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世界遺産の街ハンガリー・ブダペストへ。宮殿の並ぶ絶景とともに、レストランやカフェを贅沢に満喫する旅【まだ見ぬ新たな目的地、夏の中欧旅 Vol.3】

  • 2024.8.22

中央ヨーロッパのドナウ川沿いに位置するハンガリーの首都ブダペスト。ローマ帝国の一部だったハンガリーは9世紀にマジャール人によって建国された。その後ハンガリー王国は、モンゴルやオスマン帝国の侵攻などを経て、19世紀末から第一次世界大戦が終わるまで続いたオーストリア=ハンガリー帝国に飲み込まれた。

第一次大戦後にハンガリーは復活したが、第二次世界大戦中はナチスに占領され、戦後はソ連の支配下におかれるという苦渋の時代を送った。1989年に穏便な形で共和国として民主化され、今ではEUにも加入し、ヨーロッパの製造業の中心地となっている。そんな紆余曲折の歴史をもちながらも、19世紀のオーストリア=ハンガリー帝国の面影を色濃く残すブダペストは「ドナウの宝石」と呼ばれるほど美しい都市だ。

日本からの直行便はなく、羽田・成田・関西中部国際空港からは、ワルシャワ、ヘルシンキ、ミュンヘン、パリ、アムステルダムやロンドンで乗り継ぐこととなり、乗り継ぎ時間を3時間とすると、大体17時間~19時間で到着する。飛行機代は8月のピークだと30万円近くなるので、20万円以下に抑えるためには早めの購入が必須。もしくは、経由地を増やして、各都市に滞在しながら格安チケットを購入するのもおすすめだ。

物価は西ヨーロッパよりも安価。ただし世界一で知られる税率27%という消費税に加えて、インフレの影響で、外食やショッピング東京より少々高め。一方で、スーパーやマーケットで売られている食品やフォアグラ、キャビア、トリュフ、各種ソーセージは比較的気軽に手に入れられる。

宮殿が並ぶ世界遺産都市「ブダペスト」

Photo_ Halászbástya Restaurant
Photo: Halászbástya Restaurant

ブダペストはドナウ川を挟んで「ブダ地区(西)」と「ペスト地区(東)」に分かれる。ブダ地区はブダ王宮をはじめとするクラシック建築や住宅街のある上品な雰囲気、ペスト地区は観光名所、ビジネス街や飲食店が多い活気あるエリア。そしてどちらの地区にも、ルネッサンス様式やネオロマネスク様式の宮殿がずらりと並び、ユネスコに登録されている世界遺産都市だ。

そんなブダペストの街にはいたるところに広場があり、オープンテラスのあるカフェやレストランで賑わう。この機会にハンガリーの伝統料理や名産を楽しんでみては?

現代ハンガリー料理の基礎を作った「グンデル(Gundel)」

1866年にブダペスト動物園・ボタニカルガーデンの隣にある宮殿にオープンしたグンデルは、130年以上も世界中の人々から愛されてきた。故エリザベス女王アンジェリーナ・ジョリーといったセレブリティも訪れる名店だが、動物園帰りの家族連れや近所の地元住民も多く、誰でも気軽に訪れることができる温かな雰囲気があり、アフタヌーンティーを楽しむ客も多い。

Photo _ Gundel
Photo : Gundel

エレガンスと歴史が交錯した19世紀に建てられた宮殿、クラシック音楽を奏でるアンサンブル、そしてスタッフの気どらないもてなしが輝くグンデル。そのなかでも一番の魅力は、レストラン創業初期から継承されるディッシュがあること。19世紀後半、ヨーロッパでは“油っこいパプリカ料理”として有名だったハンガリー料理に、フランスのガストロノミーを融合させたのがグンデルの創業者だという。

Photo _ Gundel
Photo : Gundel

その最たるものが、グーラッシュと呼ばれる具だくさんのスープ。グンデルがグーラッシュを国際的に有名にした、といわれるほどだ。さまざまな種類があるが、ここのビーフグーラッシュは牛の脚とほほ肉を3時間かけて煮込み、たっぷりの果汁や玉ねぎ、パプリカ、角切りのジャガイモ、そしてひとつまみの塩を加えて作ったスープ。爽やかな野菜のしゃきっとした食感とシルキーな濃厚スープが口いっぱいに広がる。

Photo _ Gundel
Photo : Gundel

ほかにも食べてもらいたいのが、200年以上の歴史をもつシチュー料理「パプリカーシュ・チキン」。ハンガリー人はパプリカをさまざまな料理の出汁として使用しており、何時間も蒸されて柔らかくなったチキンの骨と軟骨に玉ねぎ、パプリカ、トマトを加える。トロトロになったブロスにチキンのもも肉を投入してさらにじっくりと煮込むことで完成する。クリーミーなシチューを吸い取ったチキンが口のなかでほろほろと崩れて、トマトの酸味と玉ねぎやパプリカの甘味とジューシーな肉汁が絡み合う絶品だ。

口直しにはサワークリームとニンニクを添えた爽やかなきゅうりのサラダ。両品ともハンガリーの食事に欠かせない。

Photo _ Gundel
Photo : Gundel

「フォアグラ・グリル・アップル・ルバーブソース」は、グリルされたふっくらとしたフォアグラに、りんごとルバーブのソースをかけたもの。ルバーブとは日本名で「ショクヨウ ダイオウ」と呼ばれる、赤いセロリのような健康野菜。欧米ではジャムやアップルパイなどに使用される。

なめらかなフォアグラに、甘酸っぱいアップルと香り高いルバーブが織りなすアロマソース、そしてざくざくとしたクルミの食感が舌を喜ばせる一品。ちょっぴり贅沢にハンガリーの名産フォアグラを味わってみてほしい。

優雅に愉しむペイストリーショップ「カフェ・ジェルボー(Café Gerbeau)」

Photo_ Gerbeau
Photo: Gerbeau

ヨージェフ・ナドル広場にある「カフェ・ジェルボー」は、1858年に創業されたカフェ。エリーザベト皇后(オーストリア=ハンガリー帝国)も通っていたことで有名だ。重厚なビロードのカーテン、大理石のテーブルやフロア、アンティークのシャンデリアで、スイーツとコーヒーをいただくと優雅な気持ちに。ここではぜひハンガリーの伝統的なケーキを食べてみてほしい。どのケーキも見かけより甘くないのが驚きだ。

Photo_ Gerbeau
Photo: Gerbeau

ドボシュトルタ(Dobostorta)は、スポンジとチョコレートクリームがレイヤードされたケーキ。トッピングにカリカリのキャラメルがのっていて、甘いけれど少し苦味があり香ばしい。

Photo_ Gerbeau
Photo: Gerbeau

エスターハージートルテ(Eszterházy Torte)はグルテンフリーの小麦粉を使い、細かく砕いたクルミとブランデー風味のバニラ・クリームがレイヤードされている。トッピングのチョコレートフォンダンは伝統的なパターンとのこと。ざくざくとしたクルミとソフトなクリームやスポンジの食感の組み合わせが新鮮な逸品。

Photo_ Gerbeau
Photo: Gerbeau

ソムロイ・ガルスカ(Somloi Galuska)はバニラ、チョコレート、くるみの3種類のスポンジケーキに生クリーム、ラム酒漬けのレーズンとほろ苦いチョコレートソースをたっぷりかけた大人の味のスイーツ。

絶景を眺めるレストラン「ハラスバスティア(Halászbástya)」

Photo_ Halászbástya Restaurant
Photo: Halászbástya Restaurant

ぜひ夜景を楽しんでほしい場所が、中世初期のネオ・ロマネスク様式で建てられれた「漁夫の砦(ハラスバスティア/Halászbástya)」。この砦はハンガリー建国1000年を記念し、1895年〜1902年にかけて建設されたハンガリー王国の記念碑でもあり、ブダペストを見渡せる展望台でもある。

鉛筆の先のように尖った7つの白い塔は、9世紀に現在のハンガリー人と呼ばれる部族を率いて定住した7人の酋長を象徴しているとか。塔に立つのは初代ハンガリー王(1000年即位)の聖イシュトヴァーン像。

Photo_ Halászbástya Restaurant
Photo: Halászbástya Restaurant

砦にあるラグジュアリーなレストラン「ハラスバスティア」で味わってほしいのが、ヨーロッパで大人気のマンガリッツァ豚とキャビアのテリーヌ。政府が“食べられる国宝”と認定するほどで、口のなかでとろけるような柔らかさが魅力。実はハンガリーのレストランでもみつけるのは難しいので、ここで堪能しない手はない。

濃い赤身がギュッと締まったマンガリッツァ豚は、良質な霜降りがたっぷりで豊かな風味が口いっぱいに広がる美味しさ。それをスモークしキャビアとラディッシュを添えたテリーヌは、深い余韻と塩味の清涼感、多様な食感が織りなす調和が圧倒的。まさに至高の芸術的な逸品だ。

近くにはカジュアルなカフェもあるので、ぜひライトアップされたドナウ川と国会議事堂を眺めに訪れてみては?

気軽に味わう地元のソウルフード&ドリンク

ローカルの人たちが地元で楽しむソウルフードとソウルドリンクを紹介しよう。ブダペスト市内のカジュアルなレストランにあるのが、ハンガリー版ピザ「ランゴーシュ(Lángos)」。アツアツの揚げパンにサワークリームとチーズがたっぷり。酸味と塩味が絶妙なバランスの癖になる美味しさだ。

ソウルドリンク「パーリンカ(Palinka)」は、小さなショットグラスに入れてランチディナーの前に乾杯をして飲むのが伝統。パーリンカは果物を原料とする蒸留酒でプラム、りんご、梨、チェリー、アプリコットなど味の種類も豊富なフルーツブランデー。勧められたら断ってはいけない、といわれるほど国民から愛されているお酒だ。

ポーランドやロシアのウォッカよりも果実の味が舌に残り飲みやすい。でもアルコール度数は40度以上あるから気をつけてほしい。日本でもオンラインで購入可能だが、10,000円以上するものが多いのでハンガリーにいるあいだに試すのが得策。

さらに、ハンガリーに行ったらトライしてほしいのがチェリービール。甘味が強いのでカクテルが好きな方におすすめ。

東と西が交差するヨーロッパの中心地にあるハンガリーの首都ブダペスト。歴史の潮流に翻弄されながらも独自の食文化を守り、今もなおその魅力を発信し続けている。過去と現在が見事に調和するこの街で、豊かな伝統と斬新な感性が織りなす味覚の饗宴を堪能してほしい。

グンデル(Gundel)

営業時間/9:00~22:00

住所/1146 Budapest, Gundel Károly út 4

電話/06 30 603 2480

Email/info@gundel.hu

Instagram/https://www.instagram.com/gundel.restaurant/

カフェ・ジェルボー(Café Gerbeaud)

営業時間/9:00~20:00

・金曜土曜火曜 9:00〜21:00

・定休日は要確認

住所/Budapest, Vörösmarty tér 7-8, 1051

電話/06 14 299 000

Email/webshop@gerbeaud.hu

Instagram/https://www.instagram.com/gerbeaud_cafe/

ハラスバスティア・レストラン(Halászbástya Restaurant)

営業時間/12:00~00:00

・定休日:日曜月曜火曜

住所/ Budapest Budapest Budai Vár, Halászbástya - Északi Híradástorony, 1014

電話/36 1 201 6935

Email/info@halaszbastya.eu

Instagram/https://www.instagram.com/halaszbastyaetterem/

Photos: Courtesy of Waka Konohana Text: Waka Konohana Editor: Nanami Kobayashi

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