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調香師フランシス・クルジャンが語る、香りに込めた想いとは【パルファン・クリスチャン・ディオール】

  • 2024.8.23

この秋、新たに誕生するのはメゾン クリスチャン ディオールのアイコンフレグランスを力強く濃縮し、印象的なムードを宿した5つのフレグランス。クチュールスピリットにフランシス・クルジャンのビジョンを融合させたエスプリ ドゥ パルファンは、モダンな香りの文化をリードする。

香りのストーリーを再定義した、フランシス・クルジャンの挑戦

Harper's BAZAAR

メゾン クリスチャン ディオールの主要な5つの香りの再解釈にあたり、それぞれの香りのストーリーラインを定義し直したフランシス・クルジャン。そもそも今回の再解釈とはどのようなものだったのか。

「日本のものに例えるなら、俳句。極限まで研ぎ澄ましシンプルに表現したものが俳句ですよね。今回の再解釈はまさに、俳句のように多様なイメージを凝縮させたもの」

そう前置きをしながら、それぞれの香りのイメージについて話してくれた。

「まずは特にディオールのスピリットを感じてもらえる3つの香りについて。その代表がグリ ディオール。ムッシュ ディオールの生家がグレーとピンクだったことからも、ブランドのキーカラーのひとつがグレー。雲に覆われたパリの街のような、濃密なグレーから着想を得て、パチョリやブルガリアンローズで透明感と柔らかさを表現しました。次にラッキーの香りでは、ムッシュにとって幸運を運ぶ花だったスズランを際立たせた。彼が強く影響を受けたモデルの名前がラッキーだったという話も。そしてルージュ トラファルガー。ムッシュの時代のファッションショーはモデルが120名、1時間半の長丁場だったのですが、ランウェイの中央に目を奪われるようなドレスをよく飾っていたそう。そのドレスの名前がトラファルガーだったんです。高級感のあるフルーティさの中に一種の驚きを込めました」

さらにセンシュアルな要素を忍ばせた2つの香りについてはこう語る。

「アンブル ニュイは月のない漆黒の夜をイメージ。ライトな香りはすべて排除した官能的なアンバーアコード。もうひとつ、ウード イスパハンは中東からインスパイア。中東の王妃を顧客に持ち、オリエンタルな世界を愛したムッシュ。力強く心をかき立てるダマスクローズを凝縮しました」

最後に、これらの香りにこめたメッセージを尋ねてみた。「今回の新解釈では、かなり挑戦的に濃度を強くしました。香りの文化の中で今まで日本ではあまりなかった、一種の冒険です。香水をまとうときには、“生意気”なマインドをぜひ忘れずに。パワフルな香りに躊躇せず、勇気をもって一歩踏み出したら新しい自分に出会えるかも」

Harper's BAZAAR

再解釈で生まれる名作フレグランスの新たな表情

メゾン クリスチャン ディオールの5つのアイコンフレグランスを再解釈した、エスプリ ドゥ パルファン。再解釈にあたって、パフューム クリエイション ディレクターのフランシス・クルジャンは、メゾンのクチュールスピリットやラグジュアリーを尊重しながらも、自身のクリエイティビティを遺憾なく発揮している。原料を合理化してミニマムに、でも贅沢に。さらにオリジナルをある意味、大胆に破壊して鮮烈にアップデート。だからこそどの香りもオリジナルのたたずまいを感じさせながらも、冒険的でリュクス、そして異なる印象を受ける。創造には限界がない、なんてことを思い知らされる、奥深いフレグランスの世界に浸ってみてほしい。

GRIS DIOR

Harper's BAZAAR

“グリ”とはフランス語でグレー。メゾンを象徴するカラーを表すシプレーフレグランスが、新たな解釈で世に放たれる。インドネシア産パチョリ、アトラス産シダー、アンバー、バイオレットやブルガリアンローズといった花々。それぞれの要素がハーモナイズして、まとった人を、また周囲の人をたおやかに魅了する。シンプルにしてエレガント。その香りはまさにグレーという色のように、高雅な色香をたたえる。

LUCKY

Harper's BAZAAR

ショーの成功を祈って、ドレスの裾にスズランを縫い込んだり、胸ポケットにスズランを忍ばせたり……。ラッキーは、縁起を担ぐことが好きだったムッシュ ディオールにオマージュを捧げた香りだ。今回クルジャンは、オリジナルのフローラル中のスズランを強調。あでやかに主張するフローラルがウッディレザーと出合い、優美で強い印象を残す。香りの力を借りて幸運を引き寄せたくなる、そんな一品だ。

ROUGE TRAFALGAR

Harper's BAZAAR

“赤”をもっと鮮やかに! クリスチャン・ディオールがショーの中盤で登場させた真っ赤なドレにインスパイアされたフルーティフローラル、ルージュトラファルガー。甘やかなこのフレグランスが、ピンクペッパーコーンのシャープさ、トルコ ローズやブルガリアン ローズの華やかさ、キャンディアップルの爽やかさを帯び、香りを浴びた途端、感じるのは美しい衝撃。身につけるたび赤の情熱に溺れて。

AMBRE NUIT

Harper's BAZAAR

月の出ていない、しんとした闇夜。闇の中でアンブル ニュイは波のように揺れ、漂い、影をあらわにしてみせる。ムスクがベースを奏でるなか、主役であるアンバー アコードが、シナモン、カルダモンといったスパイスと組み合わせられて、秘密めいた夜の深みへといざなっていく。官能的でありながらソフィスティケート。神秘的な香りに包み込まれるほどに、目くるめく夜の魅惑から逃れられなくなるはず。

OUD ISPAHAN

Harper's BAZAAR

色彩豊かで不思議に満ちた、『千夜一夜物語』のごとく。幻想的なオリエントの旅へと誘う、ウード イスパハン。スモーキーウードとはちみつのノートを含むローズ。そこにクローブとクミンのウッディでスパイシーなニュアンスが加わった香りを吸い込めば、目の前に広がるのは、洗練を極めたきらびやかな未知の風景。どこまでも贅沢で濃密。一瞬で心惹かれたのち、長く記憶に残るフレグランスだ。

問い合わせ先/パルファン・クリスチャン・ディオール 03-3239-0618

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