティストーニと第1バ・ド・ドゥに配役されてステージでこの作品を踊ることができた。その後にはロクサーヌ・ストヤノフと『ドン・キホーテ』の主役を踊り......。これらの仕事が今回の任命へと彼を導いたのだ。以前、『オネーギン』のレンスキー役に興味があると語っていた彼。確かにこの役に似合いそうだ。来年の公演でその夢が叶うことを彼のために祈ろう。

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2024年3月、『リーズの結婚』より。初役でコラス役を踊ったジャック。photography: Benoîte Fontan/ OnP

ジャック・ガズォットはトマより2年後の2017年に入団している。同期入団は成績順にあげるとアレクサンドル・ボカラ、ミロ・アヴェック、サミュエル・ブレイ。彼らに次ぐ4番目の入団者のジャックは、2021年にコリフェ、2022年スジェにいち早く昇進した。その間、アンヌ=テレサ・ドゥ・ケースマイケルの『Die Grosse Fuge』ではシャープな動きで観客の心を捉え、「若きダンサーたち」ではアンジュラン・プレルジョカージュの『ロミオとジュリエット』で激しくパワフルな踊りを見せ、また2023年7月にはカロリーヌ・カールソンの『シーニュ』でオニール八菜と主役に配役された。優れたコンテンポラリー系のダンサーであり、また『ジゼル』の収穫のパ・ド・ドゥでは見事なクラシックダンサーぶりを見せ、その時のパートナーだったマリーヌ・ガニオとともに今春には『リーズの結婚』で主役に抜擢されている。この作品では優れた演技者であることも証明した。2月の来日公演で踊ったロットバルト役は2022年12月が初役だった。力強くも軽快な足さばきでロットバルトを踊った彼。穏やかな人柄なのだろうか。どこか常に優しさを感じさせるロットバルトだったのが印象的だった。7月14日のインスタグラムで、6歳の時に遠方からフランスの家庭の養子に迎えられたことから始まる、プルミエ・ダンスールへの昇級の喜びとそこにいたるまでに出会った人々への感謝を綴った彼のメッセージはとても感動的だ。

10月1日のシーズン開幕ガラで踊られるMy'Kal Stromile振り付けの『Word for Word』ではヴァランティーヌ・コラサント、オニール八菜、ギヨーム・ディオップとともに創作ダンサーのひとりに選ばれているジャック。新シーズンでクラシックファンが楽しみに待つ『マイヤリング』では、2022年にレパートリー入りした時同様に御者のブラットフィッシュ役で彼を見られるだろうか? いずれにせよ、シーズン24/25では次なる段階への彼の力強い羽ばたきが見られるに違いない。

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