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パリオリンピックでも物議を呼んだ「プラントベースの食事」についてプロが解説

  • 2024.8.26

プラントベースに関して日本と欧米では温度差がある

2024年パリ五輪の選手村で提供されたエグゼクティブ・シェフ、シャルル・ギロワによるプラントベースメニュー。Photo_ Reuters/AFLO
OLYMPICS-2024/FRANCE-FOOD2024年パリ五輪の選手村で提供されたエグゼクティブ・シェフ、シャルル・ギロワによるプラントベースメニュー。Photo: Reuters/AFLO

パリオリンピックの選手村で提供される食事が取り沙汰されたとき、日本では「プラントベースで十分な栄養が摂れるのか」が論点となっていたが、現地ヨーロッパではどうだったのだろう?

「栄養面よりも、美味しくないことが問題視されていました。グルメ、プラントベース、ローカルをコンセプトに有名シェフが監修していたこともあって、期待値が高かったのではないかと。選手村の食事は50%プラントベースが目標だったと聞いていますし、それなりに肉や魚も提供されていたと思います」。そう話すのは、プラントベースの食を中心にしたライフスタイルを提唱するヴェルヌ華子さん。

テニスの男子シングルスで悲願の金メダルを獲得したノバク・ジョコビッチ選手をはじめ、プラントベースのライフスタイルを送るアスリートが多い欧米と日本では、この話題に対して少なからず温度差があるようだ。

栄養素の質・量ともに豊かなプラントベースの食生活

「プラントベース=栄養が偏る、と思われがちですが、実際はそうではないのですごく残念です」とヴェルヌ華子さん。特に危惧されやすいタンパク質についても、プラントベースの食事はどの食事スタイルより必要なタンパク質が摂れることがわかっているし、メリットも多いのだそう。

「動物性にせよ植物性にせよ食材の場合、タンパク質だけを摂取するのは不可能で、必ずほかの栄養素も一緒に摂ることになります。例えば、肉は飽和脂肪酸がセットになり、野菜だと食物繊維や抗酸化物質がセットになってくる。植物性タンパク質と一緒に摂取することになる栄養素は、動物性タンパク質より体にいいものが多いのです。コレステロールや飽和脂肪酸の摂取量は少なくてすむから血流がよくなり、筋肉に栄養がいきわたりやすく、運動のパフォーマンスも上がります」

アスリートにプランドベースを選択する人が増えているのも納得。日常生活においても、筋肉の損傷や酸化が軽減されて疲労回復が早くなるのは、大いにメリットとなるはず。「タンパク質に限らず、プラントベースの食事は栄養素のバリエーションが豊富で、質・量ともにたっぷり摂れる。決して不健康な食生活にはならないことを知ってほしいです」

食を選ぶ感覚を養うのにプラントベースはうってつけ

ヴェルヌさんファミリーも大好きなチリシンカン(メキシコ料理のチリコンカルネのプラントベース版)。キドニービーンズ入りでタンパク質もたっぷり。Photo_ Courtesy of Hanako Vernhes
ヴェルヌさんファミリーも大好きなチリシンカン(メキシコ料理のチリコンカルネのプラントベース版)。キドニービーンズ入りでタンパク質もたっぷり。Photo: Courtesy of Hanako Vernhes
炒め物にローストしたひまわりの種をトッピングし食感アップ。野菜料理のポイントは食材の種類を豊富に使い、満足感を出すこと。Photo_ Courtesy of Hanako Vernhes
炒め物にローストしたひまわりの種をトッピングし食感アップ。野菜料理のポイントは食材の種類を豊富に使い、満足感を出すこと。Photo: Courtesy of Hanako Vernhes

ベジタリアンやビーガンも、いまいち浸透しない日本。その背景を、ヴェルヌ華子さんはこう分析する。「多民族で構成された欧米では宗教的な理由などで食べないものがあることに対して寛容ですが、日本は単一民族だから食の多様性がない。戦後、食の西洋化で肉や乳製品が体を強くするものとしてすり込まれ、そこにとどまっている気もします」。一汁三菜が基本で、主菜から肉や魚が欠けると不健康だと思いがちなのは、日本人のあるあるかも。

一方で、「日本には七草粥のような四季に基づいた食習慣があり、野菜をしっかり摂る食文化が根づいているのはいいこと」だとも。日本古来の食生活と旬の野菜を積極的に摂るプラントベースは親和性が高いのでは……。「プラントベースは動物性を一切排除ではなく、植物性をもっと摂ろうという“eat more plants”がコンセプト。健康のためでも、動物愛護環境保全のためでもいい、自分なりの理由を見つけられたら続けていけるはず。食を選ぶことは、自分のアイデンティティを確立することにもつながります」。動物性ゼロにとらわれず、自分が取り入れやすいバランスでOK。プラントベースで体や地球にも好循環を。

話を聞いたのは……

ヴェルヌ華子

ウェルネスアカデミー「Plantful Journey」創設者。プラントベース・ウェルネスコーチとして、プラントベース料理のワークショップやケータリング、イベント、レシピ開発などにも携わる。Youtubeインスタグラムでもプラントベースのライフスタイルを発信。2023年には日本人で初めて、ル・コルドンブルー・パリのプラントベース料理ディプロムを取得。約10年パリで暮らし2022年からはミラノ在住。@hanako_plantful_journey

Text: Chiho Ejiri Editors: Makiko Yoshida, Rieko Kosai

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