1. トップ
  2. 橋本環奈ヒロイン「新・朝ドラ」は何を描く? 脚本家の“過去作”から『おむすび』を分析

橋本環奈ヒロイン「新・朝ドラ」は何を描く? 脚本家の“過去作”から『おむすび』を分析

  • 2024.9.30

9月30日から放送が開始する連続テレビ小説『おむすび』。平成元年生まれのヒロインが、栄養士を目指して活躍する物語だ。脚本は根本ノンジ、制作統括は宇佐川隆史が担当する。この組み合わせは、人気を博したNHKドラマ『正直不動産』シーズン1の脚本家とプロデューサーでもある。

根本ノンジの作家性とは?

根本ノンジは、これまで『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』や『正直不動産』『パリピ孔明』など、漫画を原作とするコメディ作品を数多く手がけてきた。そのどれもが原作の魅力を守りながら、実写化する上で必要となる要素の付け足を的確におこない、漫画ファンとは別に、ドラマのファンを獲得してきた作品ばかりだ。

原作を踏まえた上で、映像にしたときにさらに分かりやすくなるように整理する構成力ももちろんだが、ひとえにセリフの力が大きいように思う。根本の脚本は、そのキャラクターと俳優の魅力が際立つセリフが多いのだ。

例えば、『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』であれば、新人警官・川合のヘタレな様子が際立つセリフ、本音が漏れている心の声が作品全体のコメディ要素を支えており、川合を演じた永野芽郁の柔らかな発声もあいまって、川合という人物の可愛らしさが表現されていた。

また、『正直不動産』では、新入社員・月下咲良の健気な態度がよく分かる勢いのあるセリフと、真正面から対話しようとする言葉選びが、月下の真摯な営業姿勢をよく表していた。福原遥の天真爛漫さといざというときの必死な様子が、セリフと組み合わさることで月下の魅力を際立てていた。

『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』『正直不動産』は原作があり、キャラクターがもともと決まっているとはいえ、キャラ設定を際立たせ、俳優の演技力、表現の幅を引き出すセリフが書けるのは、間違いなく根本ノンジの脚本の力だ。オリジナル作品となる『おむすび』でも、ヒロインのキャラクターと橋本環奈の演技力の融合を感じられるだろう。

『正直不動産』から考える『おむすび』の作風

undefined
『おむすび』第1週(C)NHK

『正直不動産』は、作中でさまざまな不動産知識が数多く出てくる。漫画であればセリフなどを読んでいくため、難しい不動産業界の知識を自分のペースで読んでいくことができるが、ドラマだとそうはいかない。ドラマの場合は、音声で説明を聞いていくことになるため、ドラマ版の『正直不動産』は、より分かりやすくシンプルなストーリーにしつつ、説明パートでは図表やテロップを使って説明がなされている。そしてシンプルなストーリーであっても、しっかりとした面白さが感じられるように、キャラクターの愛しいおかしみが追加されたことで、原作よりもコメディ要素を際立てた内容になっていた。

また、『正直不動産』は、コメディ感を強めながらも、各話の最後には不動産を通じた人の想いやつながりが感じられるような構成になっている。不動産知識を学ぶことができるお仕事コメディでありながら、そこにあるのは人の生活、未来への希望であることが分かるため、固くなりすぎず気軽に見られるドラマとして愛されていた。

朝ドラという枠は、毎日15分、1週間で75分の放送が、半年間続き、主人公の人生をじっくりと描いていくドラマ枠だ。『おむすび』は、阪神淡路大震災を経験したヒロインが、食に救われた経験から栄養士を目指し、平成という時代を変え抜けていく物語。『正直不動産』の制作チームであることを踏まえれば、栄養に関する知識と結が繋いでいく人と人のつながりを丁寧に描いていくのではないだろうか。

栄養士は、学校や施設などさまざまな場所で活躍しているにもかかわらず、これまでドラマでフューチャーされることのなかった職業の一つだ。また、食は健康の根幹であるにもかかわらず、誰しもが深い知識を持っているわけではない。これまで描かれることのなかった食と健康、そこから見える人の生活に想いを馳せる朝になることを期待したい。

NHK 連続テレビ小説『おむすび』
毎週月曜〜土曜あさ8時放送 NHKプラスで見逃し配信中



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202