1. トップ
  2. エンタメ
  3. 目黒蓮”夏”の怒りに震える…どんどん苦しくなる展開、唯一の癒しとは? ドラマ『海のはじまり』第8話考察レビュー

目黒蓮”夏”の怒りに震える…どんどん苦しくなる展開、唯一の癒しとは? ドラマ『海のはじまり』第8話考察レビュー

  • 2024.8.22
『海のはじまり』第8話より ©フジテレビ

目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、名作『silent』の制作チームが再集結し、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品だ。人と人との間に生まれる愛と、そして家族の物語を丁寧に描く本作の第8話の考察レビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
—————————
【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。

『海のはじまり』第8話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第8話より ©フジテレビ

夏の実の父親・基晴(田中哲治)が初登場した『海のはじまり』(フジテレビ系)第8話。最初は、基晴のことを最低な父親だと思ってしまった。

夏がせっかく海(泉谷星奈)を連れて会いに来てくれたのに、そっけない態度を取り、挙句の果てには「育ててなくても、血が繋がってる親は子どもを想って、離れても愛し続けてるにちがいないって期待しちゃったの? 残念だったね、育ててない親なんてしょーもないって分かっちゃったね」なんて、夏の怒りを煽るような言葉を言い放つ。

でも、だんだんと彼の人間性に触れていくうちに、これって不器用な優しさなのでは? と思えてきた。

基晴は、元妻のゆき子(西田尚美)が再婚したことを知っており、夏には新しい父親・和哉(林泰文)がいることも分かっている。だからこそ、夏の前では“いい父親”ではなく、“しょーもない父親”であろうと思ったのではないだろうか。

もちろん、子育てにあまり協力的ではなかった基晴を褒めるつもりはない。ただ、もしも基晴が素敵な父親を演じていたら、夏は「やっぱり、実の父親はいいな」と感じてしまうかもしれない。それでも、ゆき子は基晴と再婚をすることはないし、今さら夏の“お父さん”をやり直すことはできない。

ならば、夏を突き放して悪者になることこそが、自分ができる精一杯の償いだ…と思ったとすれば。そう考えてしまうのは、弥生(有村架純)が言っていたように、「(親に)1回幻滅したくらいで、諦めつかない」からだろうか。

『海のはじまり』第8話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第8話より ©フジテレビ

ただ、ふだん感情をあらわにしない夏が、基晴の前では怒りに任せて椅子を蹴り飛ばしたり、「俺だって悲しいのに」と子どものように泣きじゃくってみたり。初めて、“物分かりがいい夏”ではない姿を見せることができたのは、基晴が実の父親であり、他人に近い存在だったからだと思う。

正直なところ、終盤の基晴の台詞には共感する部分が多かった。

「昔の女が勝手に産んでたなんて、俺だったら無理だな。立派、立派」
「(子どもを産んだということを)隠されてたってのも被害者だしな」

亡くなった人のことをあまり悪く言えないからか、みんな水季(古川琴音)のことを責めようとしない。それどころか、「病気を抱えながらひとりで子どもを育ててすごい」「何も知らなかった夏くんはひどい」なんて、水季を上げて夏を責める人ばかり。

もちろん、水季が「産みたい」と懇願したのに夏がそれを拒否したとか、「責任は取れない」と逃げたとか。それなら、夏が責められるのも分かるが、基晴の言うように知らされていなかった夏も“被害者”の側面があると思う。

思い返せば、夏がバーッと話した鬱憤を、基晴はすべて肯定していた。完全に夏の肩を持ち、一緒になって周囲を責めてくれる。いま、優しすぎる人たちに囲まれて生きている夏は、ちょっぴり性格がひねている基晴と話すことで、心がラクになった部分もあったのではないだろうか。

「その優しいみなさんに支えられて、しんどくなったら連絡しろよ」と基晴に言われたときの夏は、まるで3歳の頃に戻ったかのような、子どもっぽくて、照れくさそうで、今まで見せたことがないような表情をしていた。

『海のはじまり』第8話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第8話より ©フジテレビ

それにしても、弥生がやっぱり切なすぎる。海を認知すると決めるときも、お父さんをはじめると海に報告したときも、弥生は蚊帳の外。

「またゆっくり話そう。俺たちが、どうするかは」と言っていたが、弥生も海のお母さんになりたいと言っているわけだから、“また”ではなく“先に”話し合っておくべきではないだろうか。

公園で弥生が海の首についているネックレス(水季の遺灰が入ったもの)を「危ないから取ろうか」と言ったときも、「やめて!」と大声を出していた夏。

触らないでという意味で言ったわけではないにしても、弥生にとっては“外野”みたいな扱いを受けたと感じただろうし、そもそも鉄棒をする前はネックレスを外した方がいい。

大人たちが相手のことを想いやり、どんどん苦しくなっているなかで、海を演じている泉谷星奈の無邪気さに癒される。

今期は、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)でも、子役の倉田瑛茉が存在感を発揮しており、2010年代に起きた“子役ブーム”が再燃する兆しを感じている。芦田愛菜のようにGP帯の主役を務められる子役が増えたら、作品の幅もグッと広がっていくはずだ。

『海のはじまり』で海を演じている泉谷は、『いちばんすきな花』(フジテレビ系、2023)で今田美桜の幼少期を演じて話題に。『名前をなくした女神』(フジテレビ系、2011)や『全開ガール』(フジテレビ系、2011)など、おませな女の子を演じることが多かった谷花音を彷彿とさせる部分がある。

水季に、「好きなとこ行きな。ここにいるから」と言われていた海が選ぶ“好きなとこ”とは、やはり夏のところなのだろうか。そして、海に「ママになってくれたらうれしい」と言われた弥生は、責任感からこのまま夏と生きる人生を選んでしまうような気がする。

「どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです」

かつて、弥生が書いたメッセージを、今は弥生に送り返してあげたいと思う。

(文:菜本かな)

元記事で読む
の記事をもっとみる