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「余計なことばっかりして…」なぜ泉は嫌われるのか? 真の犠牲者は? ドラマ『スカイキャッスル』第5話考察レビュー

  • 2024.8.24
『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日
『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日
『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日

親しくしていた友人が、肩書きを偽っていたことが分かったとしたら。嘘をつかれたことに対して、怒りを覚える可能性はあるかもしれないが、その人の価値は変わるだろうか。

『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)第5話では、泉(木村文乃)の暴露により、紗英(松下奈緒)が施設育ちであることが、スカイキャッスルの住人にバレてしまった。

その瞬間、これまで紗英に媚びを売りまくってきた美咲(高橋メアリージュン)が、「あなたの友人であることが誇らしくて、いろんなところで自慢してきた自分がバカみたい!」と罵り出したことに恐ろしさを感じた。

これまで美咲は、紗英に救われたことがたくさんあったはずだ。

ボスママ的存在の紗英に嫌われてはいけない…と気を張っていた部分もあったのかもしれないが、一緒にお茶会をしたり、子どもの教育について語り合ったり。楽しい思い出だってあるはず。

それに、美咲はバックに紗英がいてくれたからこそ、スカイキャッスル内でいいポジションにいることができたのではないだろうか。

なのに、ハーバード大卒のお嬢様でなかっただけで、紗英の価値が急降下してしまうなんて。美咲は、紗英そのものに憧れていたというよりは、肩書きに羨望していただけなのだろう。

『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日
『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日

美咲のほかにも、スカイキャッスルの住人たちは肩書きのことしか考えていない人ばかり。地位や名誉、学歴さえあれば幸せになれると信じているからこそ、子どもたちにも勉強を強要しているのだろう。一種の洗脳に近いようなものを感じる瞬間もある。

ただ、それが人間のすべてではない。もちろん、頭がいいに越したことはないが、それ以前に大切にしなければならないことがある。

浅見家の価値観のなかでは、成績上位の瑠璃(新井美羽)は、子育て成功なのかもしれない。ただ、受験にさえ合格すれば、同級生からキツいと嫌われていたり、成績が見下すような態度を取ってもいいのだろうか。

また、紗英がついてきた嘘を知って瑠璃が不安になっていたとき、「瑠璃は学年一の秀才で、パパは帝都病院のエリート医師だから大丈夫」と励ましたのも、引っかかった。

このままだと(というか、すでに?)瑠璃は、肩書きがなければ親に愛されない…と思い込んでしまう子に育ってしまうような気がする。

今はまだ肩書きやカーストにとらわれている紗英だが、いつか「受験に合格しても、しなくても、瑠璃はママにとって大切な娘だよ」と言ってあげられるくらいに、心の余裕を持てる日は来るのだろうか。

『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日
『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日

『スカイキャッスル』において、“正ヒロイン的ポジション”に置かれているのは、おそらく泉だと思う。視聴者は泉のことを応援し、紗英が失墜していく姿にスカッとしていく…というのが本作の楽しみ方だと思うが、どうも泉に肩入れすることができない。

紗英はよく、泉のことを“偽善者”だと言っているが、たしかに…と納得してしまうのだ。

泉がどうしても冴島家の悲劇を小説にしたい理由は、「書くことこそが、子どもたちを守ることにつながる」と思っているからなのは、わかった。親の過度な期待が、子どもたちを苦しめる可能性があることを、多くの人に伝えるのはいいことだと思う。

実際に、遥人(大西利空)も、親の過度な期待によって追い詰められた被害者だ。

ただ、哲人(橋本じゅん)も、香織(戸田菜穂)も、子どもを苦しめているなんて思ってもみなかったはずだ。2人は、遥人の将来のために投資をし、ありったけの情熱を注いできた。そこに、遥人を傷つけてやりたいとかいう気持ちはない。親たちからの愛を感じていたからこそ、遥人も逃げることができず、苦しんでいたのだろう。

『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日
『スカイキャッスル』第5話 ©テレビ朝日

しかし、まだ冴島家の心の傷が癒えていない段階で、何も知らない泉がエンタメに昇華するのはいかがなものか。

「わたしは、余計なことをしているのでしょうか…」と泉がつぶやいたとき、本来なら「そんなことないよ、頑張れ!」と応援するべきなんだろうな…と思いながら、心のなかで「本当に余計なことばっかりして…」とつぶやいてしまった。

そんな泉の小説を、なぜか九条(小雪)が「書くべき」と後押ししているのが気になるところ。やはり、冴島家をぶち壊した黒幕は、九条なのではないだろうか。

紗英に嘘をつかれていたと知り、「わたし、もう何も信じられなくて…」と嘆く瑠璃に、「大丈夫。あなたにはわたしがついてる。わたしは、嘘をつかない。信じてついてきて」と声をかけ、ニヤリとしていた九条。

「自立すれば、自由になれる。これからは、母親の言葉に従う必要はありません。親こそが、使い捨てされるべき存在なのです」という言葉は、もしかすると遥人にもかけていたり…? しかし、何のために…?

いちばんの謎キャラ・九条が、ようやく存在感をあらわにしてきた『スカイキャッスル』。次週からはさらにドロドロ展開になっていきそうだ。

(文・菜本かな)

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