1. トップ
  2. 「10月ドラマ」名作予想3選! 脚本家・制作チームの観点から分析

「10月ドラマ」名作予想3選! 脚本家・制作チームの観点から分析

  • 2024.10.1

夏ドラマが最終回を迎え、10月から徐々に始まる秋ドラマ。GP帯のラインナップを見るに、ラブコメやファンタジー作品が少なく、重厚な作品が多いような印象を受ける。なかでも、制作チーム、脚本家の観点からみた秋ドラマの期待作を紹介する。

海に眠るダイヤモンド

undefined
(C)SANKEI

TBS系列放送日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』は、『アンナチュラル』『MIU404』『ラストマイル』のプロデューサー・新井順子、監督・塚原あゆ子、脚本家・野木亜紀子のチームによる制作だ。間違いないと言われ続けたチームがとうとう日曜劇場に携わることになったのかと少し感慨深い思いになる。

『海に眠るダイヤモンド』は、2018年パートの東京と1955年の長崎県端島を舞台にした70年に渡る愛と青春、友情の物語。異なる雰囲気の世の中を生きる主人公を、一人二役で神木隆之介が演じる。これまでこのチームが制作してきたドラマは、どちらかと言えばベタをやらない作品が多く、これまでのドラマにないような設定、展開のバリエーションにこだわり続けてきたように思う。また、これまでの三作品は、どれもクライムサスペンスであり、仕事人たちの努力を描き続けてきた。

『海に眠るダイヤモンド』はこれまでとは違う作風で、どちらかと言えば物語の設定もベタ寄りな印象を感じる。とはいえ、キャラクター設定やストーリー運びが巧みな野木の手にかかれば、重厚ながら既視感のない日曜劇場になるかもしれない。

わたしの宝物

undefined
(C)SANKEI

『わたしの宝物』は、フジテレビ系列放送の木曜22時枠の新作ドラマ。本作は、2023年春に放送された『あなたがしてくれなくても』の、プロデューサー・三竿玲子と脚本家・市川貴幸の再タッグ作だ。主演は、『西園寺さんは家事をしない』で、コメディエンヌっぷりを見せつけた松本若菜が務める。『あなたがしてくれなくても』は、夫婦のセックスレスを題材とした漫画が原作の物語だったが、今作はモラハラに晒された末に托卵をおこなう女性を主人公としたオリジナルストーリーとなっている。

『あなたがしてくれなくても』は、セックスレス状態に悩む男女が、罪悪感にかられながらも不倫状態へと向かうまでの感情の変化を丁寧に紡いだドラマだった。またセックスを拒否する側の事情や苦悩も描かれており、登場人物たちの複雑な感情が、繊細なセリフやストーリー展開で描写されていた。

今作は、夫とは別の男性との子供を夫婦間の子供と偽って育てる托卵を題材としている。罪悪感にかられながらも自分を守るために禁断の選択をする主人公のみならず、登場人物たちの感情を克明に描いていく作品になりそうだ。

マイダイアリー

undefined
(C)SANKEI

『マイダイアリー』は、テレビ朝日系列放送の日曜22時枠の新作ドラマ。『マイダイアリー』の脚本家は、デビューから4年の新進気鋭脚本家・兵藤るり。主演は、高い演技力で注目を集める清原果耶が務める。テレビ朝日日曜22時枠は、岡田惠和による『日曜の夜ぐらいは…』や、野島伸司による『何曜日に生まれたの』など中堅からベテラン層の脚本家が手がけることが多かった。そんな枠での新人脚本家の起用。兵藤が紡ぐ物語への信頼が感じられる。

兵藤るりは、東京藝術大学大学院で脚本家 坂元裕二に師事し、2021年には坂元裕二脚本の『大豆田とわ子と三人の元夫』のチェインストーリーを手がけ、2022年には『初恋の悪魔』の脚本協力&Huluオリジナルストーリーを担当。代表作であるNHK夜ドラ『わたしの一番最悪なともだち』は、2023年10月度ギャラクシー賞月間賞を受賞しており、着実に脚本家キャリアを積み重ねている。『わたしの一番最悪なともだち』は、就職活動と新卒社会人の日常を通して、若者の苦悩、自分を模索する姿を描いたドラマ。兵藤は、大学生から社会人になるまでの若者に生まれる繊細な感情をウィットに富んだセリフで表現した。

『マイダイアリー』も、社会人1年目の主人公が、些細なきっかけで過去の思い出を振り返っていく物語。大学時代の些細な出来事をノスタルジックに描きながら、そこにある人間の感情の根源を描いていく作品になりそうだ。

他にも注目の脚本家や監督、俳優などが主演を務める秋ドラマの制作が続々と発表されている。肌寒くなり、どこか寂しさの募り始める秋の入り口を新しい物語とともに迎えよう。



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202