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吉高由里子が石山寺での逢瀬について語る「当時は感性がむき出しに先行していた時代で、それはそれで美しいんじゃないかな」<光る君へ>

  • 2024.8.25
「光る君へ」で主人公・まひろを演じている吉高由里子 (C)NHK
「光る君へ」で主人公・まひろを演じている吉高由里子 (C)NHK

【写真】女房装束を身に纏い、内裏の廊を歩く吉高由里子“まひろ”

吉高由里子が主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第32回「誰がために書く」が8月25日に放送された。大石静が脚本を務める同ドラマは、平安時代を舞台に、のちに世界最古の女性による小説といわれる「源氏物語」を生み出した紫式部の人生を描く物語。

WEBザテレビジョンでは、同ドラマで主人公・紫式部(まひろ)を演じている吉高にインタビューを実施。撮影での苦労や今後の見どころなどを語ってもらった。

皆さんに愛されるキャラクターになればいいなと

――最初にオファーを受けられたときは「パニックで…」といったコメントをされていましたが、ドラマの撮影もかなり進んでいるかと思います。先ほど行われた藤原道長役の柄本佑さんの取材会では「今はめっちゃ紫式部ですよ」みたいなこともおっしゃられていましたが、撮影が進んでいくにつれて心境の変化や手応えみたいなものはありますか?

佑くん、嫌なこと言うねぇ(笑)。ハードル上げるようなこと言い残して行かないでほしいんだけど(笑)。最初に発表されてからもう2年以上たつのかな? 今も絶賛撮影中なのですが、一つの作品にこれだけ長く携わったのは初めてなので…。生まれて初めて経験することって大人になってからなかなか出会えないじゃないですか。でも今回こういう機会をいただいて、初めての一歩を今も継続している感じです。

“私が式部よ”なんて思ったことないですけど(笑)。皆さんに愛されるキャラクターになればいいなと思いながらやっています。自分の中で、目で見てわかる成長っていうのは「書」かなと思いますね。作品が始まる半年ぐらい前からコツコツ練習してきました。

第2回(1/14放送)から本役に変わって、早速文字を書くシーンがいっぱいあったんですけど、今見ると目も当てられない字だったと思いますね(笑)。でもそのときはまひろも10代で、今は30代後半から40代前半を演じているので、役と一緒に自分も成長したのかなと。向き合った時間だけちゃんと応えてくれるものだなと思いました。

「光る君へ」第32回より (C)NHK
「光る君へ」第32回より (C)NHK

すごく相棒感が強いというか、一緒に挑戦している感じがうれしいです

――まひろとして文字を書いていたときと、紫式部として「源氏物語」を書くときとで文字が変わったり、書の練習が変わったりとかはありましたか? また、書道指導の根本知先生から何かアドバイスなどはありましたか?

まひろとしてはかなが多い人なので、かな文字を中心にやって、道長との文通では漢字をやったりしましたけど、これからはかなと漢字を両方やるので、集大成が始まるなという感じがありますね。「源氏物語」はかなも漢字も両方出てきますし、現代ではあまり使われていない変体仮名も出てきますし…。

不思議なのが、その変体仮名も読めるようになってきちゃってるんです。もう身に付いちゃってるのが怖い(笑)。書に対するプレッシャーもありましたけど、わからないものを覚えていく楽しみもありましたし、できないことができていくという、10代の頃に見ていたような自分の成長が30代半ばでまた経験できるとは思ってもなかったので、すごくワクワクすることもあります。ただ、それを本番でやらないといけないので、公開テストみたいな感覚でおびえながらやっていますが(笑)。

根本先生は私の字の癖を理解したうえで「こっちの字の方が相性よかったね」とか「ここはこういうふうにやってみよう」とかいろいろ組み合わせて字を考えてくださるので、ゴルフでいうキャディーみたいな感じで頼もしいです。

書ってすごく孤独で、練習時間は膨大なのに撮る時間は30秒もしないうちに終わってしまったりするんですけど、家で練習しているときの孤独さとかを一番わかってくれているのは根本先生かなと思うので、すごく相棒感が強いというか、一緒に挑戦している感じがうれしいですね。

――ドラマの前半では書以外にも琵琶や宋の言葉などいろいろと挑戦されましたが、その中で一番苦戦したのは何ですか?

いっぱい挑戦しましたね。乗馬もやりましたし…。私、一番初めの会見のときに「馬に乗って現場に入りたい」とか言っていたんですね。今、そのときの私に「ふざけんなよ!」って言いたいくらい、乗馬って難しかったです。やっぱり馬の感情の起伏もあるし、ジョッキーってすごいんだなと改めて思いました。

でも一番苦戦したのは、やっぱり書かな。思ってもない方向に線が行ってしまったりするんですよ。あとは、やっぱりみんなが注目している部分でもあるし、この役をやる醍醐味でもあると思うので。きっと書に対する視聴者の方の目線も他とは違うと思うので、そこはやっぱり緊張しますね。

「光る君へ」第32回より (C)NHK
「光る君へ」第32回より (C)NHK

――後半で何か挑戦したことはありますか?

後半は子どもとの向き合い方とかですかね。自分の幼いころと父の為時(岸谷五朗)との関係性を、自分も子どもにも同じことしちゃっていたりするし、自分だけのことならできる、できないの理解もあるかもしれないけど、人対人となると、何でこうなるんだろうと思ったり…。子どもを育てるって初めてのことがいっぱいですからね。

あとは、物語が思い浮かぶときと、全く思い浮かばないときとの作家としての悩みが後半は出てくるのかなと思います。

石山寺で一夜をともにした吉高由里子“まひろ”と柄本佑“道長” (C)NHK
石山寺で一夜をともにした吉高由里子“まひろ”と柄本佑“道長” (C)NHK

道長の子どもがいるからどうだとか思える次元じゃないと思います

――第27回(7/14放送)ではまひろが道長と石山寺でばったり出会い、一夜をともにしました。道長との子を身ごもる展開についてはどのように感じましたか?

話題になってましたよね。石山寺の人がSNSに「参籠所で添い寝しないでください」って書かれたりして(笑)。

まぁ人間ですからね。そういうこともあるんじゃないかなと。不倫不倫って騒がれる世の中になってしまったけど、みんな正義感との戦いになっているというか。そのルールって平和であるためだけど、自分の感性の豊かさを削っていくものなのかなとも思ったり…。でも、当時は感性がむき出しに先行していた時代で、それはそれで美しいんじゃないかなと思います。

――まひろはもともと「正妻でなければ嫌だ」と思っていましたが、道長との子を産みました。そこには「正妻ではないけれど道長との子を持っている」っていう自信みたいなものがあったと思いますか?

それはないと思います。宣孝(佐々木蔵之介)の妻になっている時点でもう正妻とか妾とかのこだわりはなくなっていると思いますね。やっぱり若い頃って経験がないからこそ想像でものを言えるというか、自分の可能性も多く見積もっちゃったりするんだろうなと思うんですけど、生きていてある程度年齢を重ねたら、そうはなれない難しさっていろいろあるじゃないですか。私たちの時代でもそうだと思うんですけど。そういうのが分かったんでしょうね。“自分の人生はもうこれ以上ない”というピークが分かったんだと思うんです。

でも親とかに心配かけたくないという気持ちもあったと思いますし、妾で養ってもらう関係とかもすごく嫌だったと思うんですけど、もうそこしか選ぶ選択肢がないところまできてたんじゃないかな。最後はちょっと申し訳ないけど、すがる思いでもらってくれるっていう宣孝さんのところに行ったような気がしますから。道長の子どもがいるからどうだとか思える次元じゃないと思いますね。

「光る君へ」第32回より (C)NHK
「光る君へ」第32回より (C)NHK

まひろにとってはすごく大きい一言だったと思いますね

――まひろと道長は“ソウルメイト”という絆でつながっていますが、ソウルメイトとはどんな存在だと思いますか?

道長とまひろはもう恋愛とかを越えている次元なので、多分“よりどころ”なんですかね。お互い光と影のような存在で、まひろが光っているときは道長が影で支えてくれていて、道長が光っているときはまひろが影で支えている、みたいな関係なんじゃないかな。

――柄本さんとは「知らなくていいコト」(2020年日本テレビ系)でも共演されていましたが、撮影現場はどんな様子ですか?

優美な動き方が多いので、現場がドタバタ激しく動いている感じではないですが、逆に大変なこともたくさんあります。今、まひろは内裏に上がって藤壺で女房として働いているのですが、為時邸にいたときの方がはるかに動きやすいというか。まひろの役としてもそうですけど、私自身も女房装束を着ていると気軽に動けなくて。しかも幅が大きいので、どこにいて何をしているかが全部ばれてしまうんです。本当にプライベートがないですね(笑)。

――第32回で父・為時がまひろに「おまえが女子(おなご)であってよかった」と言うシーンがありましたが、そのシーンはどのように感じながら演じられましたか?

あそこはすごく大事なシーンでしたね。今まで「おまえが男であったなら」としか言われてこなかったまひろがやっと認められたというか。自分のことを一番認めてもらいたい人がお父さんだったと思うんですね。お父さんの遺伝子があったから作家として注目される人物になるわけですし。

そんなお父さんから「おまえが女子であってよかった」と言われて、やっと“生まれてきてよかった”と思えた瞬間なんじゃないかな。まひろにとってはすごく大きい一言だったと思いますね。

【写真】女房装束を身に纏い、内裏の廊を歩く吉高由里子“まひろ” (C)NHK
【写真】女房装束を身に纏い、内裏の廊を歩く吉高由里子“まひろ” (C)NHK

自分で用意せずとも第2章に押し出されたような感じでした

――「源氏物語」は女性だからこそ書ける文学だと思いますか?

紫式部が生きていたら聞きたいですよね(笑)。でもそうじゃないかな。政をしていない女性としての視点だから見えた状況とか関係性があったと思うし。まぁ男性版式部が書いていたら、また全然違う話になっていたと思うし、それはそれで話題にはなっていたと思いますけどね。

――いよいよまひろが「源氏物語」を書き始めるということで、視聴者も楽しみに待っていたと思います。第21回(5/26放送)では「枕草子」が誕生するシーンがすごく美しく描かれていて、ききょう役のファーストサマーウイカさんと定子役の高畑充希さんも「あのシーンはすごく試行錯誤して出来上がった」とお話されていましたが、その辺りも踏まえて「源氏物語」が誕生するシーンや今後について見どころを教えてください。

こっちだって負けないぐらいきれいなしつらえのやつを仕込みましたよ(笑)。帝に献上するためにみんなでね。一冊の本ができるまでの過程を、本当に時間をかけて丁寧に丁寧に撮ったので、そこは見ていて面白いんじゃないかなと思います。

きっと第1回から第31回まではまひろが自宅の外で経験したことが「源氏物語」につながっていく、その前書きみたいなものだったんじゃないかな。だからみんなが分かりやすいエピソードを散りばめていたんだろうなと思っていて。

「源氏物語」を読んでいない人もみんなが“そういうことか”と思える話が物語になっていくんじゃないかなと思います。読んでいない人も一緒に楽しめるように今まで種を蒔いていて、ここから一つずつ花を咲かせていくのかと思うと“なるほどね!”と思いますね。

いよいよ第2章が始まって、衣装やいる場所も変わりましたし、毎日見ている風景もガラッと変わって、自分で用意せずとも第2章に押し出されたような感じでした。皆さんにも放送を楽しみにしていただきたいですし、私もすごく楽しみです。

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