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簡単なのに完成度が高すぎる「汁なし担担麺」レシピ。「お店みたいな味・見た目」を作るための秘訣が満載

  • 2024.8.24
ダ・ヴィンチWeb
『一つ星中華 エスサワダ秘伝 旨さが違う 上流中華』(澤田州平/主婦の友社)

日本の町に根付いた「町中華」や、中国人が自分たち好みの味で作った「ガチ中華」のブームが続く昨今。中華料理のレシピ本も多種多様なものがヒットしている。

そんな中、また新しいタイプのレシピ本として目に留まったのが、『一つ星中華 エスサワダ秘伝 旨さが違う 上流中華』(澤田州平/主婦の友社)。ミシュランガイド京都・大阪で6年連続で1つ星を獲得する人気中華料理店「中国菜エスサワダ」の総料理長のレシピ本だ。

自身の感性を取り入れ、クリエイティブな本格中華を提供してきた著者の本だけあり、本書には「食材そのもののあるべき舌ざわり、歯ごたえ、風味、それらをきちんといかした本当においしい中華」のレシピがズラリ。ミニトマトを使った焼き餃子や、ステーキ肉を使った青椒肉絲などなど、面白い料理が数多く並び、味の決め手となる調理のテクニックは“サワダマジック”として紹介されている。

その中から、家庭でも気軽に作れそうなレシピを何品かピックアップし、実際に作ってみながら本書の魅力をレビューしていく。

完成度の高さに驚く「汁なし担担麺」

まず作ってみたのは、みんな大好きな「汁なし担担麺」。特別な調味料は甜麺醬くらいなのだが、レシピを見ると「しょうゆ……1g」「ラー油……7g」など、分量が1g単位で指定されているのにまず驚く。これは本書のほかのレシピにも共通する特徴で、非常に繊細なレベルまで味が作り込まれている証拠といえるだろう。

作り方の手順は、「炸醬(味噌を油で炒めた肉味噌)を作る」「器の中でねり白ごま(1人前45g!)をベースにしたごまペーストを作る」「茹でた麺を器の中でペーストと混ぜ、もやしや炸醬、パクチーをのせ、ねぎを散らし、ラー油を回しかけ、山椒、ごまを散らす」といった具合だ。工程はいくつもあるが、洗い物が少なく済む手順が考えられている点にも感心させられた。

そして完成した料理は、たっぷり散らしたねぎがラー油の海に浮かぶ粉雪のようで、何とも見た目が美しい。食べてみると、たっぷりのごまペーストと絡んだ麺は非常にまろやかな口当たりで、濃厚な旨みが口の中に広がる。一方でねぎやもやしのシャキシャキ感、パクチーの風味もいいアクセントになっており、噛むほどに新しい食感と美味しさが口の中に広がっていくのだ。

そして、後から効いてくるのが、非常に刺激的な辛さ。というのも、このレシピでは、ラー油はごまペーストに使う分も含めると1人前で12gにもなる。スーパーでよく売られている小瓶(31g)の1/3程度という、けっこうな分量だ。そして最後に振りかける粉山椒の刺激も相まって、額に汗かくような辛さが徐々に徐々に広がっていくのだ。

……という感じで、この汁なし担担麺は、食感や味わいの変化がものすご~く豊か。ねぎやもやしやパクチーも「彩りの添え物」では全くなく、食感の面でも味わいの面でも一体感のある複雑な美味しさを作り上げている。一緒に食べた妻が「お店みたいな味だね」と感動していたが、プロの腕前を見せつけられたレシピだった。

食材も調味料も少ないのに超ウマい「アボカドまぐろサラダ」

次に作ってみたのは、お手軽な副菜の「アボカドまぐろサラダ」。使う食材はまぐろ、ミニトマト、アボカドのみ。調味料は塩、塩昆布、ごま油だけだ。なのに、これが「メチャクチャ凝ったお店の味」みたいに仕上がるのだ。

ポイントは「まぐろに塩を薄く振って臭みを消す」といった下準備や、大きさを1cm角程度に揃えた食材のカット、そして塩昆布もみじん切りにするという、工程の濃やかさだ。筆者もトマトと塩昆布を和えたお手軽な副菜はよく家庭で作っていたが、「塩昆布をみじん切りにして、食材の大きさも揃えると、こんなにも美味しくなるのか……!」と食べて感動した。

またこのレシピも、緑×赤という食材の色の組み合わせが美しいだけでなく、トマトの酸味×アボカドやまぐろのまろやかな甘さのかけ合わせや、全体を包み込むごま油と塩昆布の旨み……といった全体の一体感が本当に見事。塩昆布を使っていても、いわゆる「化学調味料っぽいわざとらしい美味しさ」は一切感じなかったし、やはり噛むほどに食材が合わさった新しい旨みが広がっていくのが楽しい一皿だった。

よだれ鶏も麻婆豆腐も絶品だった!

そのほか「よだれ鶏」や「麻婆豆腐」などのレシピも作ってみたが、「よだれ鶏」は添え物扱いされがちなキュウリまで一体感のある美味しさに仕上がっていることに、やはり感心。「麻婆豆腐」では「豆腐を塩水で茹でることで型崩れを防ぐ」「たまりじょうゆや甜麺醬で“黒い見た目”を作り出して本格的な色みに仕上げる」といったテクニックに唸らされた。

人の料理に対する褒め言葉として「お店みたい!」という言い方があるが、本書はその「お店みたいな味・見た目」を作るための秘密が余す所なく公開されているレシピ本といえるだろう。おもてなしで出せるような本格中華を作ってみたい人や、中華料理の腕前のランクアップを目指す人には、本書は非常にオススメだ。

調理・文=古澤誠一郎

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