1. トップ
  2. エンタメ
  3. コンカフェのコンセプトが複雑すぎる…他人事ではない「ストーカー規制法」の難しさとは? 『新宿野戦病院』第8話考察&評価

コンカフェのコンセプトが複雑すぎる…他人事ではない「ストーカー規制法」の難しさとは? 『新宿野戦病院』第8話考察&評価

  • 2024.8.24
『新宿野線病院』第8話 ©フジテレビ

小池栄子と仲野太賀がW主演のドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)が現在放送中。宮藤官九郎の最新作である本作は、新宿歌舞伎町にたたずむ「聖まごころ病院」を舞台に、様々な”ワケあり”の患者が訪れる。今回は、第8話を多角的な視点で振り返るレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
———————-
【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。

『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ
『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ

【写真】仲野太賀、岡部たかし達がコンカフェ嬢にノリノリ…ドラマを振り返る劇中カット。ドラマ『新宿野戦病院』劇中カット一覧

日本語のナレーション、しかも任侠映画風味で始まった今回は、とにかく情報量が多すぎてクラックラするほどだった。

「仁義なき戦いのテーマ」がBGMで鳴り響くなか、歌舞伎町を練り歩くのは、白木さん(高畑淳子)。「極道の妻(おんな)たち」さながらの気迫で、夫(おかやまはじめ)が入り浸っている敵地(と思い込み)、ハプニングバーに乗り込み空振りする。

堀井(塚地武雅)の母、房江さん(藤田弓子)は頑張ってリハビリ中だ。認知症だが、頭がシッカリしているときも多く、「私が死んだらあの子はひとりになっちゃうのよ。誰があの子の世話をしてくれるの」と、堀井を心配するのだ。

ヨウコ(小池栄子)の、「死んだら心配できんのじゃけ、死なん心配せえ」という言葉にグッと胸にくる。頑張って生きろ、かあちゃん!

ちなみに冒頭、ヨウコが問いていた練習課題「逆流性食道炎の誘因として、ふさわしくないもの」

A.肥満 B.高齢 C.猫背 D.萎縮性胃炎

の答えがうやむやになったまま話が進むが、消去法で考えると答えはDである。

『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ
『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ

今回のキーパーソンは白木の夫…ではなく、コンカフェで働く少女・かえで(田中美久)だ。店の常連客からストーカーされてしまう。

まず、コンカフェ=コンセプトカフェのコンセプトの複雑さにビビる!

かえでのストーカー事情を聞き、警察官の岡本(濱田岳)が、調査と警備を兼ねてコンカフェに行く。そのコンセプトは次の通りだ。

「アイドルとその彼氏というテーマなので、自分の指名した女の子とは喋ってはいけない(アイドルは恋愛禁止だから)。だから自分の彼女が、見知らぬ男にモテているところを横目で見てジリジリしながら、自分は他の女の子と楽しくおしゃべりする。ただ、その女の子にも彼氏がいて、その嫉妬の視線を浴びつつ、本命の彼女にもヤキモチを焼かれる」

凝りまくりではないか。いっそ企画会議に入りたいぞ! 設定を自分の中で消化するまで時間かかりそう。コンセプトカフェって理解力がいると知った。

『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ
『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ

さて、ストーリーのカギとなったのが「ストーカー規制法」。

恋心を商売道具にする系のサービス業はもちろんだが、個人が配信でアピールできる昨今、誰がどんなきっかけで、どう距離感を間違え迫ってくるか、本当にわからない。決して他人事ではないので、このドラマを機に学んでおくのもいいだろう。警察庁の公式HP「ストーカー規制法」のページには、ストーカーとみなされる基準や「防犯の心構え」も記載されているので、ぜひとも参考にしていただきたい。

ちなみに、ストーカー規制法に引っ掛かる行為は次の8つ。

・つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつきなど
・監視を告げる行為
・面会や交際の要求
・乱暴な言動
・無言電話、連続した電話、ファクシミリ、電子メール、SNSを繰り返し送る行為
・汚物などを送る
・名誉を傷つける
・性的羞恥心を侵害する

『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ
『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ

警察官の岡本(濱田岳)は、かえでを「彼女」と思い込むストーカー男・後藤和真(北野秀気)に接触。つきまといをやめるよう、机の下で警察バッチを見せながら「警告」をする。

後藤に、

警告無視→公安委員から接触禁止命令→違反したら2年以下の懲役または200万円以下の罰金

となることを告げるのだ。できる男だ、岡本!

「警告」は相手が嫌がっていることを知らせ、凶悪犯罪への発展を阻止する目的がある。が、法的な強制力はない。逮捕ではないので拘束できないのだ。かえでから相談を受けた南舞(橋本愛)が、これに危機感を覚え、岡本に苛立つシーンがある。

その間で見ている享(仲野太賀)が

「ボランティアって、善意でしょ? 善意って裏目に出るもんだし、その責任を背負えないんなら、かかわらないのが究極のボランティアじゃないのって」

と、リップを塗りぬりしながら言うのだ。イラッと来るが、ボランティアのイメージあるあるなのかもしれない。演じる仲野太賀がうますぎて、『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系、2016)の山岸までもう一度見たくなる。ちょうど絶賛アマプラ無料配信中だ。

ストーカー案件は「好意があるかないか」という非常に微妙なラインがあるので、警察が介入するまでのグレーゾーンが広く、民間のNPO法人は重要な役割を果たす。相談室やシェルターを用意するなど、様々な動きをしてくれるところがある。

享には申し訳ないが、冷静に事件に向き合う岡本と舞はまさにナイスカップルといえよう。時に意見が違えども、議論しつつ、歌舞伎町の平和を守ってほしい。

来週の予告では、2人がいい感じになるシーンがあり、非常に楽しみだ。ただ、同時に、岡本が舞のボランティアの制服を持ち、悲しそうな顔で歌舞伎町をダッシュする姿も映し出されていたので、心配でもある。

『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ
『新宿野戦病院』第8話より ©フジテレビ

第8話のストーカー問題は思わぬ方向に進んだ。ストーカーしていた後藤は反省し、かえでの新たなスタートのため、コンカフェを訪れ謝罪。そしてちょうど爆破事件に巻き込まれてしまうのである。

犯人は「死にたかった、死刑になりたかった」という理由で爆破し、自らも重体となる。命に優先順位はないが、ドラマでありながら、傷ついた多くの人たちを見ると、非常に複雑な思いがし、ヨウコと警察によるやり取りは、非常に重かった。

いつにも増して、コミカルとシリアスの差がくっきりとついた今回。ヨウコとはずき(平岩紙)が、良いバディになっているシーンは救いであった。

予告では、はずきの「婿養子じゃなくて、嫁ぐの!」と言うセリフがあったが、もしかして朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)の梅子さんと同じ、実家とオサラバするパターンなのか?

「では、ごきげんよう!」からの障子ピシャーッ、ならぬ、扉バターンを期待したい。

(文・田中稲)

元記事で読む
の記事をもっとみる