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【今見たいアート案内:8月】 一人で、家族や友だちと、夏休みに出かけたい展覧会5選

  • 2024.8.23

1. カルダー:そよぐ、感じる、日本

■動く彫刻、モビールで知られるカルダーの35年ぶりの個展

左から、Un effet du japonais, 1941. Sheet metal, wire, rod, and paint. The Pagoda, 1963 Sheet metal, bolts, and paint

動く彫刻「モビール」で知られる、アメリカのモダンアートを代表する芸術家、アレクサンダー・カルダー。東京での開催は約35年ぶりとなる個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」が開催中です。

Calder with Red Disc and Gong (1940) and Untitled (c. 1940) in his Roxbury studio, 1944. Photograph by Eric Schaal © Life Magazine

カルダーは1898年、アメリカ・ペンシルベニア州生まれ。1926年にパリに渡り、吊るされた抽象的な構成要素が、絶えず変化する調和のなかでバランスを保ちながら動く、「モビール」を発明。初期にはモーターで動く作品もありましたが、次第に機械駆動させることをやめ、気流や光、湿度、人間の相互作用に反応する作品を多く制作するようになりました。
 
1939年に代表作《ロブスターの罠と魚の尾》を発表。ジャン・アルプによって「スタビル」と名付けられた、静止した抽象的な作品も制作しています。そのほか、絵画、ドローイング、版画、宝飾品など数多くの作品を制作し、幅広い分野で活躍。1950年代以降になると、ボルトで固定した鉄板を使った壮大なスケールの屋外彫刻の制作に力を注ぎ、パブリック・アートも多く手がけました。

Untitled, 1956 Sheet metal, wire, and paint Photograph by Tom Powel Imaging © Calder Foundation, New York.

本展は「カルダーの芸術作品における、日本の伝統や美意識との永続的な共鳴」がテーマ。カルダー財団が所蔵する1920年代から1970年代までの作品約100点で構成され、代表作であるモビール、スタビル、スタンディング・モビールから油彩画、ドローイングまで幅広い作品が展示されています。
 

Installation view of Calder: Un effet du japonais, Azabudai Hills Gallery, 2024 Photo: Tadayuki Minamoto
All works by Alexander Calder All photos courtesy of Calder Foundation, New York / Art Resource, New York © 2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society (ARS). New York

生前日本を訪れたことはなかったものの、20点以上の作品が日本国内18か所の美術館に所蔵されるほど、日本でも人気の高いカルダー。感性を刺激するカルダーの作品を体感して、その理由を探ってみては?

『カルダー:そよぐ、感じる、日本』
開催中~9月6日(金)/麻布台ヒルズ ギャラリー/10:00~18:00、金・土曜・祝前日は19:00まで ※入館は閉館30分前まで/一般¥1,500/
https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/calder-ex/

2. TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション

■同じテーマで見比べる、3都市のモダンアート

辻永《椿と仔山羊》1916 年、東京国立近代美術館(トリオ、テーマ<空想の庭>より)

パリ、東京、大阪の美術館のコレクションから共通点のある作品で、トリオを組んで構成するユニークな展示。
 
セーヌ川ほとりに立つパリ市立近代美術館、皇居にほど近い東京国立近代美術館、大阪市中心部に位置する大阪中之島美術館はいずれも、大都市の美術館として、豊かなモダンアートのコレクションを築いてきたという共通点があります。

左から、ラウル・デュフィ《 家と庭 》1915 年、パリ市立近代美術館 photo: Paris Musées / Musée d’Art Moderne de Paris(トリオ、テーマ<空想の庭>より)、アンリ・カルティエ=ブレッソン《ムフタール通り》1952年、パリ市立近代美術館 photo: Paris Musées/Musée d’Art Moderne de Paris (トリオ、テーマ<都市のスナップショット>より)

3館のコレクションから選ばれたのは、20世紀から現代にかけて活躍してきた、西洋と日本の110名のアーティストによる、絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など150点あまりの作品。それを34のテーマに沿ってトリオを組み、それぞれのコレクションからぴったりの作品をセレクト。

アンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》1928年、パリ市立近代美術館 photo: Paris Musées/Musée d’Art Moderne de Paris (トリオ、テーマ<モデルたちのパワー>より)

バスキアと佐伯祐三のストリートアート対決、藤田嗣治とマリー・ローランサンの女神競演、ピカソと萬鉄五郎のキュビスム作品など、意外な3点を見て比べるという、モダンアートの新たな見方を提案してその魅力を浮かびあがらせる。二度とないかもしれない夢のような展覧会は必見です。

倉俣史朗《Miss Blanche(ミス・ブランチ)》デザイン1988年/製作1989年、大阪中之島美術館(トリオ、テーマ<日常生活とアート>より)

『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』  
開催中~8月25日(日)/東京国立近代美術館/10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで。金・土曜は20:00まで。会期中一部展示替えあり/月曜休館/一般¥2,200/
https://art.nikkei.com/trio/  

※9月14日(土)〜12月8日(日)/大阪中之島美術館 4階展示室で開催

3. 111年目の中原淳一

■今も色褪せない、本当の美しさと豊かさ

中原淳一《表紙原画(『それいゆ』第31号)》 1954年 個人蔵 ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

終戦から1年後に、自身が編集長を務める雑誌『それいゆ』を創刊。その後も『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』『女の部屋』などの雑誌を手がけ、ファッション、インテリア、雑誌編集、イラストレーションなどの領域を自由に行き来して活躍を果たした中原淳一。
 
生誕111周年を記念し、数々の雑誌に掲載された挿絵や表紙の原画をはじめ、デザインした衣服、アーティストとして制作した絵画や人形など、多彩なクリエイションの全貌を紹介。今もなお色褪せることのない魅力を感じることができます。

左から、中原淳一 《扉絵原画(『中原淳一ブラウス集』)》 1955年 個人蔵 ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA、
中原淳一 《アップリケのフレアスカート》 1955年 個人蔵 撮影:岡田昌紘 ディレクション:Gottingham ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

中原淳一 《冬のお部屋の工夫をしましょう (『ジュニアそれいゆ』第7号原画)》 1956 年 個人蔵 ©JUNICHI NAKAHARA / HIMAWARIYA

『111年目の中原淳一』  
開催中~9月1日(日)/渋谷区立松濤美術館/10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで。金曜は20:00まで/月曜休館/一般¥1,000/https://shoto-museum.jp/

4. シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝

■日本文化と黒人文化の、新しいハイブリッドを描く

左から、シアスター・ゲイツ 《ドリス様式神殿のためのブラック・ベッセル(黒い器)》(2022-2023年)ほか、シアスター・ゲイツ 《アーモリー・クロス #2》2022年 木 144.8×144.8×7.0 cm 展示風景:「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」森美術館(東京)2024年 撮影:来田 猛 画像提供:森美術館

米国シカゴを拠点とし、彫刻と陶芸作品を中心に、建築、音楽、パフォーマンス、ファッション、デザインなど、メディアやジャンルを横断する活動で注目されるシアスター・ゲイツ。
 
彫刻と都市計画の教育を受け、2004年に愛知県常滑市で陶芸を学ぶために初来日。以来20年以上にわたり、陶芸をはじめとする日本文化の影響を受けてきました。アーティストとして、文化的ハイブリディティ(混合性)を探求してきたゲイツは、アメリカの公民権運動(1954〜1968年)の一翼を担ったスローガン「ブラック・イズ・ビューティフル」と、日本の「民藝運動」の哲学とを融合した、独自の美学を表す「アフロ民藝」という言葉を生み出しました。

展示風景:「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」森美術館(東京)2024年 撮影:来田 猛 画像提供:森美術館

日本初、そしてアジア最大規模の個展となる本展は、「神聖な空間」「ブラック・ライブラリー&ブラック・スペース」「ブラックネス」「年表」「アフロ民藝」の各セクションで構成。これまでの代表作のほか、本展のための新作を含む、日本文化と関係の深い作品などを紹介します。
 
特に展示室の壁を本棚で埋め尽くす「ブラック・ライブラリー」、会場内での音楽パフォーマンスやDJイベント、常滑市にある旧土管工場(丸利陶管)でのインスタレーションなど、見応えのある展示にきっと度肝を抜かれるはず。
 
ゲイツの多角的な実践を通し、世界で注目を集め続けるブラック・アートの魅力に迫ると同時に、手仕事への称賛、人種と政治への問い、文化の新たな融合などを謳う、現代アートの意義を実感する機会をお見逃しなく。
 

シアスター・ゲイツ 《みんなで酒を飲もう》 2024年 陶、酸化物 サイズ可変(1000本) 展示風景:「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」森美術館(東京)2024年 撮影:来田 猛 画像提供:森美術館

『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』  
開催中~9月1日(日)/森美術館/10:00~22:00 ※入場は閉館30分前まで。火曜は17:00まで/会期中無休/一般¥2,000(土・日曜・休日¥2,200)/https://www.mori.art.museum

5. デ・キリコ展

■日本では10年ぶり。デ・キリコ芸術の全体像に迫る

《バラ色の塔のあるイタリア広場》 1934年頃 油彩・カンヴァス トレント・エ・ロヴェレート近現代美術館 (L.F.コレクションより長期貸与)© Archivio Fotografico e Mediateca Mart © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きながら、歪んだ遠近法、脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって日常の奥に潜む非日常を描いたジョルジョ・デ・キリコ。
 
本展では、初期から描き続けた自画像や肖像画から、 画家の名声を高めた「形而上絵画」、西洋絵画の伝統に回帰した作品、そして晩年の「新形而上絵画」まで、世界各地から集まった100点以上の作品など70年以上にわたる画業のほか、彫刻や舞台芸術など、幅広い創作活動を通して、デ・キリコ芸術の全体像に迫ります。
 

左から、《形而上的なミューズたち》 1918年、油彩・カンヴァス カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッルーティ美術財団より長期貸与) © Castello di Rivoli Museo d'Arte Contemporanea, Rivoli-Turin, long-term loan from Fondazione Cerruti © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024、《緑の雨戸のある家》1925-26年、油彩・カンヴァス 個人蔵 © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

《オデュッセウスの帰還》1968年、油彩・カンヴァス ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団 © Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

『デ・キリコ展』  
開催中~8月29日(木)/東京都美術館/9:30~17:30 ※入室は閉室30分前まで。金曜は20:00まで/月曜休室/一般¥2,200(一部日時指定予約制)/https://dechirico.exhibit.jp

text & edit:Mayumi Akagi
 
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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