1. トップ
  2. スキンケア
  3. 【ヤバい蚊よけが誕生】蚊を誘導しない遺伝子組み換えヒト皮膚細菌!

【ヤバい蚊よけが誕生】蚊を誘導しない遺伝子組み換えヒト皮膚細菌!

  • 2024.8.27
遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌が蚊よけに役立つと判明
遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌が蚊よけに役立つと判明 / Credit:Canva,ナゾロジー編集

花火大会やキャンプなど外での活動が増える時期には、私たちが大嫌いな存在「蚊」との戦いも再開されます。

蚊よけスプレーはよく知られた対抗策ですが、最近、新たな方法が考案されました。

アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)に所属するオマール・S・アクバリ氏ら研究チームは、蚊よけに役立つ「遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌」を開発したのです。

実験ではこれをマウスに塗布することで、天然の皮膚細菌と比べて、蚊の誘引力を最大64.4%も減少させることに成功しました。

研究の詳細は、2024年7月30日付の学術誌『PNAS Nexus』に掲載されました。

目次

  • 蚊を引き寄せる原因は「人間のヒト皮膚細菌」
  • 遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌をマウスに塗ると蚊よけになる

蚊を引き寄せる原因は「人間のヒト皮膚細菌」

蚊が近くを飛ぶときの「プーン」という耳障りな音、刺された後にしばらく続くかゆみは、私たちをイライラさせます。

さらに蚊は、マラリアやデング熱、黄熱病など、多くの致命的な病気を媒介します。

私たちに「イライラ」と「かゆみ」、「病気」をもたらす蚊
私たちに「イライラ」と「かゆみ」、「病気」をもたらす蚊 / Credit:Canva

そんな「厄介な敵」である蚊は、私たちが吐き出す二酸化炭素、体温、そして皮膚細菌叢に引き寄せられ、血を吸います。

そのうち二酸化炭素と体温は、蚊を人間がいる方向へと誘導します。

しかし、蚊が人間の存在を把握できたからといって、それがすぐに吸血に結びつくわけではありません。

吸血可能な部位である皮膚に蚊を導くのは、人間の皮膚細菌叢なのです。

人間の皮膚には約1000種類もの微生物が存在しており、様々な役割を果たしています。

特にブドウ球菌属(学名:Staphylococcus)コリネバクテリウム属(学名:Corynebacterium)は人間の皮膚に最も多く存在する細菌種の1つであり、ヒト皮膚細菌叢の45~80%を占めています。

そしてこれらのうちのStaphylococcus epidermidisとCorynebacterium amycolatumは、蚊を引き寄せることで知られる乳酸の一種「L-(+)-lactic acid」とそれが発する匂いを生成すると考えられています。

つまりこれらの皮膚細菌が乳酸を生成しなければ、私たちは蚊に襲われない可能性があります。

アクバリ氏ら研究チームは、この分野に焦点を当て、新たな蚊よけ方法を開発しました。

遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌をマウスに塗ると蚊よけになる

まず研究チームは、遺伝子操作により乳酸の生成を大幅に低減させた2種類のヒト皮膚細菌(Staphylococcus epidermidisとCorynebacterium amycolatum)を開発しました。

次に、マウス実験によってこれら遺伝子組み換え版ヒト皮膚細菌の効果を試すことにしました。

生きたマウスの毛を剃った部分に、遺伝子組み換え版ヒト皮膚細菌と、天然(遺伝子組み換えなし)のヒト皮膚細菌を塗布し、その違いを観察したのです。

ヒト皮膚細菌を塗られたマウスは、その後14日間、毎日10分間だけ3種類の蚊(ネッタイシマカ、ハマダラカ、イエカ)にさらされました。

これらの蚊はいずれも、マラリアやデング熱などの病気を蔓延させる原因となっています。

遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌が、蚊の誘引力を64.4%減少。しかも効果は11日間続く
遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌が、蚊の誘引力を64.4%減少。しかも効果は11日間続く / Credit:Canva,ナゾロジー編集

そして実験の結果、塗布3日後から、遺伝子組み換えの細菌は、天然の細菌と比較して、蚊の誘引力を最大64.4%減少させることが分かりました。

しかも、その蚊よけ効果は11日間も持続したのです。

生きたヒト皮膚細菌が定着して効果を発するまでには、いくらか時間がかかるようですが、その分1度塗布すれば効果が長持ちするというわけです。

また、蚊が遺伝子組み換えの細菌を塗ったマウスにとまった場合でも、そこから吸血せずに立ち去る割合が多いと分かりました。

ちなみに、現在幅広く使用されている蚊よけスプレーの成分「ディート」は、蚊の誘引力を90%以上減少させます。

かなり強力ですが、4~8時間しか効果が続かないというデメリットがあります。

そのため、今回開発された遺伝子組み換えヒト皮膚細菌を発展させるなら、従来の蚊よけ剤とは異なる「長持ちする蚊よけ剤」を生み出すことに繋がるかもしれません。

ただ、遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌を自分の皮膚に塗ることを想像すると、積極的に使いたいとは思わないかもしれませんね。

参考文献

Engineered microbes may find use in living, long-term mosquito repellent
https://newatlas.com/science/engineered-bacteria-mosquito-repellent/

Engineered microbes repel mosquitoes
https://www.eurekalert.org/news-releases/1052659

元論文

Engineered skin microbiome reduces mosquito attraction to mice
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae267

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる