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「赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいいよ」という子ども。虐待の傷を抱えた娘は新しい家族と幸せになれるのか?

  • 2024.8.23

娘に再婚したいと伝えた父親。すると、娘がある条件を出した。「赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいい」と。なにやら深い理由がありそうだ。そして、娘には誰にも言えない秘密があった。『パパ、赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいいよ』(東里桐子:漫画、あやかず:原作/KADOKAWA)は、トラウマを抱えた娘が母親と一緒にそれを乗り越え、成長していく物語を描いたマンガだ。

8歳の速水ゆかは父親とふたり暮らし。父親はゆかが3歳の頃に一度離婚している。ところがある日、父親と付き合っている深瀬ルイが現れる。レストランで働くルイは、お店に訪れた初恋相手である父親に猛アタックして交際を始めたのだ。

たびたび家に来るようになったルイは、ゆかにお母さんと呼んでほしそうな様子。「プロポーズしたらね」と言われてとても照れるルイを見て、なぜかビクッと怯えた表情を浮かべるゆいが気になる。彼女の脳裏に浮かんでいたのは、元母親の再婚相手の顔だった。

実は、ゆかは実の母親とその再婚相手であるミツヒコからひどい虐待を受けていたのだ。最初に実の母親がゆかにミツヒコを紹介するシーンがこわい。ミツヒコの顔は、まるで道化師のような不気味なお面で覆われていたのだ。

そして、実の母親とミツヒコの間に赤ちゃんが産まれてから、両親の態度が一変する。ミツヒコからの度重なる暴力や、怒りっぽくなった実の母親からの激しい叱責。ミツヒコの顔はお面になっており、実の母親の顔はべったりと真っ黒に塗られている。ホラー漫画のようなおそろしい描写に、思わずゾッとしてしまう。

ゆかから見た元両親の顔は、もはや素顔には見えず恐怖の対象でしかないのだろう。そんな壮絶な生活から父親によって救い出されたという過去が、ゆかにはあったのだ。そして、赤ちゃんが産まれたのをきっかけに虐待を受けたという体験が、タイトルのゆかの意味深な発言に繋がってくる。

フラッシュバックを起こして生活に支障をきたすPTSDだと診断されるゆか。夜な夜な悪夢を見るのは過去の虐待の影響だったのだ。しかし、ゆかと父親と3人で暮らし始めたルイは、大きな愛情でゆかを優しく包みこむ。この愛情から、血の繋がりがなくとも深い母性を感じるのだ。この揺るぎない愛情が、ゆかの心をだんだん解いていく。

虐待のシーンやゆかがフラッシュバックを起こすシーンは、見ているだけでつらくて胸が苦しくなる。だが、その分ルイの無償の愛が尊く感じられ、読み手の心に深く染み渡るのだ。ルイという存在を得て、ゆかがどのように変化するのか。母親という存在の大きさを再確認したい人や、家族のあたたかさに触れたい人におすすめの漫画だ。

文=ネゴト/ まわる まがり

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