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大原櫻子さん「今できる最善を尽くした10年間」/オールタイムシングルベスト 2014-2024 『Anniversary』インタビュー

  • 2024.8.22

17歳の私は生まれたての小鹿のようだった

━━音楽活動を開始されて10年、大原さんにとってこの時間は長かったですか?

振り返ると、あっという間なんですけど、 今回の作品を完成させるにあたって、10年でやってきたことをひとつひとつにじっくり向き合ってみると、とても濃厚だなって。決して短いものではなかったと、改めて感じました。

━━その瞬間のことで一生懸命で、 過去を振り返る機会はあまりないですよね。

そうですね。特にデビュー直後から二十歳になる頃までは、右も左もわからない手探りな状態が続くなかで、お芝居と音楽の両方をやらせていただき、駆け抜けていたという感じでしたから。

━━今回のオールタイムシングルベスト盤は、文字通りこの10年でリリースされた楽曲を発売順に収録。ファンのみなさんも、活動の歩みを振り返られる構成になっていますね。

リリース順に収録した作品は、今回が初めてになります。だからこそ、この10年応援してくださってる方とかは、(写真)アルバムを見返しているような感覚で、10年を振り返れるんじゃないかなって思いますね。

━━ですが、今回は全曲をリマスタリングして収録。オリジナルとは異なる音色を楽しめます。

新鮮な気分でこれまでの楽曲も楽しんでいただける内容になっているとも思います。リリースした当時のままの声なのですが、耳から入ってくる感覚は少し異なるものになっているのかなって。

━━大原さん自身、改めて過去の楽曲を耳にしたことによって、この楽曲ってこういう表情や意味を持っていたんだなとか、改めて感じたことはありますか?

今もライブでデビュー当時の楽曲も歌わせていただくうえで、過去の楽曲を聴き直す機会も多いのですが、10年で人の声ってこんなに変わるものだなって感じましたね。特に「ちっぽけな愛のうた」は、当時とても緊張してレコーディングしていて、その一生懸命な感じが声にちゃんと残っているなって。現在と比べると、表現できていない部分はありますが、あの当時のベストなヴォーカルを閉じ込めることができたと思うし、あの瞬間だからこそ伝えられるよさがあったなって、改めて感じることができました。

━━確かに。その瞬間にしか出せない声だったりとか、表情みたいなものもありますからね。

当時17歳の私の声色は、生まれたての小鹿みたいな感じでしたね。ぎこちなさが出ていて、くすっと笑ってしまう部分もあるのですが、それは10年前にしか出せないよさでもあると思います。

━━10年前と比べて、特にどういった部分が進化したと思いますか?

徐々に観客のみなさんの心に届くためにはどういうものを表現するべきか考えられるようになってから、大きく変化したと思います。また、初期は映画の役をイメージしてライブに足を運んできてくださる方が多かったので、その印象を残したパフォーマンスをしていたのですが、次第に私らしさを緩急をつけて伝えてもいいと考えるようにもなってきました。19歳の頃には舞台にも挑戦させていただき、ライブとは異なる発声方法や表現力を磨くこともできましたし。ひとつひとつ経験を重ねるたびに、表現の幅が広がっていった気がします。

笑顔になる音楽を作ることが自分の本質

━━その反面、透明感というか、前向きな気分になれるような輝きはデビュー当初から変わらないですね。

デビュー当時は、元気で明るくて前向きなイメージで、ファッションでも意識していましたね。でも、20代になってからは、歌い方も歌詞の内容も深みのある部分を意識していき、ファッションも落ち着きのあるものに変えたのですが、徐々に自分の本質が見えてきたというか。みなさんに笑顔になっていただけるような音楽を作りたいという思いが、より強くなっていますね。

━━書き下ろしの新曲「Anniversary」は、デビュー曲を手がけられていた亀田誠治さんと再びタッグを組んで完成させた、これまでもそしてこれからも笑顔を多くの人に届けたいという思いが伝わってくる仕上がりですね。

亀田さんから楽曲をいただいた瞬間、10年の軌跡が走馬灯のようによみがえってきました。それと同時に、亀田さんからのラブレターだなって感じましたね。デビュー曲で〈10年後の未来なんてわからない〉と歌っていた私の10年を振り返りながら、これまで私を支えてくださったみなさんへの感謝の気持ちもこめることができたと思います。また、私の音楽を耳にしたことがない方々も、暮らしのなかでさまざまな出来事があったと思います。特にうまくいかない瞬間、この人に支えられてたなっていうのが、 明確に思い出せるような仕上がりにもなっているのかなって。この楽曲を通して、これまで支えてくれた方の表情を思い出していただきたいという思いをこめて歌わせていただきました。

━━また、この楽曲は10年、20年先の大原さんに向けたメッセージのようにも聞き取れました。

まさにその通りで。〈これから10年も〉と歌ってはいますが、20年先でも歌い続けていたい楽曲になりました。

━━また、本作には大原さんが出演された映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の挿入歌として発表された「サヨナラの準備は、もうできていた」のカバーも収録されています。

オリジナルは、CRUDE PLAYという劇中に登場するバンドの楽曲なのですが、カバーするにあたり改めてじっくり聴き直してみると、ボーカルの三浦翔平さんは大先輩という印象だったんですけど、今の私はその頃の三浦さんの年齢を超えていることに、不思議な感覚があって。でも、メロディーや歌詞には、10年前の匂いがずっと残っていて。エモい気分になりながら、レコーディングをさせていただきました(笑)。

━━大原さんが歌うことによって、楽曲の持つ輝きや深みがさらに際立つものになったと思います。

男性目線の曲を、女性の私が歌わせていただくということもあって、映画のファンの方々はどう向き合っていただけるのか、ちょっとドキドキしている部分はありますね(苦笑)。歌ってみると、難しいというか。シンプルでありながらも、いろんな表現や解釈ができる楽曲なので。10年前の私では決してカバーできなかったと思う。今だからこそ、自分のフィルターを通して、ようやく表現することのできた楽曲じゃないかって。

臨機応変に自身と向きあう暮らし

━━10年の音楽活動の軌跡をまとめてみたことで、今後のビジョンみたいなものは見えましたか。

私らしい楽曲もあるのですが、新たな挑戦に取り組んでいたものもあったりして、色とりどりな音楽を制作してきたことを改めて感じることができました。また、そのひとつひとつに当時の私のベストを尽くしてきたというか。その瞬間に、何を発信したいのかを真剣に考えながら活動してきたことを再確認できました。だから、この先の活動に対する明確なビジョンみたいなものはなくて。未知な感じを楽しみながら、これからも活動を続けたいと思いますね。

━━また、CD盤にはミュージックビデオなどの映像作品や、フォトブックなどをパッケージした初回限定盤もリリース。永久保存で手にしておきたい内容に。

この10年の活動をここまで集約させた作品はほかにないので、 懐かしさとともに、感動していただけるパッケージになっていると思います。 これまでの大原櫻子が詰まっている作品なので、今まで耳にしてこなかったみなさんもぜひ手に取っていただけたら。

━━このアルバムを携えて、9月から全国ツアー<大原櫻子10th Anniversary tour 2024「ハイッ!10ション!」>がスタートします。

10年の集大成という感じで、文字通りハイテンションでカロリーの高いステージになると思います。また懐かしさと同時に、今の私が歌うことによって楽曲が新鮮に響くような豪華なパフォーマンスをお届けしたいと思っています。また10月には、ハイテンションとは異なる雰囲気のスペシャル・コンサートも開催します。どちらも、CDなどに収録されたものをそのまま披露するというよりは、ライブだからこそ表現できるものにしたいと思っているので、楽しみにしていてください。

━━最後に。大原さんの最近の暮らしぶりに関しておうかがいしたいのですが、10年前とは大きく変化されたのでは?

10代(学生)の頃は何時から何時まではこれをやるとか、スケジュールを決めてきっちりやっていましたが、仕事を始めてからは、思い通りに物事が進まないことも多くなってきて。おかげで、常に自分の体調や気持ちに臨機応変に対応できるようになってきましたね。すると、自分が口にするものもできるだけ管理したいと思うようになってきて、ライブやお芝居で地方を廻る際でも、できる限り自炊することを心がけるようになりました。実は、自粛期間に入る前までは、いっさい料理をしたことはなかったのですが(苦笑)。また、特に移動生活が続くときは、いろんな香りを楽しみたいなって。キャンドル、香水、入浴剤などを、 気分によって変えてみたりだとか。自分で自分を癒やす方法が徐々にわかってきた気がします。

オールタイムシングルベスト 2014-2024 『Anniversary』

オールタイムシングルベスト 2014-2024 『Anniversary』
大原櫻子/¥4,400(通常盤)
ビクターエンタテインメント
8/21 on sale

ソロ名義以外を含むシングル曲を網羅した2枚組初のオールタイムシングルベスト。グラミー賞受賞作品を数々手がけるエンジニアのGoh Hotodaさんが全曲リマスタリングをし、より洗練された音に。なお、初回限定盤のジャケットは、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の原作者である青木琴美さんによる描き下ろしイラスト仕様に。

PROFILE

おおはら・さくらこ/ミュージシャン、俳優。1996年、東京都生まれ。14年にソロデビュー。9月7日より、全国ツアー『大原櫻子10th Anniversary tour 2024「ハイッ!10ション!」』がスタート。10月11日には『大原櫻子10周年スペシャルコンサート -10(天)空の歌-』を東京・第一生命ホールにて敢行する。   https://oharasakurako.net/

[衣装クレジット]ワンピース¥11,990/ムルーア(ムルーア03-5447-6543)

Photograph:Chihaya Kaminokawa styling:SAHO hair & make-up:Akino Minowa (MARVEE) text:Takahisa Matsunaga

リンネル2024年10月号より
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