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「なんといっても風」全英女子オープンの“攻略のポイント”を有村智恵が解説

  • 2024.8.24

有村智恵プロの連載第三弾。古江彩佳プロによるエビアン選手権優勝の興奮冷めやらぬ中、開幕直前のAIG全英女子オープンについて語っていただきました。

古江選手や畑岡選手、竹田選手…メジャー連覇に「可能性は十分」

みなさん、こんにちは。プロゴルファーの有村智恵です。今週は、いよいよAIG全英女子オープンですね。今年は、全米女子オープンを笹生選手、エビアン選手権を古江選手と日本人によるメジャー制覇が続いていますので、年間3人目の日本人チャンピオンを期待してしまいますが、ずばり可能性は十分にあると思っています。

毎年持ち回りで開催コースがかわる大会ですが、今年は、全英女子オープンを代表するといってもいいセント・アンドリュース オールドコース、世界屈指のリンクスタイプのゴルフ場です。世界の名選手たちが技術を発揮しあう名勝負が期待できますね。私も2013年に出場しましたが、アメリカ以上に様々な技術や経験値が要求される難コースでした。

そもそもリンクスコースというのは、人の手を可能な限り加えていないコースです。ありのままの自然の影響を受けることになりますので”真のゴルフの姿が見れる”といっても大袈裟ではありません。

まずは、なんといっても風ですね。とても海に近いゴルフ場ですから湿気を含んだ重たい風が吹き荒れます。それだけでも十分大変なのに、コース内に風を遮るような木などが全くないため、その風の影響をもろに受けてしまうんですよね。強いときはグリーン上のボールが止まらなくなって中断してしまうこともありました。

止まっているボールが動いてしまうほどの風ですから、ショットへの影響は計り知れません。そのため、普段は見ることができない50~60ヤードからのパッティングでのアプローチなどを選択する選手がたくさん見られます。

グリーンエッジからピンまで距離があるんだからウェッジで打てばいいのに何で?と思われるかもしれませんが、女子選手にとって50~60ヤードはスピンがしっかりかかるかかからないかギリギリの距離なんです。さらに強い風の影響でコンクリートのように硬くなった地面、そこでフォローの風が吹いていたりすると永遠に止まらないんです。

そこで一番計算がたつ転がしのアプローチを多用するシーンがいつになく見れると思います。選手たちがどのようなアプローチを選択して対応しているのか注目してみてください。

次は、やっぱりポットバンカーとフェスキューですね。通常のバンカーとは違い前方の壁が垂直に反り立っているポットバンカー、天候の変動や強い海風の中でも生え続けている根の強いフェスキュー、男子選手でも、前に打つことすらままなりませんから、入った瞬間に1ペナルティと同等の罰を受ける自然のハザードです。

テレビで見ているとわかりにくいかもしれませんが、平らに見えるリンクスコースには様々な起伏があり平らなところから打つことはほとんどありません。私の記憶ではティーグラウンドからボールの落下地点を確認できるホールは1つも無かったんじゃないかな。

大会当日はテレビ塔やリーダーボードなど特設された目標があるのですが、普段プレーしてもどこにコースががあるかわからないくらいなんです。パブリックコースで誰でもプレーできますから、ボールをたくさん持って行ってみてほしいですね!笑

話を戻しますが、見えない目標の先に様々な罠があって、さらに計算できないほどの強い風が吹いている。これだけでも聞いているだけで苦しくなるようなコースですが、さらに天候によっては1日の気温が10度から25度くらいまで変動するんです。スコールや雷がきて中断したかと思えば、夏のようなピーカンになったりもします。私もこれから現地に向かいますが、半袖からダウンコートまでバッグに入れておこうと思っています。

セント・アンドリュースでは、日本でプレーしている選手だけではなくアメリカで戦っている選手にとっても普段とは違うプレーが要求されます。何年か前に、畑岡選手がホームセンターとかに売っているような木の板にカーペットか人工芝みたいなものを張り付けて、その上から打つ練習をしていました。経験豊富な選手でも、特別な準備をしてのぞむようなコースなんです。

選手たちは、様々な種類のクラブを用意して現地入りしているはずですし、直前まで試行錯誤を繰り返すと思います。正直、大きな樹木に囲われ、綺麗に整備された美しいゴルフ場で育った日本選手にとって一番不向きなコースと言えるのかもしれません。

でも、大丈夫です。今回出場する日本人選手たちは技術的にもメンタル的にも非常にタフですし、経験も豊富で十分戦えるメンバーがそろっています。エビアン選手権を勝った古江選手は好調を維持していますし、畑岡選手の逆襲も期待できます。

個人的には、ハイフェードを持ち味としている竹田麗央選手がセント・アンドリュースにどのように立ち向かうかにも注目しています。殿堂入りを決めたリディア・コーをはじめとする世界の強豪は待ち受けていますが、また今週も日本人選手が優勝争いに加わってくれると思います。

1年間に開催する5大メジャーのうち3勝を日本人選手が果たす、そんなシーズンの締めくくりを期待して応援したいと思います。

いかがでしたか? 日本人選手の年間3勝目を期待して応援していきましょう!

有村 智恵

●ありむら・ちえ/1987年生まれ、熊本県出身。159cm。通算14勝(メジャー1勝)4月に双子の男の子を出産。

構成=岡田豪太
写真=田中宏幸
協力=取手国際ゴルフ倶楽部

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