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このアニメ、何がそんなにすごいのだろうか? 『ダンダダン』“驚異的な映像化”で海外でも絶賛、配信サイト上位をキープ

  • 2024.11.16

2024年10月期放送のテレビアニメで、最も話題をさらっている『ダンダダン』。龍幸伸の同名マンガを原作にした本作は、国内外から絶賛の声が相次ぎ、ABEMAのアニメランキングで1位、Netflixの国内ランキングでは4週連続で1位、グローバルランキングの非英語部門でも上位をキープしている。

一体このアニメ、何がそんなにすごいのだろうか。

ラブコメもオカルトも全部乗せ

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(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

『ダンダダン』は、高倉健のような渋い男が好みの女子校生、綾瀬桃(モモ)とオカルト好きの男子高校生、高倉健(オカルン)を中心にしたオカルトSFアクションラブコメディだ。ある日、モモがクラスメイトにいじめられていたオカルンを助けたことがきっかけで仲良くなり、さまざまな怪奇現象に巻き込まれていく。少年ジャンプ+に連載されている原作は、そんな2人の活躍を圧倒的な画力で描き出したことで話題を呼んだ。

本作の特徴は、心霊現象のようなオカルトにSFと不可思議なネタは何でも取り込むごった煮感だ。第一話ではモモはUFOにさらわれ、オカルンはターボババアという悪霊に呪われる。登場するオカルトネタも、日本のものから西洋由来のものまでなんでもありだ。

そして、本作はラブコメとしての側面もある。快活なギャルのモモとオタクのオカルンが織りなす不器用な恋愛模様もユニークで、大胆なアクション描写に挟まれる恋愛描写も刺激的。さらには、感動的なエピソードもふんだんにあり、とにかくあらゆる方向に幅広い物語展開を特徴としている。

そして、何より龍幸伸の驚異的に緻密な絵が多くのマンガファンの心を捉えた。とりわけアクションの見せ場で繰り出される見開きで、紙面をダイナミックに用いてスケールの大きな絵を描き、緻密な背景と大胆な構図で多くの人を魅了している。

ギャグをやったかと思えば、すさまじい画力でアクションを展開、そこから感動的なエピソードに持っていったかと思えば、ラブコメが始まる。ジェットコースターのように目まぐるしく変化していく展開に読者は興奮させられているのだ。

アニメならではの表現で原作をパワーアップ

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(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

そんな原作の魅力をテレビアニメはいかにパワーアップさせているのだろうか。

前述したように、この原作マンガは驚異的な画力を売りにしており、この絵の力をアニメで再現することは、相当にハードルが高いと考えられていた。しかし、そのハードルをクリアしているからこそ、本作のアニメは絶賛を受けているのだ。

アニメ版の展開自体は独自のアレンジはなく、原作に忠実だ。だが、アニメは独自のビジュアルセンスを多数発揮している。

まずは目をひくのは色使いだ。モモがUFOにさらわれると画面が青くなる。一方でオカルンがターボババアに追いかけられる場面では画面は赤い。その他、2話に登場する宇宙人「フラットウッズモンスター」の時はモノクロとなる。それぞれのオカルト現象に固有の色があり、それに巻き込まれた時の非日常感を強調するための演出だ。3話でモモがものや人にはそれぞれ魂の色があると言うが、それに呼応するように、各オカルトには固有の魂の色があるわけだ。

アニメならではのダイナミックな動きの描写も大変センスがいい。ターボババアに呪われ、その力を使えるようになったオカルンの高速アクションは常に圧倒的な迫力で描かれる。4話の街中で巨大なカニにモモとオカルンが追いかけられるエピソードでは、縦と横に縦横無尽に駆け巡るアクションが見る人を圧倒した。

しかし、派手なアクションだけでなく、日常の何気ない動作も非常に丁寧に描写されている。校門でオカルンを待つモモが、オカルンに身を寄せる動きなどにキャラクター性がよく表れており、ささいな動きにかわいらしさが表れている。

7話ではモモたちの同級生、白鳥愛羅に執着していた悪霊、「アクロバティックさらさら」(アクさら)の悲しい過去が描かれた。悪霊になった背景には、社会の理不尽があり、姿は醜くなっても、その魂は美しいことを、美麗な作画と演出力で表現してみせた。生前のアクさらによるバレエダンスのシーンの美しさは、多くの視聴者の涙を誘っただろう。

笑いと涙、アクションと日常、それらすべてが高レベルで噛み合わせ、原作の魅力を存分に引き出し、パワーアップさせることに成功しているのだ。

Creepy Nutsの楽曲とOP映像のクールさが海外で大ウケ

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(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

そんな『ダンダダン』は前述した通り、海外でも大変な人気を博している。アニメ化前から原作マンガが海外でも大きな表現となっていたが、やはりそのマンガに劣らない表現を映像によって実現したことで高く評価されていると言える。

また、映像センスのクールさもとりわけ海外のアニメファンの心をくすぐっている要因だ。特に、Creepy Nutsの主題歌『オトノケ』に合わせて流れるオープニング映像はセンスの塊と言えるカッコよさ。ハイレベルな作画はもちろん、色使いの巧みさと影のつけ方が独特だ。日本のアニメは「クールだ」と海外で言われることがあるが、やはり海外のアニメファンはこうした恰好いい映像表現を見たかったのだろう。

Creepy Nutsは今年の初めに、「Bling-Bang-Bang-Born」が世界的に大ヒットしたのも記憶に新しい。「Bling-Bang-Bang-Born」もテレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2シーズンのオープニング楽曲で、アニメ映像とともに世界に知られていったが、今回の「オトノケ」も映像との相性が抜群だ。

また、本作を手掛けたアニメスタジオが、サイエンスSARUだったのも海外の評価が高い一因だろう。同スタジオは、これまでも永井豪の伝説のマンガをアニメ化した『DEVILMAN crybaby』や、ハリウッドの人気実写映画のアニメ化『スコット・ピルグリム テイクス・オフ』といった作品で、特に海外で高く評価されてきた実力派のスタジオだ。

『ダンダダン』のオープニング演出を担当したアベル・ゴンゴラを始め、国際色豊かなメンバーが揃っており、多彩な感性をアニメーションで表現できる稀有なスタジオだ。サイエンスSARUの幅広い感性と高いレベルのアニメーション制作力があったからこそ、『ダンダダン』のアニメ化は成功したと言える。原作の魅力とスタジオの個性が見事に噛み合った結果と言えるだろう。

ダンダダン
ABEMAにて毎週木曜25時より無料放送
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/593-10
【(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会】


ライター:杉本穂高

映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi