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ヘアカラーを武器に、パク・スジュがアジア系アメリカ人女性とともに切り開く多様な世界【戦うモデルたち】

  • 2024.8.26
第77回カンヌ国際映画祭にて『憐れみの3章』(2024)のレッドカーペットに登場したモデルのパク・スジュ。Photo_ Kristy Sparow / Getty Images
"Kinds Of Kindness" Red Carpet - The 77th Annual Cannes Film Festival第77回カンヌ国際映画祭にて『憐れみの3章』(2024)のレッドカーペットに登場したモデルのパク・スジュ。Photo: Kristy Sparow / Getty Images

「この業界は、例えば韓国人や日本人を“アジア人”で括る傾向にあります。つまり、良くも悪くも個人のアイデンティティを無視して過度に単純化して十把一絡げにするのです。おそらくそれが、私が髪をブリーチした最大の理由です。私のプラチナブロンドは、トークニズム(公正に見せるふりをする形式主義)やタイプキャスティングに対抗する手段なのです」

かつてUS版『VOGUE』にこう語ったパク・スジュは、プラチナブロンドのロングヘアがトレードマークのスーパーモデルだ。1986年、韓国・ソウルに生まれ、10歳の時に一家でアメリカ・カリフォルニア州アナハイムに移住した彼女は、ベイエリアの学校で建築を学んでいた学生時代に、ヴィンテージショップで買い物中にスカウトされた。そしてそのときのことを、2013年にカルチャー誌『CUT』に対し彼女はこう振り返っている。

「カリーヌ・ロワトフェルドととの出会いが、私をモデルへと導いてくれました。私をとても気に入ってくれた彼女が、カール・ラガーフェルドとトム・フォードに引き合わせてくれたのです」

デビュー直後からシャネルCHANEL)のグローバルアンバサダーに抜擢された彼女は、その後アジア系モデルで初めてロレアル パリL'ORÉAL PARIS)のキャンペーンモデルを務めることに。ファッション業界でのアジア系モデルの地位を押し上げ、新たな活路を見出した彼女は、当時パイオニアとして世界の注目を一気に集めた。

内なる力をヘアカラーに映して

2014年NYにて撮影。Photo_ Chelsea Lauren / Getty Images
Rebecca Minkoff - Backstage - Mercedes-Benz Fashion Week Fall 20142014年NYにて撮影。Photo: Chelsea Lauren / Getty Images

そんな彼女のトレードマークは、頻繁に変えるヘアカラーだ。デビュー当時のプラチナブロンドから現在のエレクトリックブルーまで、ヘアカラーはファッションの一部であり、自身の内なる哲学を表現するツールだという。

「私がデビューした当時から、業界内に多くの変化が起こりました。仕事でのSNS活用は当たり前になり、ファッション撮影でもストーリーの本編以外に舞台裏の撮影が組まれるなど、複数の撮影が同時進行するのが通常になっています。さらに大きな変化が、これまで皆が我慢していたハラスメント行為に対し、声を上げるムーブメントが起きたこと。ファッションも環境重視にシフトし、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)のもと、あらゆるボディサイズや人種のモデルにスポットライトが当たるようになったことです」

と、自身のデビュー当時からの業界の変化を『L'OFFICIEL』誌にこう振り返ったパク。そんな彼女は、自身のインスタグラムからメンタルヘルスやアジアンヘイト、そしてフェミニズムについてなど、力強いメッセージをたびたび発信する活動家としても知られるようになった。

「以前展開したスポーツマックスSPORTMAX)とのコラボレーションでは、私の哲学の一部である“激動の20年代”をインスピレーションソースにしたものです。“狂騒の20年代”とも言われたこの時代は、あらゆる種類の新しさやモダニズムや表現の自由があふれ、文化的にも芸術的にもダイナミズムに彩られた時代でした。そして最も重要なのが、女性の参政権と権力を強化する始まりだったこと。私は、この時代が持つ“力”にいつも強く惹かれていたのです」

個々の力を集結して社会を変えるために

2024年6月、パリにて行われたウェールズ ボナー(Wales Bonner)のショーに出席。Photo_ Pierre Suu / Getty Images
Wales Bonner: Photocall - Paris Fashion Week - Menswear Spring/Summer 20252024年6月、パリにて行われたウェールズ ボナー(Wales Bonner)のショーに出席。Photo: Pierre Suu / Getty Images

そんな彼女は、女性のエンパワーメントをテーマに、特にアジア系アメリカ人の若い女性を対象とした奨学金制度「Soo Joo Park Scholarship for Asian American Women」をBold.orgで立ち上げ、アメリカで困難に直面する同胞のために、モデルのキャリアで築いた富と名声を惜しみなく提供している。

「正直に言うと、私は自分自身をよりよく理解するため、いわゆる“自分探し”をこれまでたくさんしてきました。そして、今の私を形成する重要な要素の一つが、“アジアからの女性移民”だということを自覚するようになったのです。アメリカという新世界で、マイノリティの自分が足場を見つけるのは簡単ではありません。そして成長するにつれ、一人ではやれることに限界があると感じることが多々ありました。だからこそ、同胞と連帯し、互いをサポートしあうことが重要だと思うようになったのです」

CFDA(アメリカ・ファッション・デザイナー協議会)のインタビューで、奨学金立ち上げの理由をこう語ったパクは、現在モデル業と並行してミュージシャンとしても活躍するなど、その才能を遺憾無く発揮。さらに、デビュー当時から「モデル業以外にもやりたいことがいくつかあるので、常に冒険したいと思っていた」と続ける彼女は、自身の活動家としての信念についてこう続けた。

「私は、NYのアジア系低所得世帯の若者を支援する団体「APEX for Youth」と「Burdock」というアウトリーチプログラムに参加しており、その一環としてフォトグラファーのYu Tsaiと多様性と業界におけるアジア系アメリカ人モデルについてライブで対談しました。そのとき、この現代社会の内外で生きる自分が何者であるかを知り、理解することこそが個人が持てる強みを発揮するための第一歩だと確信したのです。私は、アジア系アメリカ人モデルとして、人々の持つ固定観念の壁を打ち破りたいと思っています。私にとってこのヘアカラーは、そのための手段の一つなのです」

Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba

CANNES, FRANCE - MAY 22_ Cindy Bruna attends the
PARIS, FRANCE - MARCH 05_ (EDITORIAL USE ONLY - For Non-Editorial use please seek approval from Fashion House) Cora Corre and Vivienne Westwood attend the Vivienne Westwood Womenswear Fall/Winter 2022/2023 show as part of Paris Fashion Week on March 05, 2022 in Paris, France. (Photo by Pascal Le Segretain/Getty Images)
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