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FPM田中知之が京都・木屋町で手がけたミュージックラウンジ。サウンドフォレスト〈FUL〉

  • 2024.8.23
FUL 店内

FPMの田中知之さんがサウンドフォレストを標榜するミュージックラウンジ〈FUL〉を手がけた。京都出身である田中さんが地元から想起したこのミュージックラウンジ、いわゆるミュージックバーの定番ともいえるアイコンが存在しない。大口径のスピーカーも、壁一面に居並ぶレコードもターンテーブルもないものの、森の彷徨い込んだように聴こえる心地よい音が訪れる人をもてなしてくれる。

FUL 店内
鎮守の森を構成する植物はビカクシダやフィカス、ランなど。ラウンジにはレアプランツも。
FUL 店内
薄暮の時間帯にアペリティフといきたい自然光が入るラウンジスペース。

「ミュージックバー的なスペースをつくってくださいという依頼から始まったのですけど、結果的にはいわゆるリスニングバー的なアイコンをすべて排除することになってしまいました(笑)。新しい形で音楽を楽しめる空間を提供できないだろうかとイメージをふくらませたら、「サウンドフォレスト」というキーワードに発展したのです。

このお店がある京都の木屋町というところは高瀬川を通じて木材が運ばれ、元々は材木屋さんがたくさんあった土地です。京都の持つスピリチュアルな側面を重ねて、鎮守の森みたいなスペースができないかと考えたのです。

FUL 店内
植物だけでなく、木々のゆらめきがつくり出す繊細な影。まるで森に迷い込んだよう。
〈1 SOUND〉のスピーカー
ミッドセンチュリーを思わせるデザインと解像度の高い音像の〈1 SOUND〉のスピーカー。

その鎮守の森で流す音楽は一言でいうならば“静謐な音楽”です。アンビエント、アコースティック、チルアウト、ジャズ、クラシックとオールジャンルではありますが、静かな音楽が森から降り注ぐみたいな環境で聴いてもらうということを中心としました。いわゆる〈ドルビー・アトモス〉などによる空間オーディオの文脈とは違います。

バリにあるセレブリティや音楽好きがこぞって集まるビーチラウンジ、〈POTATO HEAD〉でも使っている、〈1 SOUND〉というイカしたオーディオブランドのスピーカー10基を天井に配置することで、森から降り注ぐような環境をつくり出しました。

〈1 SOUND〉のスピーカーは非常に解像度が高くて、周波数帯の整理が行き届いていて、音圧やダイナミズムを感じるにもかかわらず、会話も聞き取りやすい。声を張るでもなく、耳を澄ますこともなく、ある程度の距離を取って会話ができる、このラウンジにはうってつけのスピーカーでした。

〈1 SOUND〉のスピーカーを10基天井に配備することで、心地よく降り注ぐサウンドスケープをつくり出してくれる。

いまのところプレイリストはすべて僕が作っています。静謐をキーワードにかなりこだわって、慎重にセレクトしています。選曲家としての意地もあるので、マニアックなだけでなく、アコースティックのカバーや、みなさんが知っているところの意外性、Shazamしたときの驚きなども潜ませていますよ。音源はすべてデータ。出口はこだわるのですが、入口はある程度のものでも鳴ってしまうというところを目指しました。ですから、壁に居並ぶレコードもありません。これは非常に現代的な考え方かなと思っています。

FUL 温室の多肉植物
多肉植物はもちろんビカクシダなど熱帯植物などをデコレーションするために温室も
FUL 店内に飾られたグッズ
店名の〈FUL〉とはmindful、peacefulなどのメッセージを込め、形容詞の接尾語に由来
〈LIQUID WORKS〉の齋藤恵太によるオリジナルカクテル
〈LIQUID WORKS〉の齋藤恵太によるオリジナルカクテルも
豚バラ肉のホロホロ煮とスーナのタコス
フードは京都とストリートフードの融合。〈豚バラ肉のホロホロ煮とスーナのタコス〉950円
卵黄で食べる備前黒毛和牛すき焼きと生麩の春巻き
〈卵黄で食べる備前黒毛和牛すき焼きと生麩の春巻き〉1400円

ゆくゆくはいろいろなセレクターが参加してくれればとは考えています。これはフラッシュアイデアなのですが、たとえば「under 100」というBPM100以下の曲しかかけてはいけないというルールを設けたイベントなど、クラブともミュージックバーともバッティングしない謎の存在でいられたらいいなと思っています(笑)」

Information

FUL

住所:京都府京都市中京区河原町通三条下ル大黒町67-3 フォーラム西木屋町1F
営:17:00〜27:00(Food 26時、Drink 26時30分LO)
休:月休 
HP:https://ful-kyoto.com

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